二十二話
「現地の様子はどうだ?」
「小康状態にある模様。塹壕を作成し、中腹へトラックでの移動をするとのことです」
それを受けて藤堂は執務室に設置された受話器を取る。現地に戦力を送っているが分隊規模でてきることはたかが知れてる。
「こちら特危獣対策警備隊、藤堂です。田上一佐、意見具申をしても宜しいでしょうか?」
「人員・資材の手配はできるかぎりをしている。作戦案か?」
「はい。誠に申し訳ありませんが民間人である樹くんの助力を冒険者法に則って要請いたします。彼が何かしらの事情を把握していると愚考します」
沈黙は長い。親として私人である息子の樹を危険な場所に送り込むのを拒否するか自衛隊幹部として公人として公共の利益の為に説得するかは悩ましいところである。距離はとっているものの公安の監視が樹から外れたと思うほど衛は楽観的ではないし今後も同様の事が起これば衛であっても樹を庇うのは難しくなる。
冒険者法は有事の際の動員を義務付けているがまだ施行はされていても運用実績はないのである。一般に解放された翌日に必要になるとは想定されていない事態であるというのも少なくない影響を与えている。今のところ日本に在住していればレベルが高いのは自衛官もしくは警察官となる。
アメリカでは合法であるために日本人の覚醒者が皆無とは言えないがアメリカもある意味では日本以上に閉鎖的な環境なのだ。永住権を持っていない限りはアメリカで冒険者になることは難しい。
銃が合法でもアメリカ国籍を持たない者にまで無秩序に販売しているわけではないからだ。そのために半年~一年位は猶予があると考えている冒険者は多いだろう。
「分かった。樹にはこちらから連絡しておく。ただ協力は明日以降になると思っておいてくれ」
一佐も苦渋の決断だったのだろう。藤堂にもし子供がいたら冒険者になることには反対しただろう。それが国のためになるとしても子供には平穏な生活を望むだろうからだ。
自衛官の家族というだけで心労をかけている自覚はある。海外派遣されたときも帰国したときには両親から連絡があったし無事を喜んでくれた。
「春日分隊にも出動待機を命じておいてくれ。連絡は春日のみで良い」
「了解しました」
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まだ寝るのには早いが父、衛から連絡が来たのは携帯に警報が響いてから二時間経ったころであった。
「明日、冒険者法に基づいての支援要請がいく。詳しい話は現地の隊員から聞いてくれ。すまないがこれは決定事項で変更はない」
「分かった」
「悪いな。こちらもやる事が多い。母さんのことは頼んだぞ」
用件だけ伝えられて電話は切れた。政府は迷宮を一般開放する代わりに冒険者には足枷をつけた。その一つが招集呼応義務だ。一応は断ることもできるが冒険者資格の剥奪も可能としている。
便宜上は国が元の所有者から所有権を買取っているが国際法上は迷宮は国に属さない土地とされている。それでも戦略的価値を持つ迷宮を国有にしないなどはありえず管理しやすくするために行っている。
冒険者でない者が迷宮に押し入ろうとすれば不法侵入が成立する。そして本来であれば拾得物に関して冒険者に全ての権利があるはずだが国有化することによって国が権利を主張することができるのだ。埋蔵金などであれば土地の所有者にも権利があるが迷宮の性質上は法にそぐわない。
そのために予め迷宮のアイテムは国に所有権があることにしてしまえば面倒事が避けられるのだ。アメリカであればもの凄い反対があっただろう。個人の権利が主張され訴訟大国である。それに比べて日本は確かに権利の主張はあるが同調圧力によって潰され日和見主義も多いためにデモが起きるとしてもお行儀良く行われるのだ。
公道を使用するならば事前に所轄の警察署に届出も行われ、暴動が起きることも殆どない。ただ気を付けなくてはならないのは有力な冒険者であれば日本に拘る必要がないことだ。言語の壁はあるかもしれないがそれは通訳でも雇えば良いことだ。
迷宮からどれほど有用なアイテムを持ち帰るかが今後の世界の覇権を握る重要な要素になるかもしれないのだ。実際にアメリカは初期に多くの犠牲を出したが、銃術の発見によって迷宮内で武器が使えるようになってから多くの軍人を迷宮に送り込んでいる。
日本も自衛官や警察官を迷宮に送り込んだが安全第一の探索である。迷宮内で死傷者を出さないことは確かに重要なことだが危険と報酬は二律背反の関係にある。それに軍需産業の大きさも異なる。兵器の独自開発が盛んなアメリカと異なり日本は殆どの場合はライセンス契約を結んで生産しているだけに過ぎない。
エンジンや塗料と言った一部の分野では優れていたのも過去の物になりつつある。コロナの製薬認可についても同様だ。人体にどんな悪影響があるか分からない新薬について慎重になる姿勢が悪いとは思わないが時には慎重さよりも迅速さが必要になることもある。ワクチン利権は通常であれば少しでもお零れにあずかりたいと思うのが普通でありそれが国民のためになることもあるだろう。
自国で開発できないのであれば製造する権利もしくは在庫を押さえるのは普通のことだ。割高になるとしても有効に血税が使われるのであれば文句を言う人間は少数派のはずで政権の支持層にもアピールできたように思える。だが連発する緊急事態宣言また言葉遊びに思えるまん延防止等重点措置に国民の感覚が鈍くなるのは仕方ないように思える。
総理大臣が率先して国民には自粛をお願いしているのに宴会や政治資金パーティなどを行っており厚生労働省の役人が大人数での送歓迎会をしているのであれば馬鹿らしくなって当然だ。それにワクチンでなくとも症状を緩和させることのできる薬剤が外国で効果が認められていても認可されないなどやってることが支離滅裂なのだ。
環境大臣もこのコロナ下で衛生的に使い捨てる方が良いビニール袋の有料化やスプーン・フォークの有料化を検討しているなどやってることに整合性がない。ビニール袋などのマイクロプラスチックが海洋汚染に繋がるのは理解できるが比率はもの凄く低い。それならば漁師が海に不法投棄している漁具の方が環境には悪い。
訳の分からないことばかりやっているので政権交代が起こってもおかしくはないと思っているが結局は議席数を減らしても過半数は維持するのでないかと予想している。法律上は政府は協力した冒険者には報酬と死傷した場合の補償をすることになっている。
今の樹は国民健康保険加入者であり国民年金加入者だ。しかも冒険者が迷宮に潜って負傷した場合には健康保険自体は使えるが自己負担率は六割になることで落ち着いたらしい。通常の病気や怪我とは分けますよということで迷宮の利益は吸い上げるが負担はしたくないというのが見え見えである。
安定を求めて冒険者の中から公務員になる者。反対に公務員としてレベル上げや実績を積んでから個人事業主になる者などが今後発生するのではないかと考えている。樹としては政府の要請など断わりたい。干渉を受けないために個人事業主として開業届けを出して冒険者として活動するのだから当然である。
国が一度アイテムを買取るという形をとる以上は脱税することは難しい。買取ったアイテムを転売することで利益を得るものもいるだろうが、絶対数は少ないだろう。狙いとしては高単価のものを取得して需要のある企業に売り捌く。それも企業が相手なためによほどの交渉力がなければ難しい。
安定供給がネックになるがそれは迷宮主として生成したアイテムがあれば不可能ではないと思っている。少しのミスでも命に関わるためにコンビニバイトを辞めたが後悔はしていない。どうせ先行きは真っ暗だったのだ。
ドミナント方式は黎明期であれば効果は高いだろうがそれもフランチャイズ本部にしか利益はない。コロナ禍で職がないことを考えればしがみつく価値はあったのかもしれないがそれもただ決断を先延ばしにする行為でしかないのだ。
政府の要請は受ける方向で進めるが報酬についてはよく話会わなくてはならない。政府のやることだ神奈川県の最低賃金ギリギリの報酬を示して公共の利益のためだとか謳えば誰でも頷くと思っているのだろう。だが、昨日は素材を迷宮核に取り込ませるために報酬は減ったが本来であれば一万円を超えていた。
それでも安全なアルバイトをした方がマシと言う金額だったが経験値を得るということが今は大切なのだ。知能ある魔物が迷宮主となっているのかそれとも異世界人がなっているかはサンプル数が少な過ぎて判断できないが冒険者として強くなることに損はない。
レベル二十になれば念願の錬金術を取得でき更なる増収へのきっかけになると考えている。図々しいかもしれないが協力を得体のは政府であって樹が頼み込んでいることではないということだ。ニュースを見てみれば自衛隊に治安出動待機命令がされたことが発表されていた。
どの迷宮と断言している訳ではないが正直なところ迷宮の傍に土地を持っている人は可哀想だと思う。田上家も幕山から決して遠いというわけではないが元々、資産価値はあまり気にしていないで生活できために土地の価値が下がれば固定資産税が安くなるのかな?くらいの反応しかない。
幕山迷宮であれば難易度としてはそれほど高くはない。迷宮核を手に入れても価値があまりないということにもなるが独立して二つの迷宮を管理できるのは収入源を失わないという意味では価格以上の価値はある。低等級と高等級で収支を安定化させるのはリスクを分散させるという意味では有効である。
交渉の仕方次第ではあるが樹は公認迷宮として自身の迷宮を国に認めさせる絶好の機会だと考えている。何とかして迷宮核を回収しようと動くはずだが、高ランク冒険者がプライベート迷宮を持つようになるのが自然になる未来も有り得るのだ。使用者と労働者と分かれるかはまだ分からないが迷宮核にはそれだけの価値がある。
投機の対象になることだって予想されることだ。億り人などと仮想通貨で儲けた人をマスコミは囃し立てたがあれは運の要素も強かったと思う。それに他の通貨に乗り換えた時点で課税され最終的に損失を出していても売却益に税金がかかるために他の人よりも悲惨な人生を送ることになった人も居るはずだ。
税金のため事業の失敗による債務超過を自己破産で精算しようとしても税金は対象にならないために支払いの義務が残る。そこまで投資家にやるのであれば特殊詐欺の刑罰を重くして被害金額の数倍のお金を払わないとそれまでは懲役にすれば良いとも個人的には思う。
まあ貯め込んでいる金を市場に流すという意味では経済効果はあるのだろうが犯罪者に優し過ぎるからつけ上がるのだと思う。冤罪の可能性がある限りは死刑執行を待つべきだが任期の間は何としてでも死刑執行書に署名しない法務大臣もいるのだから考えものである。直近では政治資金規正法違反で逮捕されて議員辞職しない法務大臣がおり、歳費を満額、受け取っているので今更の話ではあるが。
「もしもし。樹です。紬さん迷宮の件での話ですか?」
「そうだ。俺もさっき上司から聞いたが招集されることが決まったらしい。報酬等の条件は衛と警察からは明石警視が朝に迎えに行く。心積りだけはしておいてくれ」
「分かりました」
やることと言っても殆どない。鑑定能力をあてにしているのか戦闘能力をあてにしているのかは不明だが、現状の戦闘能力は銃には敵わないと思う。求められているのは戦闘能力でないことは確かだろう。迷宮主の基礎ステータスアップ量は下級職より高い。中級職もしくは上級職だからだろう。
恐らくとしか言えないが兵士は攻撃職の基礎である戦士と変わらず一部の自衛官に現れている指揮官はその上位職であると思われる。ジョブレベルという概念があるかはまだ不明なのだ。レベルの上限があるのかは知らないが仮定として百までなら早いうちに上級職に転職しないと取り返しのつかないことになることも考えられる。
もし無職のままレベルを上げ続けてしまえば悪夢でしかない。ステータスは最大能力だけを示している可能性もあるがそれでも低いよりかは高い方が良い。当初の予定とは大分、変わってきてしまっているがそれは今更だろう。
いずれは発覚するものだと考えていたがここまで早いとは思っていなかったのは事実であるが、実験的な要素が強いのは分かるが国が取得した迷宮核で迷宮を作ってしまったのは樹の想定外でもあった。迷宮の管理を任させれるということはそれなりの地位にある人間なのだろうがリスクが高すぎると思うからだ。
迷宮主になれば軍事力と経済力を持つ小国を手に入れるのと同義だ。できたばかりの迷宮であれば簡単に制圧ができるという思惑もあるのだろうが個人に持たせるのには大き過ぎる力であることには違いはない。樹だって大なり小なりの愛国心は持っているが、それは命を捨ててまで国を護ろうと思えるほどではない。
家族や知人を守るという延長線上にあるだけで無いよりはマシと言った程度である。樹としては愛国心を求められても困るというのが本音である。具体的な方針を示さずに国民に犠牲を強いる政府。国が役に立たないのであれば自分で何とかするしかないと考えるのが普通である。
高性能の武器とまでは言わないが最低限の戦える武器だけでも用意して欲しいものだ。迷宮産の武器は高い。命を救うものになるのだから金を惜しむべきではないと思うがスコップや鉄パイプで戦っている姿をみると本当に役に立たないと思う。
耐久度もあるために何時までも鉄の短剣で戦う訳にはいかないだろう。包丁用の研石で誤魔化しながら戦っているが予備を含めて複数の武器が欲しいところだ。この近くにゴブリン迷宮があるのなら武器を回収するために潜りたいところだが小田原城迷宮は難度が少し高い。
鎧や兜を装備したホブゴブリンが出てきてしかも火縄銃らしいが遠距離攻撃も持っている。小田原城迷宮を攻略するのは城攻めをするのとほぼ変わらず、銃弾を確実に回避できるとは言い難いために幕山迷宮を選んだのだ。
オークは確かにホブゴブリンよりも手強い相手であるが武器は棍棒をメインに持っている。メイスを装備している個体もおり匂いに敏感である。オーク肉を食べてみたい欲求はあったが樹の鑑定レベルだとまだ食べてみないと毒があるかどうかは判断できないのだ。
キノコや野草に関してはネットを見ながら鑑定し似たような食用キノコと毒キノコを見分けることができるようになっていたがこれは非常時に食料を確保するためのものであり必要にならないことを願っている。少ないが誤鑑定することもある。
それだけ似ているということなのだろうが樹としては勘弁して欲しいと思っている。父の部下に頼めば山での有難いキャンプを開催してくれるだろう。ただ彼等はサバイバル能力が高すぎるので一般人である樹には着いていくのだけでも一苦労なのだ。
ライターやマッチがなくても火を起こす方法や安全な飲料水の確保の仕方。山の中で食べられる物の確保の仕方など役には立つが使い所が殆どない技術を叩き込んでくれる。キャンプというよりは野営といった感じで父も毒されているためにできて当たり前と言った雰囲気になる。しかも連れてくるのが藤堂みたいながたいの良い人ばかりなのだ。
紬さんもキャンプをする趣味を持っていたがこちらはかなりソフトなものだ。娘もいるし家族連れのキャンプなのだから自重していたというのもあるだろう。世間一般ではお堅い職業だと思われがちだが彼等も正義感はあるだろうがそれが仕事だからやっているのだ。迷宮に放り込まれることになって職を辞するのも仕方がないことに思える。
格闘技界、スポーツ界では早速、覚醒者による身体強化をドーピングどみなすかどうかで物議を醸した。レベル一でも非覚醒者とは一線を画する力が手に入るのだから当然とも言えた。そこまでぱっとしない成績でしかなかった選手が日本記録を出してしまえば仕方がない事である。
そうなれば金を積んででも冒険者資格を得ようとする者もおり、協会は強化選手に優先的に枠を与えるように要請することになる。オリンピックまでまだ時間はあるがそれでも以前の参考記録が本当に参考にしかならない笑えない事態となる。
自衛官にも柔道やレスリングで出場選手もいる。そして軒並み他の選手を圧倒するようになれば他の選手も追随するしかないのだ。IOCは現在審査中と玉虫色の回答しかしない。そもそもコロナの変異種の感染拡大によって開催に反対する国民は多い。開催後に感染者や死者が増えても政府は人災であることを決して認めないだろう。
一億総中流と言われた時代もあったが今は極一部の富裕層と多くの貧困層に二極化してしまっているのだ。若いというだけで罰ゲーム状態であり、現実はクソゲーというのは格言である。情報を集めていくなかでやはり初日に多くの死傷者が出たらしい。素人が戦闘を行うのは難しく樹も例外ではない。
オーラによる防御も鉄壁ではなくパーティを組むと一人あたりの報酬は激減する。オークを倒してもそのレベルなのだから初めから分かっていたことで有用なアイテムを取得することで一攫千金を狙うにもそもそも低層では手に入れることは難しいという現実だ。
魔法薬を手に入れても数千円レベルなのだ。初期投資としての資格取得代、交通費、装備代を冒険だけで賄うのは難しいのだ。冒険者の中には新たに冒険者になる者の補助員として国営迷宮で働く者もいたが日当は一万円を超えれば良い方だろう。
ただその報酬でさえ冒険者としては高給になってしまうのが問題だろう。現在は仕事を探そうとしても殆どない。介護でも初任者研修を終えていないと雇って貰えないし土木関係も少ない。そうやって溢れてしまった者に政府は公共職業安定所で職業訓練として給付金を出したのだ。樹もその恩恵を受けたとはいえ露骨すぎると思う。
しかも年齢制限として三十五歳まででありそれも一時は二十五歳未満にしようとしていたらしい。よく言われる自衛隊違憲論者は貧困層が労働力として搾取されている。中には資格が取れますとあたかも普通の仕事であるかのようにと主張するがそれは間違いである。独立した国として主権を守るために武力を持つのは当然だ。
ガンジーの無抵抗主義は聞こえは良いかもしれないが暴力に訴えてくる者に暴力で対抗することもまた必要なのだ。無論、何でもかんでも暴力で訴えろとは言っていない。話し合いで解決すべきだし第三者のいる場所、法廷で争う必要もあるだろう。
日本で言えば韓国に対して経済制裁を行うだけで良い。従軍慰安婦問題は一応の解決をしているのに韓国は日本から慰安婦のために支払われた解決金で開発を行い経済成長した事実があるのに日本の企業の資産を差押える最高裁判決が出るなどやりたい放題しているのは日本が甘い顔をしているからだと思う。
経済スワップを止めるだけで韓国経済は立ち行かなくなる。世界的に見た場合、韓国通貨は国際通貨だと認識されていない。反日政策を採っているのだから都合の良いときだけ擦り寄られても断固とした意思で拒否すべきなのだ。レーダー照射問題も同様の問題を抱えている。日本が反撃できない国だと知っているからこそしてくるのであり同盟国であるアメリカや中国、ロシアには間違っても照射しないだろう。
敵対行為と取られ撃墜されかねないからだ。外国籍の冒険者に原則、探索資格を与えていないのは勝手に攻略をされると困るという事情があるからだろう。依頼があれば国際協力として自衛隊を派遣することには反対しないが力を持った冒険者を無制限に受け入れることはできない。それがもしかしたらテロリストとなるかもしれないのだ。
人を制圧するのにSATでは不十分である時代がすぐ来てしまうかもしれないのだ。無差別殺傷事件にも警察は神経を尖らせている。武器を持った一般人が凶行に走らないと断言できないからだ。各地の警察官は冒険者が武器を適切に保管しているか巡回し確認していた。
まずは口頭注意となるが次からは銃刀法違反で摘発するという警告を添えている。警察官も銃を奪われないために神経質になっているために冒険者たちもピリピリした空気を感じ殆どが素直に従った。誤解で発砲されたらたまったものではないからだ。
中には反抗する者もいたが冒険者資格剥奪の話をすると大人しく引き下がりそうでないものは制圧された。人が多く入場すると思われる迷宮には迷宮警察が配置されていた。猟師をしていて猟銃の所持許可を得ていた幸運な者は少し難度の高い迷宮でレベリングをしたらしいが誤射事件も起きている。
回復薬で取り敢えずの傷は塞ぎ銃弾の摘出手術を受け容態は安定したらしいが迷宮の中という特殊な条件が普段、銃を取り扱うことに慣れた人間でも事故を起こしてしまうとして報道がされた様であった。
明日は朝早くに警察官が自宅を訪れるらしい。紬さんも同席するらしいので滅多なことは起こらないだろうが寝不足で迷宮に潜るわけにもいかないので樹は情報収集を切り上げ寝ることにした。




