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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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二十一話

「報告しろ」


「はい。本日、解禁された迷宮に冒険者が殺到し騒動が多数、報告されています。また対象者、田上樹は幕山迷宮へと侵入し無事に帰還しております」


 明石の下には多数の報告書が上がってきていた。監視対象の樹を尾行した白井の報告もそこにはある。


「対象者に動きは?」


「ありません。藤堂三佐率いる精鋭部隊の白井二尉の報告書では冒険者として普通に活動しており、また異常行動は確認されておりません」


 オークを倒せる手段は謎だが、有力な冒険者が国内にいること自体は喜ばしいことである。課長補佐として自衛隊との折衝や国内の冒険者への監視へと明石の業務量は多い。明石の弟は自衛官であり、しかも藤堂の部隊に配属されており、心配の種は尽きない。


 明石の両親は裕福でもないがとりわけ貧乏でもなく大学まで学費を出してくれた。警察官僚として明石の給料は安いものではないし経済的援助をする余裕もある。


「予想されていた通り、迷宮内での死傷事件が起きており、それが事故なのか事件なのかは現在、調査中です」


 魔物に殺される冒険者が出ることも予想の範囲内ではあった。生存競争なのだ。一方的に魔物を殲滅できるなどと政府は考えてもいないし迷宮の中であれば完全犯罪も不可能ではない。


 時間はかかるが死体が迷宮に取り込まれるまでがタイムリミットである。血痕などはその場に残されるために被害者の特定は可能なのだ。冒険者になるにあたって政府はDNAの提出を求めている。


 犯罪に巻き込まれる可能性は低くはないためであり、冒険者を保護するためのものだ。特定された冒険者は二十二歳の男性であり犯罪歴はない。軽微な犯罪を除いて冒険者の資格を制限しているのだから当たり前ではあるが殺された冒険者はトラブルは特に抱えていなかったらしい。


 報告した冒険者もとりあえずは白である。政府はソロを推奨していないし発見者はパーティを組んだ冒険者なのだ。魔物を巡ったトラブルが起きた可能性はあるが倒しても千円を超えない金額で犯罪を犯すメリットがないためにそう判断されたのだ。


 困窮していれば捕まると分かっていても大して旨みのないコンビニ強盗を行う者も出てくるがその場合の殆どは直ぐに逮捕されている。冬になれば逮捕されるために軽犯罪を犯すものもいるのだ。


 人は様々な事情を抱えているために一律で非難することはできないが犯罪を犯す体力があるのならどんな仕事でもできるだろうとは思う。


 警察官が動くということはどんな小さな事件であっても国税が使われているということである。後がなくなり殺害事件を起こすよりはマシだとは思うが自業自得であることも多い。


「捜査官には逐一、報告をさせろ。所轄との連絡はこちらでしておく」


 そろそろ退勤の時間ではあるが今日は帰れそうにないなと思う。何かしらの事件・事故が起きるのは予測されていたし現場の警察官も優秀である。ただ迷宮内での捜査は危険が伴うのだ。


 捜査官に護衛をつける訳にもいかないし銃を所持しレベルを上げているとはいえ警察官の練度は高くはない。そのために政府は解放する迷宮を制限しているのだが不法侵入しようとする冒険者も多かった。


 欲を出せば待っているのは文字通りの破滅なのによく冒険者などと言う不確かな職に就けるなと明石はおもう。それは安定した職を持っている傲慢からだろうか。勉強ができるからと言って仕事もできるとは思わない。


 東大卒でも非正規雇用に甘んじている者も多い。結局は自己責任となるのだが現状を自己責任という言葉だけで表すのも違うとは思う。コロナウイルスは脅威であり世界に悲しみを振りまいている。


 明石の両親は現在だったがいつ罹患しても可笑しくはない。そして、もし両親がコロナに感染したら自分はできることをするだろう。それは上級国民と罵られる行為なのかもしれない。だが、それでも救えるのであれば行動しない理由にはならないと思う。


 今日は迷宮対策課に設置されている仮眠室に泊まることになる。長時間労働は良くはないのだが状況がそれを許さない。国民が安心して生活できるように治安を守るのは警察官の義務なのだ。疲れた体に鞭を打って関係各所に連絡して寝ることにした。


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「明石三曹、出動要請だ」


 明石昇(あかしのぼる)警視の弟である明石亘(あかしわたる)は藤堂率いる部隊の隊員でありレンジャー資格を持つ。広域特殊捜査官は迷宮における捜査権を持っていたが彼等は戦闘のプロではない。


 警察庁から各都道府県警察に出向する形をとり、警察官を監督する立場にあるのだ。神奈川県警へと出向の形をとっている兄、昇はそのコネを使って藤堂の部隊へと捜査協力の要請を出している。


 素早く着替えた亘は待機場所へと急ぐ。本日の指揮官である白井二尉は休暇明けだと聞いていたが、現場へと急行するためのヘリに既に乗り込み情報収集と指揮権の確立を行っていた。


 警察と自衛官が合同で行動する際には必ずと言って良いほどに指揮権で揉める。自衛隊としては指揮権を譲る訳にはいかないのだ。それは広域特殊捜査官の護衛任務に就く際も同じである。


 自衛隊は国民に叩かれやすい。同じ治安を守る警察官の不祥事は見逃されても自衛官だと違憲論者たちがここぞとばかりに叩こうとするのだ。それに待機命令が下される様にはなったが人員は不足している。


 ただでさえ迷宮内で戦える自衛官は貴重な戦力である。そして迷宮対策だけが自衛官の仕事ではないのだ。いずれ起きるとされている大地震にも備えなくてはならない。


 中国の侵攻があるかもしれない。日々、厳しい訓練を受けながら有事に備えるのが仕事であり、警察官や自衛官、消防士などは暇の方が本来は良いのだ。彼等・彼女等の出番があるということは誰かが危機に瀕しているということなのだから。


「ブリーフィングを行う。現場は幕山迷宮だ。夜間監視していた警察官が異常行動を確認。白井分隊は調査の為に現場で確認作業にあたる」


「普段、下山しないオーク数体が入口付近まで接近、発砲したことで一体を仕留めたが増援を確認。大暴走(スタンピード)の兆し有りと判断された」


「質問を宜しいでしょうか。二尉が昼に潜られた際には迷宮の様子はどうだったのでしょうか」


「オークの斥候と思われる個体が冒険者によって倒された。対象者のことは知っているな?私でも銃なしでオークを倒すのは厳しい。異常行動と対処者の接点は不明だが調査が必要であると判断された」


 狙撃銃の手入れをしているのは寺尾二曹だ。暗闇の中で敵を狙撃するのは難しいが数を減らす為に分隊支援火器と共に分隊の火力を担う人物である。通常編成された部隊で対応できないと予想されるときに政府認定特別危険獣対策警備隊【特警隊】へと調査・駆除命令が下る。新設された部隊であり、自衛隊の中でも特危獣災害において特別な権限を持つ部隊である。


 携帯食料を食べとりあえずの空腹を満たす。食べ過ぎれば吐く可能性もあったが武技とスタミナの関係があり、迷宮内で体を保護するオーラもスタミナが関係していると予測されていたためにこれは必要なことであった。駐屯地から運動公園まで移動しそこから車での移動になる。


 現地に直接、降下するかもと思っていたので有難かった。ヘリが着陸できる場所が限られており、緊急出動もここだけとは限らない。藤堂以外の指揮官も優秀ではあるが迷宮があるのは神奈川県だけではないのだ。都心の心臓である東京駅が迷宮化したことによって経済的な損失も馬鹿にならない。蜥蜴人(リザードマン)が現れ対処に苦心している。


 銃弾で貫通はできるのだが一部浸水した箇所が魔物の領域(テリトリー)となってしまっている。オークや牛人(ミノタウロス)も現れており人型魔物がメインであるが構内を確認する作業に時間を要している。


 JRの所有物であり損害賠償に揉めている件も大きい。営業できないことによる経済損失は大きいが迷宮を国有化する法案があっても迷宮を攻略した後のことまでは補償されていないのだ。


 一度、国有化したあとに売却するにしても攻略には人員も金もかかる。死傷者が出れば補償をしなくてはならないために自衛隊も慎重にならざるおえない。有事だからといって民間企業を優遇することはできないのだ。そして、東京駅迷宮では回復薬が宝箱からよく発見される。


 他の迷宮のが最下級回復なら下級回復薬と言って良いくらいには効果がある。効果の高い回復薬をストックしておきたいのは政府だけでなく現場の隊員たちにも言えることであり、現場こそが一番に必要としているのだ。


 幕山迷宮の入口には警察官がバリケードを築いており、パトカーの赤い光が眩しい。二十一時を過ぎた時間ではあるが野次馬を集まってきている。隊車を用意できれば良かったが住民に不安を与えないように二台に分けており武器弾薬も積まれている。


 警察署の武器弾薬も集められている様だが、拳銃では心許ないのだ。迷宮外でも魔法が使えると分かったときに自衛官の多くは土魔法を取得した。塹壕を掘るのは意外と手間であり体力を消費する。


 火魔法を取得する者もいたがそれは偶然の要素が強い。鑑定士が隊に入ることによって部隊のスキル取得に対する難易度は下がったがそれでも取得条件が良く分かっていないことも多い。石碑によってBPの確認がされたが任意のスキルを取得するまでには至っていないのだ。


 それにBP自体が貴重というのもある。これまでの経験によって消費BPが変わるらしいのだが、当然、魔法を使ったことがあるものなどおらず特定の種族を倒すことによって得られる称号の存在を知るまでは取得は絶望的であると考えられていた。


 その点では樹からもたらされた情報は画期的であった。藤堂はその鑑定能力を目当てに隊に取り込もうとしたほどだ。白井は日本人向けに改良された小銃を構え前進の命令を出す。


 照明弾を使うと他の魔物も引き寄せてしまうと考えられていた為に暗視ゴーグルを装備している。これは自衛隊から支給されたものではなく自費で購入したものだ。田上一佐は装備の充実を陸幕に進言していたが中々、実行されずにいたのだ。


 レベルを上げることは急務であったが、他の任務を蔑ろにする訳にもいかない。調査と称して迷宮を探索し続けた藤堂が異常なだけであって規律を叩き込まれている自衛官は自制心が強い。この幕山迷宮は既に政府方針によって封鎖が決定されている。それは樹が原因なのかそうでないのかを判断するためのものでもある。


 人を誤射する可能性がほぼ無いのであれば大胆な作戦行動も可能だ。手榴弾も用意されており、携行対戦車弾まで用意されているのは必要と藤堂が判断したからである。現場指揮官である白井の責任は重い。ここで氾濫を許すようであれば国民に犠牲は出るだろうし自衛隊がこれまで積み上げてきた信頼を失うことになる。


 その為に政府は迷宮を国有にしたという側面もある。国有であれば有事の際に閉鎖することも合法的に行えるし武器の使用も可能となる。市街地戦の度に部隊長が進退を賭けて作戦行動を行うのは馬鹿すぎる。人を育成するのにも少なくない金額がかかる。それが国税であればなおさらである。


 閃光弾の用意もあったが使うタイミングを誤れば部隊を危険に晒す。現場封鎖の指揮を執っていた(つむぐ)は警察官たちを下げ防衛線を構築した。周囲の非番警察官は交通整理を行っており、もし突破されても被害を抑えるべく行動していた。


 警部でしかないために職責の範囲内でできることをするべく活動しているのだ。警察官として市民の安全を守りたいとの思いで行動している。緊急速報として迷宮の情報を地域住民に対して携帯電話に送ることもできるために不用意な外出をするものは少ない。


「二尉。オーク二。ミディアムボア五です」


「弾薬はなるべく節約しろ。明石三曹は左。寺尾二曹は右を頼む」


 兵士(ソルジャー)(ジョブ)を得る隊員が多い中で寺尾は銃士のジョブを得た。射撃MOSを所持している隊員が取得しやすいジョブであり、目立った効果のないジョブであるが命中率に補正がかかるのは有難いことである。


 それに銃に限定されるが換装も早くなる。銃弾を打ち尽くしてしまえば隊員は無力になる。それは自身の身を危険に晒すだけでなく、隊を危険に晒す。


 寺尾が狙ったオークの頭が銃弾によって風穴が空く。明石も銃弾を浴びせることによってオークを仕留めることに成功していた。残るミディアムボアも白井の放った銃弾によって傷付いており三体を倒した所で撤退していった。


「金井士長は魔石を抜いてくれ。田中三曹は周囲の警戒を頼む」


 隊の方針としてできる限りは魔石を抜いて処分するというのがある。金になるというのもあるが防衛省の実験結果では肉体まで損傷させたほうが迷宮に与える損害が大きくなるからだ。攻略を目的としていない以上は障害の排除を優先させるべきだが大暴走の傾向が見られる状況下で処理を疎かにすることは自分の首を絞める行為となるのだ。


 山頂付近まで移動するかの判断に迷う白井。撤退に時間がかかるということは荷物を持ちながらの移動で負担がかかる。それに白井に与えられた任務は調査であって攻略ではないのだ。分隊ごとに行動し結束を高めてはいるが無理は禁物である。回収班として二人の分隊員をあてているが銃器を持ちながらしかも周囲を警戒しながら死体の処理をしなくてはならない。


 このあたりであれば車両も入れるがなるべくであれば使用したくはないというのが本音である。装甲車を持ってくる余裕がないためにトラックを警察から借りている。乗用車に載せる訳にもいかず取り敢えず地面に接していなければ良いために荷台に放り込む予定だ。


 検体としての価値もあるし食用としてだけでなく魔物の生態を知るために重要なことなのだ。費用対効果が悪いために公営迷宮で積極的に魔物を狩ることなしないが非覚醒者を覚醒させるためには便利な施設である。そして、迷宮の仕組みを調べるための実験施設でもある。


 魔物の死骸を集めるのも迷宮で出現させられる種類を増やすために必要な行為らしい。背広組が何をしているのかは中々、情報が降りてこないがそれでも魔物の弱点を研究できるために隊員たちも利用している。


 特に安全に銃術を取得できるのはかなりの利点になると思われる。実戦を経験していない隊員は迷宮の中では使い物にならないがそれでも練習できるのは有難い。国会議員の覚醒施設となっているのには文句を言いたいがそれも必要なことだと割り切っている。それに仮病を使って入院することもできなくなるのだ。


 追及を逃れようとしてもまだ完全ではないが回復薬があるために言い逃れはしにくくなっている。回復薬でも治せないのであれば議員を辞職しては?となるのである。いい加減、外国に対して八方美人である政府に国民は嫌気がさしている。


 それにコロナ対策にもオリンピックの強行にもだ。そのうちまた政権交代が起こるだろう。ただ投票したいと思える議員がいないのは日本が末期状態であることを暗喩しているようにも思える。


 会敵次第、駆除をしていく。レベルが上がる隊員もいるだろうがスキル取得は後回しにせざるおえない。これが緊急時の軍事行動でなければその余裕はあったのだろうが自衛隊には現在、治安出動待機命令が出ているのだ。この駆除活動も情報収集の一環として黙認されている。


 携行対戦車弾を持ってきたのは迷宮主もしくは守護者(ガーディアン)を確実に倒すためである。銃では効かない敵もでてくることが予想されており、深追いするのは危険である。それに白井は藤堂から出発前に部隊を危険に晒す必要はないと念を押されていた。


 バリケードを作る準備もしており、時間はかかるが装甲車も現場への移動中である。そして、市街地に出してしまうことは確かに失態になるだろうが隊員の命にかえられるものではないのだ。通常兵器でも迷宮の外であれば殲滅することは不可能ではない。原理が不明ということに不安はあるがそれでも対抗手段があるのとないとのでは雲泥の差がある。


 できれば朝になるまでに解決をしたいとは思うがそれは難しいと白井は思う。根本的な解決をするには迷宮を攻略しなくてはならない。それは政府方針とは異なり、内閣総理大臣(トップ)が決断しなくてはならないからだ。それに現状では迷宮化した土地は地球生来の成分しか検出されていない。


 だがライトノベルなどであるように異世界と迷宮を通じて空間が繋がってしまっていないとは言いきれないのだ。日本は発展途上国に自衛隊を派遣して迷宮周辺の治安の沈静化や当該国の要請を受けて代わりに調査したが現状ではその兆しがないというだけで予断は許されない状況下にあると考えている。


 人型魔物は社会性を持っており上下関係の厳しい超実力社会だとされているが首狩り作戦が成功してもまた新たな群れの頭ができるだけで根絶させることは難しいと考えられている。迷宮主が魔物を召喚できる以上は脅威は去らないと考えるのが普通であり、全ての迷宮を攻略してしまえば迷宮特有のアイテムが手に入らなくなるというジレンマを抱えているのだ。


「自衛隊、白井より対策本部、応答を願う」


「こちら対策本部。要件をどうぞ」


「迷宮内の活性化を確認。普段は降りてこないとされているオークが複数を確認。引き続き調査を行う」


「対策本部、了解した」


 自衛隊が主体となっているだけまだ楽なのだろう。各県警にある銃器対策課の一部が迷宮対策課となって迷宮や魔物の対策にあたっているが未知の敵に対する対策が万全かと聞かれれば取りこぼしは多いと思う。治安出動待機命令を柔軟に運用することで自衛隊が行動できてはいるがこの命令が治安出動になったときにはまたクリスマスの悪夢の再来となる可能性は高いのだ。


 重要施設があるからと迷宮ができない訳ではない。ただ原発や発電所に迷宮ができなかったのは幸運でしかない。ネット上では国会議事堂が迷宮すれば良かったのにという書き込みもあったが確かに老害と呼ばれる議員や仕事をしない国会議員が多いために国の為になるかもしれないが決断する人間がいなくなればまだ混乱の最中にいたかも知れないというのを忘れてはならない。


 弾薬の使用量は約一割ほどでまだ継戦能力を維持したいたがここよりも山頂へと調査地域を拡大するかは判断に困るところだ。迷宮をコンクリートなどで完全に封鎖しないのは討伐されなくなった迷宮内の魔物は増え続け迷宮外へと氾濫し魔物の狂騒状態、大暴走(スタンピード)を引き起こす原因となることが判明したからである。


 被害者はクリスマスの惨劇よりも多く、ただでさえ治安悪化していたのに警察や軍が混乱することで甚大な被害を与えた。商品の強奪ならまだ可愛いもので殺人やレイプ、放火など無秩序状態となり国連軍が投入される結果となった。


 日本はあまり報道はされないが大災害が起きても秩序を守ろうとし避難所ではあっても盗難くらいのコソ泥がでるくらいであり殺人が起こるということはまず考えにくい。アメリカでは銃や銃弾の取引量が増え憎悪犯罪(ヘイトクライム)や暴動が起きているのだ。


 アメリカはBLM運動が活発化しているが銃社会が抱えている潜在的な脅威であり、確かに人種差別的な部分があることは否めないが白人に差別されている黒人もアジア人差別を平然と行っているのである。中国は世界の嫌われ者となりつつあるが日本をはじめとしたアジア諸国が世界に受け入れられているかどうかというのは微妙な問題なのだ。


 トラックを空にして戻ってきたときに中腹へ向かうことを白井は決めた。人の足で逃げるよりはトラックの方がスピードは出る。そして本来であれば違法行為だが荷台に人を乗せて移動すれば疲労を軽減することもできいざというときに逃げられる。


「金井士長ここに塹壕を頼む。土魔法の使用を許可する」


「了解」


 迷宮の復元力によっていつまでも塹壕が維持できるわけではないがそれでも半日くらいであれば持つと予想している。迷宮内での実験は積極的に行われおり、防御陣地を作ることもそのうちに入っている。兵隊の役割はとにかく移動すること穴を掘ることに尽きる。危険地帯からの脱出や作戦行動エリアへの迅速な移動は必要不可欠であり、自身の身を守るためや排泄物の処理のために穴を掘る技術が必要になるのだ。


 暗視ゴーグルを外し照明弾を上げる。これは視界を確保するためのものであり、遠くに伝えるだけなら無線機で事足りる。刺激すれば何かしらの反応が返ってくると思われ、入口からまだそう離れていないこの場所であれば逃げることもできるとの考えからだ。寺尾二曹がいるために暗くても対応はできるだろう。


 夜目のスキルは状況が限定されてしまうがアイテムに頼らず視界を確保できるのが利点である。小さな光を増幅しているらしく一切の光のない暗闇では役には立たないが月明かりがあるこの状況では有用なスキルであった。


 長距離狙撃を想定していないために観測手(スポッター)を連れてきてはいないが伏射の体勢で周囲を警戒してくれるのは有難く。隊員には気配察知のスキルを持つ者が多い。金井は魔力察知も習得しているために適度な緊張を保つことができている。


 そして白井は部下に交代での休息を命じた。

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