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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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二十話

 買取り価格は約七千円だった。オークの魔石の買取り価格が二千円、スモールボアに関しては一体につき五百円だった。正直なところ冒険者をするメリットは殆どないと言って良い。オークの買取り価格を聞いたときにはどんだけ足元を見てるんだと呆れたくらいだ。


 オークは当然ホブゴブリンよりも強い。銃を携帯できない冒険者なら逆に狩られる可能性がある。短剣でも倒せたことから攻撃する場所を選べば勝てない相手ではないが樹のレベルが上がっていたからであり入場料は取られないものの三時間ほどの滞在で得られた金銭としては微妙なところである。


 短剣よりも長剣の方が安全性は増す。間合いというのは意外に馬鹿にできないもので自身を危険に晒す頻度が低くなるのであればそれにこしたことはないのだ。オークの適正レベルは二十くらいだろうか。


 銃を持っていたり樹の様に強力なスキルを所持していればまた別なのだろうが初心者の冒険者では太刀打ちできないだろう。弱点を狙わなければ攻撃が通りにくく力も強い。水魔法しか使えない樹にとっては相性はあまり良くない。魔法使いであれば攻撃力の高い火を覚えようとする。


 密閉空間や森の中では使い辛いという欠点はあるものの火で炙れば体力は奪われ体の中の水分も奪えたうえに火傷を負わすことも可能なので使い勝手は良いのだ。水魔法はどちらかと言えば生存に特化した魔法属性になる。


 回復魔法も光属性に次いでの性能を持ち合わせており、状態回復の魔法も使うことができる。未知な物に税金を使えないという建前だが、オークの魔石の魔力含有量はホブゴブリンよりも多く、迷宮内の魔物を定期的に狩らないと氾濫するのでないかと考えられているために射幸性を煽る必要はないがそれなりの収入にならないと冒険者が増えないのではないかと個人的には考えている。


 しかも魔石は現状では殆ど使い道がない。樹がやったように魔石から魔力を抜くのにもコツが必要であり、魔法を発動できるくらいでないとロスも大きい。しかも原則的に政府が一度は強制買取をしたうえで希望のアイテムだけ買い戻すという形を取っているために独占事業である。それは有用性が確認されたら政府は魔石によるビジネスを牛耳り利益を独占するつもりであるとも言える。


 レベルと倒した魔物の相関関係を明確にできない以上は密輸をしようとする人間もいるはずだが、魔石に関する取締りはきつく違反の程度によっては冒険者資格の剥奪すら有り得る。これも利権が絡んでいるのだと樹は思う。魔石だけの金額で言えば安いがこれは討伐代金の様なものだ。


 自衛隊でも倒せないような魔物が出現すれば高価になるだろうし樹はDPにも換算できるので損だけが出る訳ではない。オークはステータスは低くはないし、迷宮内を改造する時に力仕事を任せることもできるために登録だけはしたいと思っていたのだ。


 迷宮核(ダンジョンコア)のリストから分かるのは繁殖させるのを想定しているのか雌の方がコストは高いということだ。オークにも雌はいたが基本的にオークは他種族を孕ますものだと思い込んでいたために安心した。ゴブリンとオークの妊娠期間は気になるところであるがこれは実際に確認してみないと分からないだろう。


 おそらくはオークの方が妊娠期間は長いと予想しているが二ヶ月以内だと良いなと思う。基本的に魔物は防衛戦力として数えなくてはならないために悠長に繁殖させている場合ではない可能性は高い。使い捨てとして割り切る必要もあるが消費するDPは抑えたいと言うのが本音だ。


 金をDPに変換できないかなとも考えたが現状では難しいらしい。試しに硬貨を入れてみたが殆どポイントは増えなかった。おそらくではあるが材質の価値分しか加算されないシステムになっており、作成ポイントと買取ポイントには差があるのではないかと考察している。


 鉄の短剣であれば作成に六百DPかかるが迷宮核に取り込ませて得られるポイントは良くて二百DPほどだろう。迷宮から資源を採取し販売することで差益を得ることは難しいが、DPでほぼ無制限に作成できるのは強みだと思う。資源は何れなくなる。


 石油燃料も無制限にあるわけではなく、いつかは枯渇するものだ。そして、水も同様である。日本みたいに蛇口を捻れば安心・安全な水が飲めるというのは浄水能力が高いからであって当たり前ではないのだ。


 取水問題も世界では起き始めている。水もタダではないし幾らでも取れる訳ではないのだ。降った雨が地面へと染み込み幾層もの地層を経て浄化されるのには長い時間がかかるものなのだ。レアメタル問題や天然ガスも同様だ。資源のない国にとっては迷宮というのは福音になり得る存在なのは間違いない。それは適切に管理・維持ができることが前提条件ではあるが。


 等価交換とはいかないが樹が錬金術を取得しようとした理由にもなる。金属であれば純度を上げるくらいのことしかできないだろうがそれでも不要なアイテムを上位アイテムに変換できるのであれば十分である。危険を最小限にし迷宮主の作成能力が加われば有用なアイテムを用意できる可能性は上がる。


 霊薬(エリクサー)クラスの回復薬ができるかもしれないしただ中級回復薬や上級回復薬ができるだけなのかもしれない。ただ需要はこれからかなり高くなると予想されるアイテムである。


 実際に迷宮内でゴブリンと遭遇し重傷を負った冒険者もいる。オーラが体力代わりになると言っても限度はある。恐らくではあるが初日だが冒険者を辞めた者も出ていると思う。ゴア表現が規制されるのはゲームの中だけだ。攻撃を受ければ出血し四肢を失うことも有り得る。


 冒険者試験で覚醒した者は戦闘経験がないまま戦場へと送り込まれた兵士の様なものである。プロ格闘家やプロスポーツ選手も覚醒するために冒険者資格を取った者がいるらしいが覚悟はあるのかと問い質したくなる。


 冒険者には氾濫が発生した時には参戦義務がある。これは拒否すると資格剥奪だけでなく罰金や禁固刑も有り得る刑罰である。今は身体能力の高い一般人という位置付けだが覚醒者が増えるほどに埋没していくくらいの差しかないのだ。


 レベルアップ後のステータスアップは素の才能に左右されるためにプロスポーツ選手やプロ格闘家の方が強くなると予想できるが実験はできていないし戦士型、魔法使い型はどのように分かれているのかは現状では不明だ。そもそも魔法適正を得るのにBPが五必要なのに対して称号を手に入れてなければレベル十五の時点で得られるBPは六である。


 そういうものだと言われていなければBPを無意識にステータスやスキルに割り振ってしまうのが普通らしく魔法使いは殆ど生まれない事になる。実際はスキルの習熟度によって消費するBPが変化するために低レベルでも覚えることは可能だろうが魔法書(スキルロール)でもない限りは難しいと思うのだ。


 樹だって初代討伐者のBPがなければ鑑定眼を取得することは不可能だった。樹が落ちた桜公園迷宮が世界初の迷宮ではないだろうが、一番最初に魔物を倒す恩恵は大きかったのだ。初代シリーズはできれば獲得しておきたかったが二つ取得できただけでもかなり有難かった。


 スキルは冒険者の命綱になる。金剛も良いスキルだが早い段階で鑑定能力を得られたからこそできることは多いと思う。物品の価値を鑑定するのには経験が必要となるが何となくではあるが価値が分かるのは優位に立てる材料となる。流石に骨董品の真贋を見極めることはできないが辞典やインターネットで調べたことは情報が更新され見ただけで分かるようになる。


 キノコ類も間違って記憶しなければ毒キノコに当たることは少なくなるだろう。偽装したステータスを入口に居た警備員に見せて樹はスーパーによって帰ることにした。


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 私の名前は白井勇斗二等陸尉である。藤堂隊長の命令とはいえ一般人を尾行するのは気が進まない。これも試験の一環だと思って行動しろと言われたが尾行すること自体が不可能に近いと思う。


 幕山迷宮はオークが銃で倒せるからという理由で暫定E+等級になった。一般人には銃の所持は許可されていないし今回の目標(ターゲット)は田上一佐の息子さんである樹くんだ。


 一佐の自宅に何度かお邪魔したことはあるが樹くんとは顔見知り程度の仲である。休日に訓練と称して迷宮に潜っていると錯覚させるためにカバーストーリーを用意したが無駄に思える。近付けば察知されるために遠巻きに観察しろとの藤堂からのお達しであったがまず体力的な部分で追い付くのに不安がある。


 山岳訓練もしているし厳しい条件下での行軍も経験している。ただ魔物、敵性生物がいるだけで難易度は桁違いに上がるのだ。魔物以外にも猿・猪・蛇など通常の生物も生息している。周囲に気を配りながら対象を失わないのは困難がつきまとう。白井のレベルは十八で第一職(ファーストジョブ)は兵士である。


 銃を使う者の中には銃士(ガンナー)兵士(ソルジャー)に分かれており、警察官と自衛官で違いがあるのではないかとされているが詳細は不明点である。自衛隊は樹くんから聞いた情報を元に職業に就くことを推奨していた。


 指揮官(コマンダー)で無かったことには気落ちしたが取得条件が判明していないので落ち込むだけ無駄である。銃士と兵士の差は汎用性の高さにある。銃士も兵士も銃術を獲得しているという点では同じだが、兵士の場合は銃弾がなくなっても戦える点が大きく異なるのだろう。円匙で戦うことも初期にはしていたそうだ。


 サバイバルナイフがあってもゴブリンを殺せるかという問題に突き当たるがそれを超えてもらわなくては迷宮攻略部隊には入れない。死傷者を減らすために選抜試験が行われ精鋭部隊が編成されるのだが、覚悟が必要である。白井の場合は藤堂に目をつけられて半ば強制的に連行されたのだが。治安出動の際に藤堂の部隊にいたのだから諦めてはいるが。


 世界の情勢は決して良いとは言えない。ロシアは北方領土の返還を法律によって禁止したし中国はコロナウイルスが中国発祥であるとされているのにマスク外交を行った。アメリカ大統領が変わったことによって中国とアメリカの経済戦争は落ち着きを見せ始めている。


 尖閣諸島や竹島問題と領土問題は至るところにありそこにきて迷宮が出現したのだから大混乱である。そしてただでさえ国民の半数以上が開催に反対しているオリンピックを政府は強行しようとしている。


 変異型と呼ばれるコロナウイルスは若年層への広まりが早く基礎疾患を持っている高齢者だけが危険ではないのだ。そして特徴として急激な症状の悪化もあるらしい。つい数時間前までは元気にしていた人が急変し亡くなるというのも十分に有り得ることなのだ。それに医療崩壊をさせないために緊急事態宣言があったはずなのに既に医療は崩壊している。


 必要な手術が受けられない患者や搬送に数時間かかる場合もあり熱があるというだけで診療を断られることもあるのだ。医師・看護師の離職も大きな問題となっている。正直な話、正義感だけでは務まらない仕事だと思う。対応で疲弊しているのに給与などの待遇が悪ければ続かないのは致し方ないことだと個人的に思う。


 白井自身も自衛官を辞めるか悩んだ。防衛大を卒業し幹部自衛官としてキャリアを歩んできたが仕事なら他にも沢山ある。魔物の血液や死に際の声を聞く度に大切な何かを失っている気がするのだ。襲ってきたスモールボアを円匙で叩いてサバイバルナイフで止めを刺す。まだ入口付近だから良いがこの装備でオークと戦いたくはない。


 小銃であっても数発は撃ち込まないと動きを止めることはできないのだ。銃創によって血を流していても油断すればこちらが狩られる立場になるのがオークだ。ホブゴブリンであれば完勝することもできるがレベリングという点ではオークの方が良いのだ。銃弾は固定ダメージを持った飛び道具みたいなものだ。


 敵の防御を抜けなければ全く意味はないが通用する相手なら一方的に殲滅することも可能である。そして、経験値は相対的なものであるらしい。ある程度レベルが上がった者がゴブリンやホブゴブリンを殺しまくっていてもレベルが上がることは殆どなくなるらしい。ゴブリンであれば非覚醒者であっても倒せる魔物であり、食物連鎖のほぼ最下位に位置する魔物だが繁殖力は高く殆どの迷宮でその存在が確認されている。


 迷宮の難易度を測るためにはその迷宮で出現する魔物を確認することが必要となってくる。本来であれば幕山迷宮も冒険者に解放される予定では無い迷宮だった。迷宮帰還者(ダンジョンサバイバー)のレベルもピンキリであるが樹くんに限っては政府が能力を確認するようにと命令を出してくるほどだ。レベルやステータス情報はその人物の生命線になり得る。


 白井も部隊内ではある程度までは開示するがそれは連携のために必要になるからであって好んで公表する訳ではないのだ。日本人というのは数字を比べるのが大好きであり、ステータス至上主義の下地は既にできていると白井は思う。幼い頃はテストの点数や成績で競い大人になれば年収で競い合う。


 それが悪いことだとは言わないが人生にゆとりは必要だと思う。白井も実家がもう少し裕福であったのならと思わないこともないが現状には満足している。金があれば大学に進学していただろう。それはある意味では惰性である。


 成績は良かったが大学に進学することで親に負担をかけるのは違うと思ったのだ。それに大学に行ってまでやりたい職業があるというわけでもなかった。サラリーマンになって生活のために働く自分を想像しにくかったというのもあるだろう。


 付かず離れずの位置を維持しているがそれでも既に気付かれていると白井は思った。オークを仕留めた時の動き出しは目視できたが倒すまでの経緯は理解の範疇を超えていたのだ。何かしらのスキルを使用したというのは理解できたが素手でオークを制圧することは可能なのだろうかと考えれば多対一であればできなくもないという感想だがそれでもレベル十超えが複数人は必要になるだろうと思った。


「こちら明石。新規の冒険者です。周囲の警戒をお願いします。」


「白井、了解。」


 樹くん以外の冒険者は来ないと思っていたが無謀な人間は多いらしい。全ての迷宮に人員を投入することはできないが白井の様に休暇中に迷宮へと派遣されたものは数人いる。銃の装備は入口まで戻らないとできないがそれでも迷宮内で火器が使えるというのは大きかった。


 政府としても初日に多くの死傷者を出すのは避けたかったのだろう。職務として迷宮にいれば野党からの追及があるがわざわざ休みの日に潜っていた隊員を非難することは難しい。政府が推奨しているのが原因である。経済界の押しに負けて解放したのだから責任を担って欲しいと思うが商業主義に傾き過ぎた経済界を止める力はほとんどないと言っても良い。


 政治家にとって組織票は重要でありただの人となるか先生と呼ばれるかの瀬戸際になるのだから全ての要求をのむことはしないものの適度な付き合いは必要になるのだ。そして、いま連絡してきた明石三等陸曹は狙撃のスペシャリストである。白井よりも歳は下だが有能な部下であることには間違いはない。


 厚木から人員を送り込むのに時間はかかり神奈川県内には迷宮が複数ある。隊員としては増員して欲しいくらいだが退職者が相次いで出てしまっているために人手不足なのも事実である。アメリカから高価な兵器を購入するくせに人件費の削減に政府はとにかくうるさい。


 防衛費の増大は国民に負担をかけることになるために節度は必要だが必要なものを補充しないのとは違うのだ。身の回りの消耗品を自費購入しているものは多い。それではただでさえ成り手が少ないのに自らの首を絞めている状態なのだ。迷宮の探索にも特別手当が付くがそれも雀の涙しかでない。


 精鋭の自衛官にもなれば冒険者になった方が収入がよくなるともなればノウハウを得た人員が流失してしまう。それは有事の際に戦える戦力が減るということでもある。銃があるから戦えている部分は否めないがそれでも高レベルの覚醒者が貴重であることに変わりはないだろう。民間の冒険者を広域特殊捜査官へ任命して引き抜きを行うにしても上手くいくのかというのは疑問である。


 福利厚生は確かに良いのかもしれないが負傷した自衛官が職場に留まれるかは疑問なのだ。国の為に尽くした仲間を嫌がる人間はいないと思いたいが職場や仲間に迷惑をかけることを嫌って退職する者は多いのだ。それが良い事だとは思わなくても引きとめることは難しいのだ。白井だって四肢を失って隊に迷惑をかけると分かっていれば退職するだろうからだ。


 他国、特にアメリカでは軍務に就いた軍人をリスペクトする傾向がある。それは命懸けで戦った者に対する礼儀であり、彼等・彼女等が危険な任務に就くことで安全に暮らしていけているという認識が国民にあるからだろう。果たして日本は良い国なのだろうか。戦争アレルギーとも言える言論は自由ではあるが自衛官の犠牲の上に安全があることを忘れないで欲しいとも思う。


 漁師だって安全な環境で漁ができるとは限らない。排他的経済水域(EEZ)の中だろうが安全だとは限らないし、自衛隊は日々、領空・領海侵犯と戦っている。日本の駄目なところは領空侵犯に対して撃墜措置をとれないことにもあるだろう。爆撃機が領土上空を飛んでいたとしても退去勧告しかできないのであればそれは他国に舐められるだろう。それに未だに日本は敵対国として不利な立場にある。


 第二次世界大戦後の国連は敵国条項を削除していないために日本に対する制裁を加えることが可能だとしている。主張するのは中国・ロシアであるが五十年以上前の戦争を忘れることはできないが放置されているのも問題なのである。日本はそのためにODAなどでアジア諸国を味方につけようと様々な援助を行ってきた。


 それが常時なら良いが今日(こんにち)の非常時においても外国に対してお金は出すが国民が困窮しているのに自助努力して下さいという政府には呆れるしかないだろう。ひとり親に支援する意義は分からないでもないが困窮しているのはひとり親だけではない。


 コロナによって職を失った者もいればパート・アルバイトでシフトが減った者。正社員ではあるが賞与が減ったことによって収入が減り住宅ローンが払えない者など様々な理由で影響を受けているのだ。救済に飲食業が入るのは良いだろう。確かに感染によって収入が減ったのは事実であるからだ。ただ飲食業だけか減った訳でもないのだ。


 それに業績が伸びたのは一部であってコロナに感染して死亡しなくとも経済死する若者が増加している。ただでさえ少子高齢化によって生産人口は減少してるのにだ。コロナを人災だと言うものもいるがそれは間違いではないだろう。一年以上も経っているのに無策すぎるのだ。今の日本に現状を変えるだけの力を持った政治家がいないのも痛いだろう。


 ある意味では監視任務であるが休暇という建前があるのだから今日、取得したアイテムは自身の収入になる。スモールボアを倒すくらいであればレベルはそこまで上がらないだろうが、それでもレベルを上げとかなくては生き残れないかもしれない。迷宮を探索している自衛官に現れ始めている心理状況である。不測の事態に備えて訓練をしてきた。


 いつ迷宮から魔物が溢れる災害が起こるか不明なために生物を殺すという心理的障壁が乗り越えやすくなっているのだ。自衛隊も隊員の心理状態には気を配っているが完璧にこなすことは難しい。


 どうしても溢れてしまうこともある。藤堂に高い食事を奢って貰おうと決意しながらも白井は樹を追い続けた。


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 こんな筈ではなかった。就職はしていたがコロナの影響によって解雇され職を失った。一発逆転をするためになけなしの金を払って冒険者になった。装備を揃えるのにも金がかかり職が決まらないまま失業保険の給付期間も過ぎた。


 迷宮の解放を心待ちにしていたのは自分だけでなかったはずだ。少なくとも安い金で使われるよりは良いと思い冒険者を選んだのだが失敗であった。生物を殺すことに抵抗がなかった訳ではない。喧嘩することはあっても相手を殺すつもりでやったことはなく自分の事を善良な人間であると疑うことはなかった。そう少し躓いただけなのだ。


 確かに正社員として就職できずフリーターを続けていたのが悪かったのかもしれない。アルバイトが長続きしたことがなかったのも反省してももう遅い。奴がくる。必死に逃げたが追いつかれてしまい青年は意識を失った。

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