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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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十九話

 助けを求める声は男性のものであった。少なくとも冒険者資格が取れるのは高校生を除いた十八歳以上の者である。入口にあったテントでは入退出の記録を録っており、万が一の場合は救援に向かうこともある。だが危険を覚悟して迷宮に入った冒険者を探索する費用は高額である。


 迷宮のランクが上がるほどに金額は高くなり、救出保険に入る者は殆どいない。言い方に問題があるかもしれないが冒険者になる人は何かしらの理由で困窮しているからだ。日本は徐々に平穏を取り戻しつつあり、魔物の危険性は認知されつつあるが全く関わらないで生活しようとするのも不可能ではない。


 各地で起きた災害は鎮圧のための費用を高騰させた。特別国家公務員である自衛官にはストライキの権利はない。それに時間外勤務の概念もない。有事の際に労働基準法があるので出動しませんと言う訳にはいかないためで過去の反省から文民統制(シビリアンコントロール)に目を光らされている。武力を政府が管理できていないというのは悪夢である。


 終わりの見えない内戦へと突き進む可能性もあれば対外戦争に若者の命が浪費されるかもしれない。内の結束を固くするのにはただ外部に今日の敵を作れば良い。そうすれば利害が一致している間だけは協力体制を築くことができる。資源を巡っての戦争は愚かだが際限ない欲望を満たすためには必要なことだ。


 水や食糧だって勝手に無限に増えるわけではない。労働の対価として金を貰って品物や時間を買っているに過ぎないのだ。迷宮ではある意味では福音であり、ある意味では地獄の門を開け放つ所業とも言えた。命を対価に未知なる世界を冒険すると言えば聞こえは良いが、結局の所は貧困層が一発逆転のギャンブルをしている場所に過ぎないのだ。


 樹だって金の為でなければ迷宮に潜ろうとしなかっただろう。少なくとも両親の援助があったために直ぐに生活に困る訳では無かった。ただ父、(まもる)はいつ死ぬかも分からない迷宮に携わる幹部自衛官として難しい選択を迫られる時がくるだろう。補給がなければ軍隊は戦えない。


 それは金が無くても同じことだ。膨張し続ける防衛予算だが必要な兵器が購入されているかと言えば疑問であり、人件費を削減しようとするのは愚かである。備品を自費購入させられている自衛官は多く、ペンなどの筆記用具は自腹という会社員も多いだろう。


 本来であれば労働者を使用している使用者が払うべきものだ。やり甲斐の搾取どころか自分の利益のために労働者を使い捨てにする使用者が多すぎるのだ。樹は基本的に介入するつもりはない。


 こちらが助けたつもりでも力を借りなくても自分たちだけで倒せたと主張されても面倒であり、不要なリスクを負う必要など全くないからだ。それに人の言語を話せるのは人だけだと過信すると痛い目に遭う。ここ幕山迷宮において人語を操る魔物の存在するが確認されているために余計に慎重にならざるおえないのだ。


 マネリトルバードやマネザルと呼ばれており、登山者を惑わせ滑落死させる存在らしい。しかも魔物であるために他の魔物を呼ぶ。それも種類を問わずにだ。低級の迷宮でありながら多様性を持っているのが樹が幕山迷宮を攻略しようとした理由であり、他の迷宮主(ダンジョンマスター)の脅威度を確認するためだ。全ての迷宮主が敵になるとは思っていないが敵になった迷宮主が格上だった場合には確実に詰む。


 現状は自衛官や警察官が抜き出ているが時が経つほどに冒険者の中でも質が問題になってくるだろう。暴力性を持った冒険者と一般人との格差も問題になってくるだろう。必要のないリスクを負った冒険者が金と力を手に入れて暴走しないと言いきれる者は稀有な存在だと思う。


 声がした方向に向かって来たが人の気配はしない。やはり魔物による罠だったのだろう。そして都合の良いことに単独でいる豚人(オーク)を発見した。オークの厄介さはホブゴブリンを上回る。体重が重いということだけで厄介なのだがオークは人型魔物として人類を繁殖の対処として襲ってくる。分厚い脂肪は天然の鎧であり、筋肉量も多い。


 流石に仕留めたオークを食べることはしなかったみたいなのだが、異世界物だとオークの肉はブランド豚肉の味だとされ興味はある。ただオークの特徴として性欲促進剤に使われる描写がされることも多い。若い樹にとってはまだお世話になる必要はなかったが歳がいくほどに需要は増えるらしい。それも権力と金を持った人ほど欲しがる傾向にあると思っている。


 自衛隊も生体調査のために生きたままの捕獲を試みているがオークは現状だと難しい。脅威度の低いゴブリンですら迷宮から連れ出すことは推奨されていないのだ。ゴブリンも人を襲うが成人男性なら非覚醒者でも制圧は可能だ。喧嘩慣れしていない人なら負けるかもしれないが負ける=死でもあるために迷宮内での観察に留めている。


 オークが持つ武器は槍だった。本体は木でできているみたいで先端は鉄製だった。これが迷宮主から与えられた量産品なら問題はないが自作したものであれば脅威度の修正をしなくてはならない。道具を作成できるというのは思っている以上に厄介なのだ。金属加工は技術がいる。黒曜石などであれば割ることで鋭利にすることができるが鉄だとそういうわけにもいかないのだ。


 火を扱うということはそれなりに発達した技術があるということで食糧を保存するための土器もただ乾燥させるだけでは土塊と変わらないのだ。そして保存ができるようになればある程度、狩猟に頼っていたとしても安全性が増す。生態系を狂わすことも問題だが安定して成果を得られないというのは地味だが非常に大きな問題となる。


 冬になれば冬眠する動物も多く出てくるだろう。寒さが続く数ヶ月もの間、何も食べないで生活できるのであれば問題は少ないだろうが全ての生物が冬眠する訳ではないのだ。果物も狩る動物もいないのであれば冬までに食糧を備蓄するか食べないでも生存できるように進化するしかない。人は徐々に狩猟から農耕へと生活様式を変えてきた。


 試行錯誤の繰り返しであり歴史が人々の生活の基盤となっている。歴史を残す為に口伝だけでなく文字を書物を残すことで知識を継承してきたのだ。人に可能なのだから魔物には無理だという理由にはならない。石器を使うオークであればなるべく攻撃を受けない様に注意するくらいで良かったのかも知れないが鉄なら回収しておきたい。


 迷宮核に吸収させればDPが貰えるだけでなく登録アイテムも増える。そして、それは普通に換金するよりも交換率が良かったりもする。手持ちの分だけしか回収できないのに対して吸収は基本的には無制限にできる。最大DPがあるとはいえそう簡単には貯まらないのだ。冒険者を殺す予定などないし魔物を倒しても最初のうちは金に変えておいた方が無難である。


 換金額が冒険者ランクの目安になる。現状ではFから始まってSランクまであるらしいがランクを上げておくのは大事である。低ランクであればいつまで経っても低収入で命を対価としての報酬としては釣り合わないだろう。それにいくら迷宮が自己責任の世界でも侵入制限というものが決められた。


 Dランク以上の迷宮に関しては原則的に侵入禁止となった。自衛官たちですら攻略を現状では諦めなくてはならない難易度に素人が参加しても犠牲を増やすだけだからだ。冒険者に刀剣類の許可は下りたが銃器に関しては厳しいままである。迷宮内での誤射を避けるという意味が大きいのだろうが樹からしてみれば近接格闘の方が素人には難しいだろうという感想だ。


 オーラを足に集中させていく。徐々にスムーズにできるようになっているという自覚はあるがそれでも溜めに時間がかかり過ぎている。脚力を強化することによって瞬時に間合いを詰めることができるようになるらしいのだがその域に達するのにはまだ時間がかかりそうである。周囲を確認してみるが助けを求める冒険者はいなかったためにやはり罠だったのだろう。


 短剣の間合いへの移動し金剛を発動させる。ホブゴブリンより厄介な魔物であると聞いていたし安全を確保するために短期決戦でいくためである。ホブゴブリンの変異種と比べてどちらが強いかは分からない。ただレベルが上がればそれだけ安全マージンがとれることになり狩りの効率が上がると考えてのことだ。金色のオーラは樹に活力を与えてくれる。


 オークの攻撃を完全に見切ることはできないがそれでも防御を突破される危険性が低いのであれば大胆な行動が取れる。オークの顔面に鉄拳を叩き込み頸動脈を短剣で斬りつける。脂肪に阻まれるかと思ったが深く切り裂けたようで大量の出血とともに崩れ落ちた。樹はオークの全てを回収することを諦めたという体裁を整えるために短剣を胸に突き刺す。魔物の全てを回収できなくとも少なくとも倒したのであれば魔石は回収する。


 樹よりも体重の重いオークを持ち帰る必要はないし討伐証明は魔石でもできる。鑑定ができなくともステータスオープンに慣れていれば表示される。これも慣れと経験が必要らしいのだがゴブリンよりも魔石の価値が高いために捨てて行くということはできない。本当であれば全てをそのまま迷宮核に取り込みたいという欲求はある。だが撤退するにしろ探索を止めて帰るにしろ理由は必要なのだ。


 手にしていた武器は槍なので扱いに困る。短剣術は短剣にしか武技が作用しないが銃を除けばスキルを所持していなくとも武器として使用することはできる。長剣を使っていたときはレベルアップに伴うステータスでのゴリ押しだったが槍を習ったことは当然ない。冒険者の中には元々、剣道の経験者もいるらしいのだが、少数派である。


 護身のために習う人が少なくなっており経営は難しくなっていたのだが迷宮の出現にも伴って復活の兆しをみせている。正直なところゴブリンでも生物を殺すという行為に忌避感を覚えている。


 樹が殺せたのは殺さなくては殺される環境であり、運が良かったからだ。筋肉がつきにくい体質とはいえ筋トレもランニングもしている。覚醒後は明らかに身体能力が上がっていたが維持する努力も必要で行動によって上がるステータス値が変わるのであれば訓練しないわけにはいかないからだ。


 魔物を解体し血の匂いが周囲に拡がっているこの場に留まるのは危険だと判断して樹は移動を開始する。スモールボアを数体、倒した所で休憩をとることにする。樹は知らなかったが普通であればオークの集団に囲まれていても不思議ではない。迷宮を脅かす迷宮主を放置することは危険すぎるからだ。オークが集団で襲ってこないのは自衛隊を警戒しているからに過ぎない。


 上位種であるほどに召喚コストは高くなる。銃を持つ自衛隊に対してオークは接近するだけで多くの犠牲を出した。狩られると分かっていても防衛するためにはオークの力が必要になるために山頂から動かさないで自衛隊の動きを観察しているのである。迷宮主は迷宮内の様子を知ることはできるが制限はある。


 監視装置を置くか魔物を配置することでしか察知はできず倒されたということは把握できてもどのように倒されたかまでは把握できないのだ。樹の目的は攻略でないために少しでも多くの魔物を倒してレベルアップすることにあった。


 金銭的に余裕があるとは言い難いのが樹の懐事情だ。武器が壊れれば新たに購入しなくてはならないし美術品として価値はあっても武器としての価値が低い刀を購入する金などない。サバイバルナイフでも安い物ではなくまた警察にお世話になる可能性もある。


 心理テストに合格し最低限の人物保証がされているとしても街中に凶器を持った人間が闊歩するのは好ましくない状況なのだ。市街地に魔物が現れたことを想定し許可はしているものの地球に迷宮が現れた日以降は日本は平穏そのものと言って良い。


 それは警察官や自衛官が見えない努力をしているからだ。発展途上国では膨大な死傷者を出した。混乱していたというのもあるだろうが国軍ですら自国に現れた魔物を退治できない国もあるのだ。国土の広さと迷宮の数は必ずしも比例するものではなく日本みたいに多くの迷宮が現れた国もあれば中国みたいに人口比で殆ど低級の迷宮しか現れない国もある。


 そして迷宮の数が国力に比例するようになると予想され攻略に乗り出したのだが低ランクの迷宮では良いアイテムが産出されにくいという現実があった。魔物さえ上手くコントロールできれば迷宮は宝の山である。


 下級回復薬にはそこまでの薬効はないが再生治療に画期的な革命をもたらすとされており、また魔石から電気エネルギーを抽出しようと研究も進めれている。火力発電には環境的な問題が多く原子力発電にはメルトダウン時の対応や核廃棄物の処理などの問題が多く残っているためにクリーンなエネルギーを世界は求めているのだ。


 魔物を倒し迷宮核へと取り込んでいく。今の所は安全に倒せている。ダブる魔物は魔石だけ残して後はDPへと変換している。これはどの素材が高額買取の対象になるか分からないからである。ここ幕山迷宮は完全攻略はされていないがオークさえ対応できる実力があればレベリングに適した迷宮である。樹はそれなりにレベルが高い自覚はあったがつい先程にレベルが一つ上がったばかりである。


 現在のレベルは十七であり、早いところでレベル二十まで上げて【錬金術】を獲得したいのだ。この錬金術のお得なところは土魔法適正がセットになっているところであり素材を【上位変換】、【下位変換】できることにある。金属を抽出するのに土魔法は便利であり魔力の消費が大きいのと設備が必要になる錬金術だが迷宮経営には必要な能力であると樹は考えていた。


 何も自己防衛のための戦力さえ揃えば樹が直接に戦う必要はない。グリーンリーフやマジックリーフの上位アイテムがあれば魔法薬(ポーション)による回復量も増えるし素材を独占さえしてしまえば個人が企業とも戦える資金力と発言力を得ることは不可能ではないのだ。それに二十もしくは三十レベルで第二職業(セカンドジョブ)が解放されるのではないかと予想している。


 迷宮主(ダンジョンマスター)の恩恵は自身の迷宮においてのステータスアップだが下位職、上位職の概念があるのなら上位職の方がレベルアップ時の恩恵は大きくなると思うのだ。迷宮主は万能職らしく尖った所もなければへこんだ所もない器用貧乏とも言える職みたいだが錬金術師は魔法職の上位職であり魔力に対する補正があるのではないかと睨んでいる。


 魔法は迷宮の外でも使えるが使い勝手は悪い。魔力というエネルギーがなければ発動できずに迷宮内の方が魔力の回復は早い。ただ無から有を作りだし無手でも敵に対抗する力を持てるというのは魅力的であり、犯罪抑止のために魔力センサーの開発が急がれている理由である。


 魔法を使えば完全犯罪も不可能ではないと思う。そのために国は冒険者に対してステータス開示を求めているのだ。国の情報管理を考えればステータスが偽造できないとされている現段階で偽装する必要性は低いと思われがちであるがステータスこそが冒険者の命綱になると考える樹は不用意に開示する文化を形成しようとしている国を信用していなかった。


 国からの情報流出が疑われる件がどのくらいあっただろうか。保険証を持っていなくともマイナンバーカードでさえあれば良いのもどれほど信用ができるのだという話だ。既にかなりの精度で財産把握ができるシステムが国税庁にはあるらしいのだが本来の使い方がされていれば問題はないが確実に悪用しようとする人間が現れるだろう。


 もし多くの冒険者情報が流れれば確実に良い事にはならないだろう。国民健康保険業務を受託した企業が中国企業に再委託する問題もあったが明確な回答は得られていない。前総理大臣ですら関与があったら辞職すると息巻いていた癖に隠蔽を指示されたとされる官僚が自殺をし罪を着せて逃げたのだから話にならないだろう。


 財産や生命は既に自己防衛するしかない時代に突入しているのだ。それが魔物であっても本質的には変わらないと樹は考える。誰かに護ってもらえるという前提で動くのは受け身すぎるのだ。自衛官や警察官だって完璧ではないし人だからミスもする。犯罪を犯すのは論外であるができることとできないことが明確にあるのは理解するべきだと思う。


 もし目の前に魔物に殺されそうになっている人がいたとしても樹は必ず救えると言う確信がない限りは助けない。自己陶酔するのは勝手だが力があるからと言って助ける義務はないのだ。それがもし顔見知り程度であれば多少はできることをしようとするだろうがただそれだけだ。それが家族や親しい知人であればまた考えるがそれも力がなくては救えないし自分を護ることすらできないのだ。


 そういう意味では樹が春菜にしたことは酷いかもしれないが可能なことはしたうえで判断を投げたとも言える。ゴブリンの子を産みたいと思う女性はいないだろう。また実際にゴブリンの子供が産めるのかは不明だ。残念な事に被害者は自死するかゴブリンに嬲り殺しにされており、救出時点では生存していてもその後に生存した記録が日本にはないからである。


 流石に犯罪者であっても魔物の子供が産めるかどうか実験することは日本では不可能とも言える。金銭を対価に依頼を受ける女性はいないだろうし何より倫理的な問題が大き過ぎる。残念なことにコロナによって若年層の自殺者は増えているようだ。


 未来が見えなくなったことに絶望して自ら命を絶つのはどれほどの覚悟なのかと思うが、電車に飛び込みをするのは止めて欲しい。報道各社は最近は報道しなくなった様に感じる。解毒薬さえあれば初期の症状であれば回復するのは鑑定士がいれば何れは判明することだと思う。


 樹の症状からただの風邪だった可能性は否定できないがそれでも同じ時間帯に入っていた同僚が感染していることからそれなりに感染していたリスクはあると考えていた。それでも政府は対処しないだろうと樹は思う。他にも有効とされている対症治療薬があるのに厚生労働省は認可していない。


 それなのにワクチンに関しては迅速に認可するというちぐはぐさを見せている。補償をすると言っているが信用しない方が良いと思う。建築材として使われた石棉(アスベスト)の有害性は早い段階から指摘されていたが政府が使用禁止を決定するのにかなりの時間を要している。


 安価にはそれなりの理由があり癌などで死亡したもしくは罹患した被害者に対しての補償が行われたのはつい最近のことである。政府を信頼しているとは聞こえが良いがただ思考停止をしているに過ぎないと思う。


 政府にそのつもりがなくともオリンピックの為に検査数を操作していると疑われても致しかねない行為を政府がしているのだから救いようがない。それならば違約金を払ってでも中止するべきで商業主義に走りすぎた現在のIOCを解体すると言った方がまだ支持を得ることができるだろう。


 短剣についた血糊を用意してきた雑巾で拭う。しないよりはマシと言った程度だが武器を研いだことがある人間なんて限られているし包丁ですら少数派だろう。迷宮の宝箱から見つかればと思ったがフィールド型の迷宮では殆ど見つかっていないらしい。巧妙に隠されているという場合もあるだろうがフィールド型の場合は冒険者が侵入してきた時点で宝箱を置く理由が殆どないからだろう。


 迷宮に出現する素材を目当てに侵入してくるのは共通した事由だろうが階層型と違って侵入させる理由がないとも言い換えられる。滞在時間によって得られるDPが変化するために希少であるほどに深い層で入手可能になり浅い層で得られるアイテムに関してはたかが知れてるのだ。


 難易度に対して報酬が少な過ぎれば訪れる冒険者は減るだろうし実入りが減ることになる。階層によって難易度を調整しやすいというのが階層型の利点である。対してフィールド型ではいきなり強い魔物と戦う可能性はあるが環境が階層によって変化しないという利点がある。


 灼熱層の次の階層が極寒層であることもあり引き際を誤って命を落とす冒険者は意外と多いのだ。補給を考えない冒険者が命を落とすのだがフィールド型ではそういう事故が起きにくい。ただ守護者と突然に戦闘にになり為す術なく全滅をするリスクが高いためにフィールド型の難易度は高めに設定されることが多いのだ。


 今は狩れるだけ狩っておきたい。レベル至上主義ではないが不測の事態に対応するためには相応の実力が必要だからだ。今は金銭的に赤字でも魔石を売れば金になるしオークは睾丸が買取り対象になっているらしい。やはり現実世界でも効果があるのかと研究したがる者は多く需要はあるみたいなのだが樹としては回収したくない。


 何が悲しくて悩める男性のために狩りをしなくてはならないのだ。相応の金銭が支払われるならまだしも研究段階であるらしく買取り価格は激安なのだ。


 本来なら価値がない物でも買取りをしてくれるだけましなのだろうがモチベーションは上がらない。他の冒険者はもっと落胆しているだろうなと考えつつ幕山迷宮を後にした。

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