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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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十二話

「警告」


 樹は冒険者登録をするために横浜に来ていた。受験費用は決して安くはなかったが、これからのことを考えれば必要なことであった。受験資格は満十八歳以上で高校生は不可であった。未来ある若者を危険な職業に就かせる訳にいかなかったために就労制限がされた。


 技術の進歩は三DテレビやVRゲームへと進化させ、現実と変わらない世界を構築するまでに至った。本来の視界はVRゴーグルで塞がれ擬似世界の視界には敵であるゴブリンが映っていた。これは政府が考えた苦肉の策でもあった。


 政府の建前としては生産人口を死地に送るなどしたくはない。安定した税収があってこそ自身の立場が揺らがなくなるのだから当然のことだった。しかし、政界に対する財界の突き上げが厳しくなっているのも事実である。


 旨みがあるからこそ議員や官僚をしているが、頭が良いのかもしれないが国民の実情にそくした政策を実行している政治家がどれくらいいるのだろうか。


 覚醒者に関して実技試験を免除するようにする動きもあったが、実力にも様々な要素があり、単に強いというだけでなく適切な状況判断ができなくては生きては帰れない為に非覚醒者に混じって試験を受けることになったのだ。


 その代わりに覚醒者に関しては受験に関して優先権が与えられることになった。格闘家だから生き残れるとも限らず、死者は少ない方が良いと考えたもの達によって実験動物(モルモット)にされたのだ。


 覚醒者ということは程度の違いこそはあるものの魔物を殺した者であり、オーラによって保護されているもの達である。そして、覚醒のための手間が省けることから受験料も非覚醒者に比べると安くなっている。


 防衛省・厚生労働省・経済産業省からなる迷宮探索庁が新たに設立され、迷宮利権が生まれることになった。国としては本音では国民を犠牲にしてでも他国よりも優位に立ちたいという思惑がある。


 特殊作戦群によって迷宮の探索が行われているが、覚醒者・非覚醒者を問わず頭に直接、響いた声は衝撃的であった。声の主を神と崇める集団さえ出てきているが、初めて迷宮を攻略した者の正体は掴めていないのだ。銃火器が無力化される空間においてサバイバルナイフだけで生存するのは難しい。


 不可能ではないが、戦争を経験したことのある兵士であっても近接戦闘で敵兵を殺した経験のある者は少なく、日本においては殺人自体がほぼ禁忌(タブー)となってから長い年月が経ち過ぎていた。


 戦争を体験したもの達が鬼籍に入り、戦争の記憶の継承も途絶え始めている。平和なのは良い事だが、平和すぎるのもまた考えものなのだ。


 鯨・海豚(イルカ)が駄目で牛や豚を殺すのは良いと思っている価値観や宗教的対立から起こる戦争やテロ。領土問題に対して遺感砲しか撃てない政府。マイクロプラスチックによる海洋汚染や経済を優先させるために起こった大気汚染など地球上では様々な問題を抱えているが、遠くの国で起こった惨劇よりも人気となっているドラマの方が人々の関心は高いのが現実なのだ。


 新型コロナウイルスも地球を汚染し続ける人類に対する罰であり、迷宮や魔物の存在は増長した人類を滅ぼすための神の使徒であるという風潮すらある。それは非覚醒者を旧人類、覚醒者を新人類と分類し、行われる差別へと繋がっていくだろう。


 日常生活において身体能力がものを言うのはプロスポーツ選手くらいであったが、冒険者と非冒険者の能力格差が収入格差へとなる可能性を示唆していた。


 魔物から逃げるだけならプロスポーツ選手でも不可能ではないだろうが、魔物と戦うとなればプロ格闘家でも非覚醒者であれば困難がつきまとい地道なトレーニングを行わなくても弱い魔物を倒すだけである程度までの戦闘能力を手に入れることは可能なのだ。


 身体能力の向上は格闘家だけでなく、他のプロスポーツ選手にも恩恵を与えることになる。覚醒者による覚醒の手伝いの整備は行われているが、その歩みは遅い。


 今はとにかく自衛官や警察官は迷宮で探索し、未知の生物・物質の発見と自己強化に忙しく、裾野を広げる必要はあるが他国に遅れをとるわけにはいかないからだ。そうなれば精鋭と一般部隊の練度は拡がり続け、国としての方針を最初に決定しなくてはならなく、国家戦略が問われているのだ。


 先進国の多くは二極化を選択した。人的資源は限られており、無闇矢鱈に消耗して良いものではないからだ。治安維持組織は一部の精鋭部隊を保持することを忘れることはなかったが、国民への解放は慎重にならざるおえないというのが大半の国の認識だった。その認識に否を唱えたのは中国である。


 一人っ子政策は結婚できない成人男性を生み出し、転換せざるおえなかったが、先進国の中では随一の人口を誇る。安価な労働力で作られた安価な製品が世界を席巻していたが、それも発展途上国の台頭によってシェアを奪われ転換せざるおえない状況まで追い込まれていた。


 共産主義国なのに国民の格差は拡がる一方で国家主席の求心力も落ちている。世界の中心の国「中国」と名付けるだけあって覇権をアメリカから奪おうと領土的野心も見せているのだ。


 日本の場合、第二次世界大戦の戦勝国に押し付けられた憲法によって自衛隊は世界では軍と認識されているのにも関わらず日本国内では立場は浮いており、合憲の存在と主張する法学者もいれば違憲だと主張する法学者もいて改憲論は立ち上がっては立ち消え、国としては自立国とも言い難い存在となっており、かつての技術大国・経済大国としての地位を失いつつある。


 政治家たちの好き放題は上級国民と揶揄(やゆ)されているが勝手を許しているのは国民であった。選挙や政治への関心は低く、一度も選挙に行ったことのない若い国民も多い。そうなれば、確実に票になる高齢者優遇の政策が採られるのは当たり前のことであり、民主主義の大原則のひとつとしての多数決で若者は蔑ろにされることになる。


 少子高齢化によって若者が選挙に行っても無駄だと思われがちだが、民主主義において政治的意見を述べるのは重要であり、その意思表示が投票なのだから国民の権利を行使しないで政治批判をするのは筋違いであるとも言える。


 声が大きくなれば政治家も無視することは出来ない。政治家も選挙に落ちればただの人であり、若きリーダーの誕生には必要不可欠な要素であるからだ。昔は今どきの若者はと言われていたが、今は今どきの老人はと言われるような人物が増えていることからも所謂、老害に期待しても無駄だと樹は考えている。


 今の介護保険利用者は四十になっても介護保険料を払っていない世代だ。そして、コロナ禍による病院受診の減少から考えても本当に必要な医療を受けていたのではないことが判明している。


 健康寿命が尽きた老人を胃瘻(いろう)で延命させることに意味はなく、次世代の負担をただ闇雲に増やすだけの結果になるだけだ。当事者にならないと理解できないことも多いと思うが、健康な多くの人にとって健康保険料は馬鹿に出来ない出費であり、年功序列が崩壊し低収入となった若者にとってはいざというときにあれば確かに助かるが、全額自費で負担した方がコストパフォーマンスは良いということもざらなのだ。


 身体能力は非覚醒者に準じた仕様となっているためにこの実技試験は樹にとっては非常にやり辛いものとなっている。出力が増したことにより制御は難しくなったが、慣れてきたと思ったところでまた以前と同じ身体能力で戦わなくてはならないのだ。完全没入型のVRMMOの方が樹にとっては普段の感覚に近いのだ。


 感覚のズレから索敵までは問題はなかったが、ゴブリンの攻撃を受けてしまったのだ。下層に出るゴブリンとは異なり上層の場合、素手である事が多いのだが、ダメージを受けたということには変わりはないために衝撃を弱めた振動が身体を襲っている。


 それならば全てVR空間にしてしまえば良いと思うが、プロ仕様でもある機体は高価であり、まだ手軽にフルダイブすることは出来ないのだ。歴史の浅いフルダイブシステムの悪影響も全てが判明しているわけではないために月額料金もしくは都度料金で借りる者が大半であり、それがフルダイブをし過ぎるという制限をかけることに繋がっている。


 樹はこんなものかと嘆息した。探索者資格が欲しいのであって力を誇示したいのではない。迷宮の中の緊張感もない。これは虚構(フィクション)であって現実(リアル)ではないからでもある。


 樹が迷宮から脱して日常に戻りつつあったが、退屈でしかなかった。死なないために働くのかただ生きる為に惰性で働いているに過ぎないと理解してしまったからだ。それまでは平凡で良いとすら思っていた。


 だが、迷宮は生きる手段から目的になりつつある。これからは弱肉強食となるだろう。魔物は明確な殺意をもって人類に襲いかかっており、国という枠組みは意味をなさなくなると予想されている。資源の奪い合いの戦争は起こっていないが、大国は覇権を争っており、日本も例外ではないだろう。


 身近な人を護るためにも迷宮の力は必要だと考えていた。無事に冒険者ライセンスを取得した樹は武器登録の為に最寄りの警察署を訪れていた。国家公安委員会の許可が必要であり、NPO法人である探索者協会に預けなくてはならないものの一般人よりも比較的容易に許可がおりるためだ。


 樹、自身は素手でも戦えるが武器があった方が良いのは言うまでもない。そして、処分するか保留にしていた成果物の中から短剣を売る事を止め買い戻すことにしたのだ。


 やはり、政府は迷宮での取得物に関しては一度、政府に所有権が移るように法整備を行っており、有用なものは冒険者が買い取れるようにしていた。危険物を持ち込ませないためには有効ではあるが、迷宮核(ダンジョンコア)などの価格は未定であり、必ずしも労力に見合った報酬とは言い難いのが現実である。


 怪我をすればその間は無収入になるばかりか治療費もかかる。交通事故と同様に健康保険での治療ができないために費用も嵩むのだ。なによりも死亡する可能性がある。


 居合わせた冒険者が常に助けられるとは限らないし、救助費用も請求される。ゴブリンなどの人型魔物を倒せない者も多く、雑魚の代表格であるスライムも物理攻撃では核を傷付けなければ倒せないし、傷付いた魔石の価値は殆どないために働き損となるのだ。


 魔法を覚える者もいるらしいが、ある程度までレベルを上げなくてはならず、初期魔法と言えど連発できる様なものでもない。そして、魔法使いは別途に登録が必要であり、迷宮外での使用は緊急時を除いて刑罰の対象となるのだ。


 樹は迷宮に潜り始めてから登録をしようと考えているが、それまではモグリの魔法使いとなる。動画サイトに冒険者チャンネルは乱立し、中には血が飛び交い魔物が死ぬ場面があるために収益化を剥奪されたチャンネルもあった。


 実戦武道としての道場は廃れつつあったが、護身に興味がある若者も多く経営は立ち直せるところまで回復したらしいが、実際の魔物を前にすれば練習は役に立たないことも多いためにあくまでも護身の範囲を超えない様に教えているらしい。


 中途半端に武術をかじっている者ほど危険な存在はない。戦えるという過信が逃げるという選択肢を失わせるのだ。樹の場合、父の職業の関係もあって自衛官とも親しく、警察官とも親しいために幼少より訓練してきた。


 本格的に始めたのは五年程前であったが、下地はできていた為にそれほど苦労することはなかったのだ。正確な人数は分からないがこの会場の受験者は三百人ほどで七割ほどが合格となったようだ。


 筆記試験も法令から出題され、その出題も講義の中からであり、落とすための試験でないのと性格診断テストみたいのをやったが、これは攻撃性の高すぎる受験者に資格を与えない為のものだった。


 実技テストも仮想現実でいくら試しても危機に陥らない限りは意味のないものであり、覚醒のサポートまであるのだからここまで落ちることを協会は予想していなかったはずだ。


 登録する際に死傷する可能性があり自己責任であることに同意し署名することになっており、また政府は国民の犠牲を許容してまで迷宮の成果物を求めているのだ。使い道の分からないアイテムが画期的な発明の素材になることは十分に有り得る話だ。


 そして、警察庁は各都道府県警察に対して覚醒者の監視を解くように指示を出したとされている。街中の武器の携帯も所持許可証があっても直ぐに取り出せないようにする必要があり、専用リーダーにライセンスを通す必要がある。


 樹は目的地へと着き申請を待っている最中に会いたくない人と会ってしまった。助けた女子高生だった。当然、知らないふりをする。気を失っていたために春菜は樹のことを見ていなかったが、タイミングが悪い。


 優先権が与えられるのはあくまでも希望したものだけであり、非覚醒者も混じって試験を受けている。しかし、死傷する可能性は決して低くないはずなのだが、倍率は十を超えた。覚醒の手間暇から絞らざるおえなかったのだが、幸運に恵まれて当選するかと言えば疑問でもあった。


 勤務先からそう遠く離れていない所に公園と高校があり、何度か見た顔であるのだ。そして、早い時間で人はおらず公園ですれ違っていた可能性も高い。春菜は緊張していたのか、あろう事か樹へと話しかけてきた。


 適当にあしらうこともできたが、未成年の女の子を露骨に無視していれば周囲の注目を集めてしまう。恐らくは心のケアも含めて女性警察官と話した帰りだと思われた。迷宮遭難者が参加できるグループディスカッションを断り続けてきたのが仇となった。


「冒険者になるんですか」


「田上くん。今日は紫藤警部に会いにきたのかしら」


「いえ。冒険者ライセンスを取得したので武器登録のためです」


 探索者協会でも刃型などの登録をしているはずだが、省庁間のパワーゲームがあったのか警察署でも登録が必要で手続きが面倒だと樹は思う。確かに必要な手続きではある。多くの非覚醒者にとって刃物は脅威であるからだ。


 だが、覚醒者に関しては必ずしも脅威であるとは言えなくなる。任意発動型のスキルを発動していなくともレベルさえ上がってしまえば防御力を貫通して切り傷を与えるのが難しくなるからだ。自身で試そうとは思わないが、魔力のない攻撃に関して耐性を持つからでもある。


「運が良かったと言えるのかしら。身体には気をつけるのよ」


 割って入ってきたのは樹が迷惑そうにしているのとグループディスカッションを拒否し続けていたために気を利かしてくれたのだろう。出来事を話すことで緩和されることもあるが、思い出したくないこともある。


 警察官としてそういう機微には敏感であるし、春菜の事を気遣ってのことである。警察官として所轄区域での迷宮遭難者の情報は把握しており、特に女性である春菜の担当となったことで樹が同じ迷宮で遭難し、怪我をしたものの生還したことを知れば尚更である。


 魔素が薄いとは言え、樹は鑑定が迷宮の外でも有効なことを実験で把握しており、見ればオーラを纏っていることからもゴブリンを殺したことは理解できる。そして、迷宮内で鑑定したときには称号を手に入れていたことも把握済みだ。


 彼女の境遇には同情するが、それ以上のことは樹に出来ることはなかった。そして、迷宮の開放日は一ヶ月後になることが決まった。


「川上さん。行きましょうか」


  無事に許可証を手に入れたのは良かった。冒険者になれた時点で身元がクリーンであることがある程度は保証されたことになるが、武器を持てるかどうかは命に直結するために重要なことだった。


 協会に預けることが原則ではあるが、迷宮間を移動することもあれば突発的に魔物と戦闘になることも想定されるのだ。しかも、迷宮主は他の迷宮主から狙われることになるのだから備えは万全にしておかなくてはならないのだ。


 闘気(オーラ)と魔力制御に磨きをかけるのには十分な期間であるし、魔法は放出系は法律で制限されるが魔力を練るだけでは違法ではない。魔力を効率よく運用するためには魔力放出孔を大きくする必要がある。そして最大出力と同時に細く練ることも重要となる。


 質の良い魔力は魔法の威力を増大させる。ウォーターボールで敵を殺傷するのは難しいが、水の力は時に鉱物すら削る。生物は呼吸を必要とするために窒息させることも可能だ。


 魔力やオーラによる犯罪が起これば感知する装置が必要になる。装置の開発には少なくない年月が必要になるだろう。一度、覚醒さえしてしまえば完全に制御するには年月が必要になり、また魔力やオーラといった原理のよく分かっていないものを相手にするために原理が判明していないが使えるという状況にもなりかねない。


 使用者(ユーザー)であればそれでも問題はないのかもしれない。だが、開発者すらも理解していないのであれば危険であり、長期的な影響も時間が経たないと分からないのだ。


 それは回復薬の分野にも言えることである。本来、製薬とは有効成分の発見から人体に作用する効果を見つけ出し、多くの動物実験を行った後に、治験者に投与され効果を確認する。性別、年齢、体重・既往歴(きおうれき)など考慮すべきことは多岐に渡り、副作用なども確認しなくてはならない。


 ただ、この治験者も言わば健康のプロであり、製薬会社にとって都合の良いデータを集めるために存在している猛者もいるので注意が必要なのだ。忘れてはいけないのは、DP(ダンジョンポイント)に変換することだ。


 迷宮を初期化してしまったことで一から作り直さなくてはならない。そして、迷宮は迷宮主(ダンジョンマスター)の好きなように作れるような万能性はない。現在、樹の体内に迷宮核(ダンジョンコア)が収納されているのは本来の機能を失っているからである。DPを貯めることはできても消費することはできない。


 そして、他の迷宮主に察知されるデメリットは健在のままなのだ。迷宮の階層を作るにもDPが必要で、何をするのにもとにかく消費するような仕様となっている。


 そして、迷宮核を迷宮に設置すると複数の迷宮核を所持していない限りは、戻すことはできないために予備の迷宮核を手に入れる必要があった。政府に管理され始めているために野良迷宮を探し出すことは不可能に近い。


 迷宮核の所有権が移譲されると迷宮は異物を迷宮外に放出する。そうなれば誰かが迷宮を攻略したことは簡単に露見することになる。ただし、既に迷宮主であった場合には速やかに権限の移譲が行われるために排出するかは選択が可能となる。


 懸念することは迷宮主としての戦いに出遅れないかということだろうか。各国も国民に向けて迷宮を解放する方針をとりはじめている。覚醒者は迷宮に潜って自身を強化し、報酬を得る。


 レベルはあくまでも目安でしかないが、高レベルであるほどに能力が強化されていくのは間違いなく、迷宮主は特殊職ではあるが戦闘能力も求められる。生産職となり、戦闘は配下に任せるというのもひとつの手段ではあるが、生き残れなくては意味がなく、強さが求められるのだ。


 無論、迷宮の等級さえ上がってしまえば迷宮主が直接、戦うことなどほとんどなくなる。あるとすれば上位冒険者の出現や他の迷宮主の眷属が迷宮に侵入してきた時くらいとなるが、等級を上げるのが何よりも難しいのだ。H級からG級に上げるのはさほど苦労はしないだろうが、D級以上にもなれば複数の条件を満たす必要があり、眷属となる魔物によっては早く限界が訪れることになる。人型魔物は汎用性が高い一方で動物型魔物に比べるとステータス値が低い。


 他者の迷宮核を奪うのは迷宮に棲息する魔物の種類を増やすためであり、装置としての役割を果たす為に名も語られていない神の暇潰しのためにあると言って良い。迷宮主にも利益があるのは人は利益がないと積極的には動かないからである。


 誰かに施しを与えるのも結局の所、人に良く思われたいとか優越感に浸るための打算的な行動でしかないのだ。そして、名もなき神は自身が創造した生物をみて暇を潰すのだ。樹は所用を済ませたために借りている安アパートへと帰宅した。

https://ncode.syosetu.com/n6911gy/


以前、連載してきたものをリメイクしたものです。VRMMO物で宜しければこちらも読んでみて下さい。

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