20.王国の使者
男爵領を出て、村への帰路につくフェイ。
だが、そんな彼の元に、再び別の訪問者が現れる。
――竜の紋章をつけた騎士。
それはドラゴニア王国の宮廷騎士団の面々だった。
人数は10人。
王室直属のエリート部隊がいきなり辺境の地に現れたのは、当然偶然ではなかった。
「――フェイ・ソシュール! 貴様を王都に連行する!」
やれやれ、やっぱり僕か。
フェイはため息をつく。
「なんの用ですか……。僕はこれでも忙しいんですが」
フェイはそう抗議するが、相手は聞く耳を持たない。騎士たちは剣を引き抜き、今にも斬りかかってくる勢いだった。
フェイは仕方がなく、
「“セイク・リドート”!」
精霊の魔法で宮廷騎士たちを一網打尽にする。
「く!? み、身動きが取れない!!」
フェイはさらに騎士たちを無力にする。
「“ディ・オフ”!」
すると、まるで母親が子供に服を脱がせるように騎士たちはすっと鎧を脱がされ、剣を取り上げられた。
「なに!?」
「それじゃぁ、結界はもう少ししたら解けますから、どうぞ王国へおかえりください」
そのままフェイはその横を通り過ぎていく。
「ま、待ってくれ!」
叫ぶ騎士たち。
だがフェイは無視していく。
「……た、頼む! このままでは王国が滅んでしまう!!」
と、その言葉を聞いてフェイは立ち止まる。
「王国が滅ぶ?」
「そうだ。魔界への扉が開いて、王都がめちゃくちゃなことに! お前の力が必要なんだ!」
――なんだって。
フェイは驚く。
魔界への扉は、フェイの用意した結界で封じ込められているはずだった。
そろそろ動力源を更新する時期ではあったが、ちゃんとマニュアルにはもれなくその方法を記載していた。
――だが、そこでフェイは答えにたどり着く。
女王は、王家の宝石を使うのを躊躇ったんだな。
女王は富を何より大事にする。
自らの財産を“奪われる”ことを嫌がったのだろう。
「……全く、どこまでバカなんですか……」
フェイはため息をつく。
さすがに何十万人の人間を見殺しにはできないか。
「わかりましたよ。王都に行きますよ」
†