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13.城を作りましょう



 フェイたちは、精霊植物である「テビア」を村に持ち帰ってきた。

 これを村で育てて近くの街に売りに行くのが目的だった。


 しかし、


「ご主人様! 今気がついたんですが、もう村の中には畑がありません!」


 それは確かに目下の課題であった。


 村はモンスターからの襲撃を避けるために、崖に囲まれた場所に作られている。

 そこは天然の要塞で、確かにモンスターの襲撃から身を守るのには最適だったが、当然あまりスペースがない。

 すでに敷地いっぱいに畑があり、フェイが作り出したゴーレムたちがせっせと農作業に勤しんでいた。


 だが、要塞に閉じこもっていなければいけなかったのは、フェイがここに来るまでの話だった。


「そうですね、村を拡張しましょう」


 問題に対してフェイはさらっとすごい解決策を提示した。


「村を拡張ですか?」


「別にこの崖の中でなくてもよくて、要は壁に囲まれて入ればいいのでしょう?」


 フェイの言葉に、村人たちの想像力がついていかない。


 とフェイは村の外に出て行く。五分ほど歩いていったところで立ち止まって、しゃがみこんだ。


「“マド・クリード”!」


 ――いつもの精霊術で、土が盛り上がってくる。ただ今回は量が桁違いだった。フェイが手を置いた先から、どんどんどんどん土が集まってきて、あっという間に数メートルの壁が築かれる。


「す、すげぇ! あっという間に城壁ができちまった!!」


「手で作ったら一年はかかるぞ!?」


「ゴーレムどころか、要塞も作れちまうのか!?」


 村人たちが驚きの言葉を口にする間にも、どんどん壁が作られていき、あっという間に四方を壁で囲われた空間ができあがる。

 だが、壁を作るだけでは終わらない。


 フェイはさらにゴーレムを16体作り出し、壁の周りに等間隔で配置した。


「見張りも立てました。これでかなり安全かと」


「す、すげぇ! こんなにいっぺんに城と兵士が……!!」


「見張りのゴーレムは普段動かす必要がないのであまり魔力がかかりませんから、あまり魔力を必要としないです。だから実はあまり難しくないんですよ」


 フェイは心の底からそう思っていたが、村人たちは主人様の徳の高さゆえの謙遜だと理解して、さらに讃える。


「さすがご主人様だ……」


「まるで創造の神様のようだ」


 フェイは、宮廷で誰かに褒められると言うことがほとんどなかったので村人たちの賛美がくすぐったかった。


「……とりあえず、場所は確保したので、栽培を始めましょうか」


 †


 フェイたちが精霊植物テビアを育て始めてから一ヶ月ほど。


 村人たち精霊植物の成長ぶりに驚いていた。ものの一ヶ月そこらで城壁の中は一面緑色になり、早くも実をつけたのだ。


「こんなに早く成長するんですね。やはり、ご主人様が何かをされたのですか?」


「いえ、特別なことは何も。この辺りは元々少し魔力が強いんです。精霊植物は魔力に応じて成長しますからね。この辺りは育てるのに適しているんです」


 フェイはゴーレムたちに指示を出して、青々と育ったテビアの実を収穫させた。


「ご主人様、ちょっと食べてみてもいいですか?」


 とイリスが尻尾をふるふる振りながら尋ねてくる。


「うん、もちろん」


 フェイが許可を出すと、イリスはピンと尻尾を立てて喜んだ。


「ちなみに葉っぱもお茶になるから」


 そう言って、フェイは土から器を作り、そこに水を集めてテビアの葉っぱと実を入れて火の魔法で煮込む。

 あっという間にテビア茶ができあがる。


「どうぞ」


「いただきます!」


 お茶を受け取ったイリスはすぐにそれに口をつける。


「ッ!? 甘いです! 王都で飲んだお茶より甘い!」


 どうやら「未開の地産」のお茶と砂糖は好評なようだった。

 フェイは他の村人たちにもお茶をふるまう。


「す、すげぇ! こんなうまいもん生まれてはじめて飲んだ」


「これが毎日飲めるなんて、ここは天国か!?」


 王都暮らしだったフェイには、高級品である砂糖の味もさして珍しいものではなかったが、村の人々にとってはやはり衝撃的な味らしい。


 テビアの栽培は、街で売って「外貨」を手に入れるための施策だったが、どうやら村の人々にも喜んでもらえるようだった。


「それじゃぁ、収穫して早速街に売りに行きましょうか」


 †



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