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海でぐー/短編集

新型コロナウイルス感染症には罹ってないけど、とある一件で感じたことを書いてみた

作者: 海でぐー

これは、読者の皆様の暇つぶしを目的とした作品です。

教訓とか気付きに繋がれば本望ですが、エッセイでは初挑戦になりますので、構成や文章力にはあまり期待はしないでください。


作者の実体験を赤裸々に語っていますが、人間の醜さ(笑)なども垣間見えますので、ご気分を害したらごめんなさい。



 それは、とある日の仕事終わりのこと。


 五月初旬のその日、私(作者)の住む地方では今年一番の暑さを記録していて、職場でも皆が暑い暑いと言いながら仕事をしていた。

 例に漏れず私もその暑さでバテ気味で、とてもマスクをして仕事をしていられないと感じ、何度も外して呼吸を整えながら働いていた。

 いつもより動きが激しい仕事内容で、それが原因で余計に暑く感じるのかと職場の仲間と笑っていたりもした。





 ――――その日の夜のことであった。


 帰宅した私は、すぐにシャワーを浴びると同時に脱いだ服は全て洗濯機に入れて回し、それから新しい服に着替えて部屋で休むことにした。

 巷では新型コロナウイルス感染症が流行っており、私の近場ではまだ発生こそしてはいないものの、いつ来てもおかしくないと感じて念入りに対策を講じていた。帰宅後すぐの一連の行動もその一環だ。

 だからいつも通りの流れで対策を終えて部屋に入り、あとはひと休みしてから夕食を摂るだけである。


 強いていつもと違う点を挙げるとすれば、その日はいつもより暑かったので帰宅後も体が火照っており、なんだか便通も良くなかった。

 それに前日の日課の筋トレも少し多めだったため、そのせいだとは思うが体の節々が少し軋んでいる気がしていた。


 でもまあ、ひと休みすれば治まるだろ……とベッドに横になり、布団を被ってそのまま火照りが冷めるのを待つ。まあ、大体いつも通りの帰宅後の光景という感じだ。



 何かおかしいと感じ始めたのは、それから三十分ほど経った頃のこと。


 時間が経っても一向に火照りは取れず、それどころかより熱くなっているようにすら感じるではないか。

 でもまあ、気温が高かったし体に熱がこもっているのだろうと達観し、私は軽い気持ちで体温計に手を伸ばした。


 その結果は37度ちょうど。

 いつもは夕方だと36度半ばから後半くらいだけど、気温のせい。気温のせい。

 ひと眠りすれば大丈夫だ。そうに決まっている。


 そうして布団に包まってさらに三十分後。

 熱は引くどころかさらに熱さを増し、いよいよおかしいと思うようになる。 

 認めたくは無かったが、ついには寒気すら覚えるようになってきたではないか。



 これは…………まさか?



 いやいや、そんなはずは無い。

 ()()()、うちの近隣ではまだ一人の感染者も出てはいないじゃないか。

 外出自粛もしているし、対策だって徹底して行っている。

 だからこれは違う。きっと普通の……風邪か何かで、別に俺は大丈夫だ。


 そう考えながら一層布団を深く被り、葛藤を続けることさらに三十分。

 熱はついに38度まで達していた。 


 なんとなく分かってはいたのだ。

 明らかにいつもの風邪の時より熱い体に、感じたことの無い異質な感覚。

 38度以上の発熱などここ何年も経験したことは無かったから、本当はヤバいと直感で分かっていた。


 けれど認めたくは無かった。

 38度を超えてもなおグングンと上がり続ける体温計の数字に、それでもまだ()()()インフルエンザだ、自分は大丈夫だと言い訳をして。

 明日は遅い出勤時間だから、朝一で()()()風邪を引いたと会社に話して病院に行けばいい。案外眠ったら熱が下がるかもしれないし、大袈裟に騒ぐ必要も無いから今日のうちに電話する必要は無いのだと自分に言い聞かせて。


 途中からは上がり続ける体温が怖くなって、体温計は手に取らなくなっていた。もう夕食どころではない。


 とにかく体を暖かくして眠ろう、水分を取って安静にしようと、眠ることだけに集中する。

 だが、焦りと恐怖で一向に寝付けない。


 極めつけに足先が冷たくなり、まるで死期間近の小動物のように体を丸めてジッと動かず恐怖に耐えた。

 ここまで来ても()()()()()、終いには「死」すら覚悟し始めるほどまでに追い詰められつつあった。



 そうなると、今度は色々と別の心配が生まれて来るもので。


 この後眠りから覚めても熱が続いていたら、救急車だろうか自家用車がいいのだろうか。


 新型コロナウイルス感染症だとしたら、病院ではなく保健所か。


 でも熱が出て四日どころかまだ初日だし、保健所に連絡するのは確か熱が四日続いてからだから、それならやはり救急車か。


 でも、救急の人たちに感染させたらマズいし、熱だけで「新型コロナです」と言うのは大袈裟過ぎるかもしれない。


 だけど万が一……。



 ……なんて思考がグルグルと回った後、次に浮かんできたのはペットのことであった。


 自分の部屋で飼っている小動物(ネズミの仲間)の世話は、俺が入院とか隔離になったらどうするんだろう。


 一応親には万が一を想定して世話の仕方を告げてあるが、コロナの場合は部屋も消毒されて入れなくなるのでは。


 それ以前に消毒剤によってペットは死んでしまうのでは。


 その場合、責任も取ってもらえないかもしれない。今のうちに別の部屋に移して、同じ空間にはいませんでしたアピールを保健所の職員にするべきか。



 その辺りまで考えてから、いやいや今はとにかく眠らないと、話はそれからだと思考が堂々巡りする。

 精神を鎮めて眠ることに意識を集中するが、気付けばいつの間にかまた思考のループが始まっていた。



 そういえばウイルスが体に入ってから発症まで数日~二週間程度だったか。

 だとしたら、その間に接触した人は大丈夫か?

 家族や職場の人たちは大丈夫か?


 ヤバい。そもそも()()()()()職場が回らなくなる。


 ならば今のうちに電話連絡しておくべきか。

 だが要らぬ混乱を招いておいて、寝たら治りましたでは大変だ。

 明日「あいつビビりかよ」とか「大袈裟な、かまってちゃん」なんて言われたら……っと、それはいいとしても、念のため休んでくださいと言われたら自分が担当している仕事を代わりにできる人がいないじゃないか。

 いや、私の上司の男性は代行できるけど、それだと彼は自分の仕事の他に私の仕事もやる羽目になり、残業で毎日帰れなくなるのでは。

 かといって彼以外にはノウハウが分からないし、そもそも担当しているパソコンのソフト自体、まともに扱えるのはその彼と自分だけだ。どうやっても彼に行くことになるだろう。

 いったいどうしたら……?


 ……いや待てよ?

 私はこれまで無遅刻無欠勤で、むしろ他の人が休めばピンチヒッターも務めて来た。

 ならこれまでの分の()()()ということで、今回は甘えていいんじゃないか?

 仕事が回らなくなったとしたら、それは会社のせい。そんな職務分担の状態にして危機管理を怠った会社の責任だから、()()()()()()

 私は自分の責任を果たしている自信があるのだから、責められる()()()()()()



 いつからかそうやって自己弁護が始まり、私本来の性格の醜さが滲み出始める(笑)。


 この時の私は気付いていなかったが、この辺りから負のループが始まったのだろう。

 いつしか思考は、自分の正しさを如何に肯定できるかという検証作業へと突入する。


 ――――でも待てよ? 本当に対策はバッチリだったか?

 外出自粛はしているけど、近場のスーパーや薬局は仕方ないにしても、先日の本屋は本当に必要だったか?

 そういえば今日の仕事中は、暑さを理由に勝手にマスクを外していたじゃないか。

 手の消毒だって、一回や二回サボってなかったか?


 そう考え始めると、今度は自分のミスにばかり思考が巡るようになる。


 ガソリンを入れに行ったけど、いつも行ってる隣町ではなく、今回だけ我慢して近場にすればよかったか。そういえばGW初日だったから県外ナンバーもいたし、スタンドの人が消毒を怠っていた可能性は否定出来ない。そこで感染した可能性は?

 その帰り道に食料を買う際、店舗だと不安だからと移動販売車を見付けて買ったけど、そもそもあの車は県外から来てはいなかっただろうか? その車は消毒されていたか?

 本屋の本を介して感染している可能性は? それ以前に冷静に考えれば、本は不要不急の外出に当たるのでは?

 職場でマスクを外していたのは私だけではない……からと言って、自分も外していい理由にはならなかったよな。その状態で人と会話したのは明らかに自分のミスじゃないのか?



 それらはもし「陽性」だった場合、追及されたら言い逃れようが無い部分なんじゃないか?


 ……これでもし、俺が地域初の感染者にでもなったら、「どうして不要不急の外出をしたんだ」「どうして無断でマスクを外して仕事したんだ」と責められるのでは?



 それは駄目だ。それは嫌だ。なんとかして誤魔化さないと。

 でも、感染拡大させないためにはすぐに申し出て正直に話さないと。

 どこまで正直に話す? 誤魔化せる部分はあるか? 誤魔化さないとヤバい部分はあるか?

 そうじゃない、全部正直に話すべきだ。でも、それだと……。


 この時は、後になって思えば、リアルで“心の中の天使と悪魔”というやつが葛藤していたようだ。

 自分の中の正義と、汚く醜い心が闘っており、その割合は良くて4:6か、悪ければ3:7かそれ以下だっただろう。もちろん、低い方が正義の側で天使の心である。

 その時は自分の汚い心を応援することに躊躇いも無かったようにさえ思える。


 でも、テレビで見た「感染者やその家族が中傷され攻撃される」といった悪い情報ばかりがフラッシュバックし、どうにか自分を正当化せねばという気持ちが勝っていたのかもしれない。

 そのうち、誰か自分以外の感染者が出るまで事実を誤魔化して……なんて醜いことまで考え始めてしまっていたように思う。


 時々水分を取りながらも、その思考のループと心の葛藤は堂々巡りに続き――――





 ――――結局、私が眠ったのは、最初に熱が38度を超えた時点から二時間後のこと。


 睡眠時間はおよそ三十分。

 目覚めた時、気付けば私の体は汗でぐっしょりと濡れていた。


 ゆっくりと起きてみると、体は多少の寒気と熱感こそあるが、先ほどよりは楽であった。

 この時の熱は38度5分。汗で濡れた服を着替え、水分を取って再び布団に包まる。


 不思議とさっきまでの不安や葛藤は薄れており、気持ちも楽になっていて再度眠ることができた。



 そこからさらに大量の汗をかき、日付が変わった頃に目覚めると、枕も布団も水が絞れるほどにビシャビシャであった。


 再度着替えて服と枕カバーを交換し、計測した熱は……37度9分。

 水分を取ってトイレに行き、三十分ほど布団から出ていたら熱は37度5分まで下がっていた。




 ――――そろそろ結論を言おう。


 この時の私は、所謂「代謝異常」というものに陥っていたのであった。

 季節の変わり目、それも突然の高温多湿となった日中の環境に、便秘で滞っていた腸の動き。

 そこに前日の筋トレのやり過ぎや、いつもより多い昼食、普段より動きの激しい仕事内容が影響していたかは定かでは無いが、思い返してみれば暑がっていた日中は……汗をかいていた記憶が無い。


 恐ろしいことに、この日の私は仕事に集中するあまり、そんなことにも気付いていなかったようで。

 これって所謂……熱中症の類い?


 そもそも気付けという話なのだが、一連の流れの中でも私は一度もセキやクシャミもしていなければ、鼻水さえ出ていない。熱以外は味覚異常も聴覚異常も、意識朦朧とさえしていなかったのだ。どうやら自分でも気付かないうちに、高熱と焦りで冷静さを失っていたようである。

 ()()()()()()()()で、私は体に熱がこもって代謝異常を起こし、一時的に体温調整ができなくなっていた……のであった。


 巷で話題の感染症を意識するあまり、普段なら気付けることにも気付けない(てい)たらく。

 危うく大恥をかくところである。



 その出来事の翌朝のこと。

 親と電話で話したところ、「そういえば、あなたの祖母もたまにそうなっていたのよ。似たんじゃないかしら?」で済まされる、俺の生死を彷徨った……と勘違いしていた昨夜の出来事。


 これは恥ずかし過ぐる! もし本当に救急や会社にでも電話していたら……と思うと、顔から火が出そうである。


 そんな私の翌朝の体温は、36度1分であった。



 結局、この事件(笑)で得られた教訓は、コロナにばかり気を取られていないでそろそろ熱中症対策もしっかりと……ということ。

 水分摂取、室内の気温管理、発汗量など体調管理はもちろんのこと、私はこの件で排泄サイクルの異常にも気を付けなければ体調管理にはならないのだと改めて感じた。


 その他にも、普段から身の回りの整理整頓も重要だし、親に頼る以前にもっとしっかりとペットのことも考えておかなければいけないとも感じた。

 不要不急の外出とか、コロナ対策だってやった気になって満足している場合じゃ無く、本気で徹底的にやらなければ意味がないと痛いほど分かった。

 だからこの日以降、職場と最寄りのスーパー以外には一切外出していない。その職場とスーパーでも、可能な対策はより強化して徹底的に行うようにしている。


 それでも罹る時は罹るだろうけど、もう()()()()()()()行動は絶対しないと決めた。


 今回は軽い熱中症の類いで済んだようだが、これが本当に死につながることや新型コロナウイルス感染症だったら……?

 そう考え、この文章を書く前に色々なことを(あらた)め、自分の弱さ・汚さ・醜さもしっかりと振り返りながら執筆させていただいている。


 そんな今日この頃。



 最後に私が今言えるのは、体調に異変を感じたら自己防衛に走るより前に、一度でも医療関係者や専用ダイヤルにでも相談して冷静かつ客観的な意見をもらうのが吉ということか。


 この、くだらな過ぎるアホ体験を綴った駄文が、少しでも皆さんのお役に立てたなら。

 何かほんのちょっとでもためになり、辛い時の心の支えとか、小さな笑いにでも繋がったなら苦しんだ甲斐があったというものだ(笑)


 私の住む地域には、幸いにも今の時点でなお感染者はゼロのまま。

 だが決して油断はせず、もう気も緩めない。終息が言い渡されるその時までは。


 どうか一連の事態が早く終息し、この話が遠い過去のものとなる日を夢見て。




[読了にお時間を割いていただき、本当にありがとうございました。読者の皆様も、どうかお大事に。そして改めて早期の終息を願い、当作品の締めとさせていただきたく思います]




評価目的の作品ではありませんので、気が向いたなら感じたことや意見、批判などいただけると嬉しいですが、基本的にはそのままスルーで大丈夫です。


お付き合いいただき本当にありがとうございました。

皆様もこれからの時期、新型ウイルス感染症とともに熱中症にも充分ご注意ください。


それでは~


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