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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

応援SS集

不良と風俗嬢。

不良さん、頑張って更正してみるシリーズ

URL

https://ncode.syosetu.com/s9097e/

 「う~ん……今日もヒマそうだなぁ……」


 私は、とある事情で元居た街からこの街に流れ付いた。

最初は普通の仕事を見付けて、普通に暮らそうと思ってたけど、この街にも不景気の煽りは、他の街と同じように訪れていたようで。

色々と仕事も探したけど、結局は見つからなかった。

だから、元居た街でやっていた仕事と同じ仕事をするしか無かった。


 私の仕事は【風俗嬢】店舗を構えたお店で裸になって、お客様にサービスするのが仕事。


 私が働くお店のある街は、不景気って言っても昔からそれなりに、繁華街としては名前が通っているらしくて、景気の良かった頃と比べたら全然らしいけど、私が生活に困らない程度には、お店にもお客様は来てくれている。


 私がこの街に流れ付いて、もうすぐ3ヶ月。基本的にお店の寮になってるワンルームの部屋とお店の往復しかしない生活だから、未だにお店のある繁華街全体の事や地理なんかも、イマイチ分からない。


 今日は、お店に行かないお休みの日。自分の生活している街の事ぐらい少しは知らなきゃ。って事で、繁華街の中を散歩しながら、ブラブラしてる。


 ブラブラしてた……してたんだけど、気の向くまま足の向くままに散歩してたら、ちょっと軽めの迷子になっちゃった。

お店の近くにある駅に行ければ道も解るんだけど、駅はどっちだろ?


 風俗嬢なんて仕事をしてる癖に普段の私は、割りと人見知り。

知らない人に道を聞くなんて事は出来ない。


 この時も人に聞けずに、タクシーの居そうな場所に行って、タクシーに乗って駅まで連れて行って貰おうって思ってた。

何となくコッチの方かな? って感じで歩いていたら、突然、ビルとビルのすき間になってる人が2人も並んで歩いたら、それぞれの肩がビルの壁に触れちゃいそうなぐらいの細い道の奥から、怒声が聞こえてきた。


 私はビックリし過ぎて、その場から逃げる事も出来ずに、暫くビルとビルのすき間の薄暗くなってる道の先を、眺めていた。


 どのぐらいそうしていたか、分からないけど、細い道の先から、何人もの高校生らしき制服を着た、男の子達がコチラに向かって歩いてきた。


 『あ~スッキリした、あの野郎1度シメとかなきゃと思ってたんだよな』


 『ボコボコにしてやって、気分爽快だな、ゲーセンでも行こうぜ』


 そんなような事を言いながら私の事なんか気にも止めずに、どこかに歩いて行った。


 私はこの時に何故か自分でも解らないけど、この道の先に居るであろう、高校生達が言っていた子の事が気になった。


 ゆっくりと直ぐに逃げ出せるように注意しながら、道の先に進むと、ビルに入ってるお店が出したと思うゴミ袋を枕にして、1人の男の子が倒れていた。


 私は、その子に近付いて様子を見てみる。顔を覗き込んだ時に、ビックリした。


 私の弟にソックリだったから。ヤンチャで何時もケンカばかりしてた弟。周りからは、どうしようもない奴って言われてたけど、私や母親には優しかった弟。お酒を飲んでは暴れる父親の暴力から、何時も私と母親を守ってくれていた、優しい弟。


 私は倒れている男の子と弟を重ね合わていた。


 来た道を急いで引き返し、私は見付けたコンビニに入って行き、ある物を2つ買って、急いで男の子の元に戻る。


 よかった~まだ居た。


 私は、その男の子に近付いていく。男の子も私の事に気付いたのか。私の事を睨みながら、でも、ケンカに負けてボロボロになってるのが恥ずかしいのか、複雑な顔をしていた。


 その顔がまた、弟がケンカに負けて家に帰って来た時にソックリで、私は思わず笑ってしまいそうになった。


 倒れ込んでる男の子の目の前にしゃがんで、男の子の顔をよく覗き込んだ後……


 「ボロボロだね」


 そう声を掛けた。男の子は最初は何を言われたのか解らずにいたが、少ししてから何を言われたのか理解したのか、少し恥ずかしそうに下を向き、小さな声で応えた。


 『ボロボロだな……』


 「見事にボコボコだね」


 私が更に男の子にそう声を掛けると、男の子は恥ずかしさの限界だったのか、少し声を大きくして、照れ隠しのように応える。


 『あぁ! 見ての通りボコボコだよ! 何なんだよ? お前は』


 そう怒鳴る男の子の目の前に、コンビニで買ってきた棒アイスを差し出す。


 「お姉さん、今日仕事休みでヒマだったから、一緒にアイス食べよ」


 そう言って男の子にアイスを差し出した。

受け取ろうとしない男の子に私は。


 「手動かない? お姉さんが食べさせてあげようか?」


 そう言うと、男の子はアイスの袋をひったくるように取る。


 『アイスぐらい1人で食えるわ! いや……本気(マジ)で何なんだよ?』


 「細かい事はどうでもいいじゃん、ほら、アイス溶けちゃうよ」


 そう言って、風俗嬢の私と、不良でケンカに負けてボコボコになってる男の子が向かい合ってアイスを食べる。


 私は、アイスを食べ終わった男の子に、まだ食べ掛けのアイスを握らせ。


 「今度は負けちゃダメだよ、お姉さんと約束ね」


 それだけを男の子に言って立ち上がり、その場を去って行く。


 きっと、あの男の子も私の弟と同じように、ケンカに負けた仕返しに行くだろう。そう思ってエールを送った。


 私は風俗嬢。今日もこの繁華街のどこかにある、お店で裸になって男の人の相手をしている。

あの日、偶然出会った弟に良く似てる、不良の少年とはあれから1度も会ってない。

きっと今も何処かでケンカでもしてるんだろうなぁ……

 

  

 

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