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ヤクソク

「ふぅ~、うまい」

 あれか?

 やっぱりネスカフェが現在は推しなのか?

 いやいや、UCCだろうとダイドーだろうとうまいものはうまいんだよ。

 メーカーがそれぞれ美味しいモノを作って提供しているのだから。

 院内の休憩所で購入した甘いカフェオレを飲み、設置されている長椅子に腰を下ろして一息付く。

 就寝時間をとっくに過ぎ、しかも室外に出ているところを発見されても、結構大目に見てもらえるので問題は無い。

 まぁ、いたって健康、元気だからなぁ。

 診断の結果、何もかも正直分からない、との事。

 そりゃそうだ、原因がゲームにあるなんて思いもしないだろうし、治療方法もまたゲームにあるとは思いもしないだろうから。

「元に戻るって管理者のマナから聞けたんだから、そこまで悲観する事でも無いか……」

 未完のスキルを発動した時は半信半疑だったから、本当に身体の一部が機能し無くなった時、正直焦った……と言うよりも驚いた。

 動かないし、感覚は無いし、でも、痛みは無いし。

 さすがにゲームのせいでこうなった、とは説明をせず、朝起きたら動かなくなっていた、と病院には説明をしている。

 検査と様子見をしばらく続けようとの事から、しばらくオレは入院をする事になった。

 動かない事、それ事態はかなり重い事実。

 それなのに案外気落ちするとか後悔するとかって感情は無く、意外なくらい落ち着いている。

 元々楽観主義な性格が一番影響をしているのだろうけれど、未完のスキル発動時に対処方法が説明されていた事も一つの理由だろう。

「…………」

 未完のスキル発動時の事は、まだ記憶に新しい。

 本当に嫌な気分にさせられた。

 たかがゲームだろうと、相手が傷付く言葉を平気でぶつけてくる。

 クウコは好きでレアリティ1になったわけじゃない。

 好き放題言って、アイツを泣かせた、あの時の事は今でも絶対許せない。

「HP多過ぎだろ?!」

「……どうせ時間も無いし、リタイアした用がよくね?」

 共同戦線で組んだパーティの二人は、相変わらずネガ発言を繰り返す。

 その二人はオレよりも明らかにステータスは上で強い。

 プリンセスキャラも最高レア。

 それなのに、被ダメージはオレよりも多いし、与ダメージはオレよりも少ない。

 原因は目に見えて明白だった。

 ゲームの経験が少ないからこその、悪い立ち回り。

 オレ自身もそこまでゲームの腕が有るかと言われたら、自信を持って有るとは言えない。

 それでもある程度は周りの状況予測と把握をし、悪手とならない動きをしているつもりだ。

 戦闘中なのに、今も目の前で言い合いをしている二人よりも経験は多いだろうから、オレが指揮を執れば、改善はするだろう。

 でも、きっと二人はオレの言う事なんて一切聞かない。

 パーティ組んだ矢先『レア1って……やる気あんの』と言われたのだから、当然オレは格下だと見られている。

 そんな格下から指示されるなんて事、きっとこの二人は受け入れない。

 二人のプリンセスキャラは独自に共同戦線のボスへ立ち向かっている。

 ナイトとプリンセス同士の連携も何もあったものじゃない。

 いったい、何の為のパートナー制ゲームなのか。

「じゃあクリア報酬を捨てるって言うのかよっ」

「……クリア出来そうにも無いなら、時間の無駄だ」

「ねぇっちょっとっ! こっち大変なんだから手伝ってよっ!」

「二人だけじゃ無理だしーっ!」

 レア度が高いからと言ってもそれに合わせて敵は調整されているのだから、三組のパーティで望む共同戦線のボスは六人分相当でステータス値が決定されている。

 これはどのゲームだって同じ作りだ。

 それを今、たった二人のプリンセスキャラで相手をしていれば、当然対処なんて出来るわけがない。

 そしてオレとクウコが加勢していない事には理由がある。

 勝手に動くと煩いから。

『お前らは弱ぇーんだからオレの指示に従って動け』

 そう言われたから。

 でも、指示を出す側のゲーム経験値が低いせいで、指示通りに動けば動く程、状況は悪化。

 今に至る。

「……そうやっている間にも、プリンセスキャラのダメージが自分のHP削っている事をしっかり考えてるのか?」

「言われなくても分かってるんだよっ!」

 これだ。

 オレが言う事に対して何もかも当り散らしてくる。

 文句ばかりで、本当に分かっているとは到底思えない。

「何も思い付かないなら、あの二人に加勢したいんだけど?」

「……レア1のくせに余計な事しなくていいんだよ」

 どいつもこいつも。

「だいたいテメーがレア1なんてキャラを選ぶのが悪いんだよっ!」

「……こんな役立たず、運営はなんで作ったのか理解出来ねーわ」

「お前が最高レアならこんなクエストあっと言う間に終わってるんだよ。分かってんのか? 分かってるなら存在してごめんなさいくらい言ってみろよっ」

「……お前のせいでプレイヤーのコイツまで悪者にされてるんだ。自分から連携解除してやるんだな」

 この共同戦線が開始されてから、何度も酷い事を言われながらもクウコはジッと何も言わずに耐えて来た。

 けれど、それも限界。

 俯いて大粒の涙をポロポロと零す。

「おいおい、作り物のクセに泣いてるぜ」

「……うざ」

 さすがに頭に来た。

 コイツ等に従う理由なんてそもそも無かったんだ。

 最高レアってだけでいい気になりやがって……。

「……もうお前達の言う事には一切従わない。オレはオレのやりたいように、自分の意思でこのクエストをクリアする」

「何度も同じ事を言わせるなよ。弱ぇヤツは上のモノに従っていればいい」

「どっちが上か、今見せてやるから黙ってろ」

 オレは至って冷静。

 頭に来てはいるが、普段以上に思考はクリアだ。

「お前達にゲームの経験が不足しているのは見て分かる。その上でどうにかしようと協力して頑張ろうとする意思があれば、オレは何も言わないし、むしろ評価していたよ。結果的にクエスト失敗したとしてもだ」

 人によっては結果が悪ければ、それまでの努力なんて意味が無く評価に値せず、オレの言う事は甘すぎると言うだろう。

 そうだとしても、オレはそれまでの過程で努力したのであれば、よくやったと褒めてやりたいし、努力出来た事は一つの才能だと認めてやりたいと思っている。

 でも、この二人はそうじゃない。

 自分の経験不足を棚に上げ、人のせいにし、更にはクウコの存在までも否定した。

 だから、容赦なくハッキリと伝えて分からせてやる。

「お前達……揃ってゲームには向いてないからもう止めるんだな」

「……何言ってんだコイツ。最弱キャラ選んでるくせに」

「その最弱キャラに、被ダメージも与ダメージも悪い結果になってるのはどっちだよ。今からクウコと二人でクエストクリアしてやるから、そこで見ているんだな」

 オレは意思の固さを伝える為に、真っ直ぐと二人を見据えた。

 しばらく何も言わない事を確認してから、クウコに向き直る。

「カレン……。ごめん……ごめんなさいなの」

「大丈夫。クウコは絶対役立たずなんて事は無いよ。今からそれをオレが証明するから、もう少しだけ頑張ってくれるか?」

「でも……」

「まかせておけって」

 クウコの涙を拭って、今もなお二人で戦っているプリンセスキャラへ向けて引いてくれるようにお願いした。

「別にこっち構わないけどーっ」

「大丈夫なわけっ? 時間も無いし、敵、HPめっちゃまだあるし!」

「あぁ、まかせておいてよ。何とかするから」

 そう言う事なら、と二人はアッサリと了承してくれたと同時に戦闘を入れ替わる。

「ならいっちょやってやろうじゃんよ。ゲーマーの維持、見せてやっからよぉく見ておけよっ!」

 クウコは明らかにオレのステータス表示を確認していない、知っていない。

 この前レベルアップした時に習得した能力”未完のスキル”の事を。

 だからこそ、この場で使う事が出来る。

 もしクウコが知っていたらきっと、使わせない事の選択を促して来ただろう。

 何故なら未完のスキルについての説明に、プレイヤー自信の身体の一部機能を停止させるリスクを生じる、と記載されているから。

 それ以外の説明は全て伏せられていて、いったいどのようなスキルなのか見当すらつかないけれど、このスキルにオレは賭けてみる事に決めた。

 自分自信の身体を犠牲にするのだから、それ相応の能力が貰える事を期待して。

「未完のスキル、発動っ!」

 スキルの能力は戦闘中に見極めるしかない。

 それまでは、自力でコイツの相手をする。

 移動する場所、攻撃把握とこれから起こるパターンの予測。

 そして最善の間合い取りをしつつ、攻撃重視で相手にダメージを与える為、あらゆる行動をイメージして戦うんだ。

 これくらい、ゲーム好きにとっちゃ当たり前の事。

 1フレームたりとも余計な動作だと思わず、全力で集中するんだ。

「マジすっごいんだけど」

「あれだけの触手攻撃を全部避けてるし……」

 攻撃力の無さは速度で補う。

 だからこそ、今まで貰ったステータスアップアイテムをスピード値へ振り分けたのだから。

 速度を上げれば、回避が出来る。

 速度を上げれば、攻撃回数が増やせる。

 速度を上げれば、相手の予測すら超える事が出来る。

「力こそパワーの時代は終わったんだっ! 今日から速さこそスピードっ! お前の攻撃は、オレに当たらないんだよっ!」

 上下左右、三百六十度、全空間を使ってボススライムへ攻撃を叩き込んで行く。

 その間クウコだってお飾りでは無く、オレが無視した触手へ攻撃を与える役目をちゃんとこなしている。

 でも、もっと攻撃力が欲しい。

 一撃に重みが欲しい。

 相手が仰け反るような強い攻撃が。

「ならば、直接叩き込むまでだよなぁっ!」

 遠距離から繰り出す間接攻撃から、近距離で与える直接攻撃へとスイッチする。

 魔力を込めた爆発を伴う一撃。

「なん、なんだよ……アイツ」

「……レア1の動きじゃねぇ」

「あんたらレア4の名に頼りすぎなんだよねー」

「使えもしないくせに背伸びしちゃった?」

「っるせぇっ! オレ達が選ばなければお前らは選ばれなかったかもしれねぇんだぞっ!」

「……どうせすぐにバテるさ。あれだけ激しい動きをしていればな。それにプリンセスキャラの方がお荷物で、アイツのHPがどんどん減っている」

「はっ、大口叩いたくせに、クリアなんて出来そうにねぇな」

 一撃のダメージ値は確実に上げられた。

 でも、時間が足り無い。

 今のダメージが平均だとしたら……間に合わない。

 くそっ!

 言い出したオレがクウコを落胆させるような事は絶対にしてはダメだっ!

 考えろ、考えろ、考えろっ!

 タイムアップまでの三分弱

 残り三分の二あるHPを一気に削り取る方法を。

「?!」

 考える余裕を与えないようクウコを狙ったのかは分からないが、オレを対象としていた触手が全てクウコへと狙いを定めた。

「クウコっ! 逃げろっ!」

「はわわわわ!」

 ダメかっ、元よりクウコは戦闘向きじゃないし、何より数が多過ぎるっ!

 さすがに逃げろってのは無理があるか。

 ならば。

「少し乱暴だけどガマンしろよっ!」

「ひぃやあああぁあぁあっ!」

 オレはクロー攻撃をクウコに向けて射出して掴み、上空へと放り投げる。

 それでも触手は自由に方向転換をし、しつこくクウコへ追い討ちを掛けてきた。

 プリンセスキャラのダメージは、プリンセスナイトであるオレ自身のダメージになるのだからとても理に叶った攻撃方法だ。

 だからと言って感心している場合では無い。

 クローを引き寄せクウコをキャッチする。

「カレンっ乱暴過ぎるのっ!」

「悪かったって! 他に最善手が思いつかなかったんだ!」

 クマアバターの背丈ではお姫様抱っこすらままならない。

 一旦距離を取って仕切り直そう。

「はぁ、ふぅ……残り二分。時間がマズイ」

 そして中の人の疲労もかなりのものだ。

 ”疲労”の仕様が真面目に厄介だな。

 いくらHPがあろうが、回避しようが疲れて動けなければ、攻撃も当てられないし、何より頼みの速度ががた落ちになってしまう。

「カレン……大丈夫、なの?」

「ふぅ……ちょっと疲れが酷いけど、問題無いよ」

「でも、凄く辛そうなの……。ヒーリングにはもう少し時間が必要なの。カレン、クウコの事は気にしなくていいから、クエストは諦めようなの。大丈夫なの、気にしてないの……」

「…………」

 オレの疲れなんて大した辛さになんかなりはしない。

 疲れなんて食べて寝てしまえばいくらだって回復出来る。

 けれど、あの二人に酷い事を言われたクウコの気持ちは、簡単に治ったりはしない。

 むしろ治らない。

 心の傷ってのは、どんなに薄れてもふとした瞬間に思い出してまた傷付いてしまう。

 『レア1のくせに』とか『存在するな』とか、そんなもの、オレが全部無かった事にして、後で笑って話せる思い出に変えてみせるからな。

「約束」

「……え?」

「オレが絶対に、お前を最強のレアリティ1にしてやる」

「カレン……」

「レア度なんて関係無い。この世界にいるヤツラ全員に、クウコの存在を思い知らせてやるから後一度だけオレに力を貸してくれよ」

 だから。

「一気に決めさせて貰うぞっ!」

 連続攻撃は回数を与える必要が生じ、どうしても時間が掛かる。

 ならば、回数を必要とせず、一撃毎に必殺の攻撃力を与える為には……溜め攻撃以外考えられない。

 それが二次元世界のセオリーってヤツだろ。

 強くイメージしろ、これから繰り出す一つ一つの攻撃は、全てにおいて大ダメージとなる一撃必殺である事を。

 そして思い出せ。

 数あるバトルマンガやアニメの主人公を。

「3倍っ能力向上っ! うおおおおぉぉぉっ!」

「何あれ? 身体から炎出てるけど」

「オーラってヤツっしょ?」

 残り一分半。

 疲れなんて一切気にせず、迫る触手を全て避け全速力で突撃する。

 魔法力を込めた一打。

「全力のドロップキックだ! はっ、結構効果あったみたいだなぁっ!」

 ただの打撃だったらここまでは行かなかっただろう。

 相手は軟体生物。

 普通に蹴りを入れただけでは、決定打には至らない。

 だからこその、魔法力。

 威力は申し分無し。

 ボススライムはそのデカイ図体ごと、数十メートル先まで吹っ飛んで行った。

「まだ終わりじゃねぇっ!」

 両手のクローを射出して、スライムをガッチリと捕縛。

「全員伏せないと……危ねぇからなぁーっ!」

 自分を支点にして、思いっきり回転を始める。

「何をするんぎゃあああぁっ!」

「……ぐはぁっ!」

「あーあ、だから伏せろって言ってんのに。ボケーっとしてっから」

「痛そー。見事に巻き込まれたね」

 プリンセスナイトが二人、オレにジャイアントスイングされたスライムの餌食となって、有らぬ方向に飛んで行ってしまった。

「飛、ん、で……けえええぇえええっ!」

 クローの捕縛を解いて斜め上空へとスライムをぶん投げる。

 一分を切った残りタイム。

「三倍能力向上の……」

 両腕を広げ魔法力を収束させる。

 出来るかどうか不安ではあったけれど、広げた両手に魔法力が集束を始めた。

「案外やれば何でも出来るものだなぁっ! さすがVR空間っ!」

 残り四十秒。

「マジスッゴイっ! 一人で倒せんじゃない?!」

「ここまで来たんだし、倒しちゃいなよっ!」

「うおおおおおおおっ!」

 やってやる。

 ここから始めるんだ。

 クウコを……最強のレアリティ1にさせる為の個人的なクエストを。

「行……くぞぉっ! 食らえっ! マジカル…………アターァァァアアック!」

 両手の甲を合わせ、集めた魔力を一気に開放した。

「んぎぎぎぎぎぎっ!」

「……なんなんだよ、アイツ」

「何でレア1が……あんな攻撃を出せるんだ……」

 プリンセスキャラをただの作り物だと思っているお前達には一生分からないだろうよ。

 クウコも、お前達のプリンセスキャラも、ちゃんと自分の考えを持ち、自分の意思で行動し、自分の気持ちを持っているんだ。

 オレ達と何ら変わりは無い。

 だからこそ、クウコに悲しい思いや辛い思いをさせたくないって本気で心から思うから、オレはアイツの為に頑張れるんだ。

 自分の為以上に誰かの為になる時、実力以上に力が発揮出来る。

 それが人間ってものだろうよ。

「なんか、魔法力が弱まってない?」

「時間無いしっ! せっかくここまでどうすんの、これっ」

「うちらも加勢する?!」

「う、ん……でも、手を出すなって事だろうし……」

「ありがとうよっ、その気持ちだけで充分だっ! それに……オレには最高のプリンセスがいるからっ」

 オレのずっと後ろに位置するクウコへ叫んだ。

「クウコーっ!」

「うん、クールタイムは終わっているのっ! ヒーリングっ!」

「はっ! バカなんじゃねぇの? 回復魔法なんて使ってるぜ」

 知らないヤツラはそう思うだろうさ。

 でも、クウコのヒーリングは……”疲労も回復”してくれるんだ。

「タイミングバッチリっ!」

 残り十五秒。

 出し惜しみ無し。

 それならば。

「…………四っ倍だぁぁあああっ!」

 魔法エフェクトは、オレの背丈の三倍くらいまで膨れ上がった。

 正直、未完のスキルがどう影響したのかは分からない。

 けれどどうやらこの勝負……オレとクウコの勝ちだ。

「グオォォォオオアアアァァアアアッ!」

 ボススライムが断末魔を上げ消滅して行く。

 そして。

「……信じらんない」

「マジで勝っちゃった……」

「はぁっ、ふぅっ! はぁ……ははっ、どうだよ、これがゲーマーの底力ってヤツよ」

 スライムが完全に消失したのを確認したオレは、その場に受身も取らず倒れ込んだ。

「カレンっ!」

 クウコがオレのところまで駆け寄ってくる。

「あぁ、大丈夫。疲れたってだけだから、そんな泣きそうな顔するなって。二人でボススライムを倒したんだ、喜ぶ場面だろ?」

「でも……凄く辛そうなの」

「さっきも少し思ったんだけどさ……クマの顔見て分かるもんなのか?」

「……何となく、そんな感じがするの。顔はいつも通り緩い表情のユルックマのままなの」

「いやいや、バトってる最中なんて荒ぶる野生熊そのものだったろうよ?」

 そしてログアウトした後、オレは自分の右足が動かない事に気付いた上に、実のところ未完のスキルについての詳細も正直掴めなかった。

 身体能力を向上させる、ってだけなら他のプレイヤーのようにダメージアップとかダメージカットとか分かり易い名前なんだけれど、オレの場合は”未完のスキル”と表示されているから、おそらく他プレイヤーのスキルとは違いがあるはず……。

「なんだけどなぁ。未だに表示は未完のスキルのままだし……あれ、なんなんだろ」

 まぁでも、あの後、マイルームに戻った時には、いつも通りのクウコに戻っていたし、何となく嬉しそうな感じも受けたし、使って良かったんだって思っている。

「まぁ、これから先は使わなければいいだけだもんな」

 今まで通り難易度を下げてクエストをクリアしていけば、多少時間が掛かる事になっても、仮習得の未完のスキルはいずれ、本習得のスキルとなる。

「……自己犠牲の代償がある限り、結局使えないスキルだけど、な」

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