ホウモンシャ
「それじゃあ、第三百六十二回スライム情報局、始まるよー、なのっ!」
「待って! 前回から倍くらい増えてるよねぇっ?!」
「細かい事を言っていると、モテないの」
限度ってモノがあるだろうよ……。j;l
この幼女にはお金の管理をさせない方が絶対いい、確信する。
「まずはお待ちかねの、スライム予報なのー」
「え、またあの大雑把なのするの……」
「ふふん、今回はそうでも無いの。共同戦線、みんなは行ったの?」
ユーザーコメントがパラパラと届き、表示されて行く。
『行った行った』
『上位ランク報酬貰ったぜーっ』
『フレ同士だとやっぱり断然楽』
まぁ、みんな行ってるよな。
経験値多いし。
「今回は予報と言うよりも、結果なの。驚いた事に一緒になったプリンセスナイトが真っ黒なキャラクターになってしまったの」
『何それ?』
『あぁ、噂のヤツ』
『オレ、見た事ある、それ』
いた……実際に見たユーザーが。
コメントが少しざわついて来る。
一つずつ逃さず読んではみるが、特別有用なのは無さそう……。
知らないユーザーもいるくらいだから、まだあまり浸透しては居ないと捉えるべきか。
「黒くなったプリンセスナイトと連携しているプリセンスとも、連絡がつかないの。誰か、情報があれば教えて欲しいの」
そこまで閲覧ユーザーが多いわけでは無いけれど、これはなかなか良い提案だと思う。
これこそあるべき姿のスライム情報局。
クウコさん、今回はファインプレーですよ、うん。
いける……と思ったんだけど、流れて来るコメントには有用な情報は無く、早くも空振りに終わってしまった。
でも、完全に希望が断たれたわけでも無さそうな気がする。
コメントを読んだところ、概ねプリセスキャラと連絡を取ったユーザーがいないって事だ。
だからまだ……少しはカナエちゃんが無事である希望も捨て切れない。
まだ真実に辿り着いていないのだから、可能性はあるはずだ。
「まだ配信は続けるから、何か情報があったら教えて欲しいの。それじゃあ、ユーザーからの質問に答えるコーナーに移るのー。ペンネーム、同僚が超常現象を追い掛け過ぎて辛いさんから」
「その人…………前回の人の相棒なんじゃないのか?」
「クウコさん、カレンさん、初めまして。私は今非常に悩んでいるのです。どうかお二人の意見を教えて頂けると幸いです。ふむふむなの。えっと、明日、一日どうしてもサボりたいのですが、どうしたら風邪をひく事が出来るでしょうか?」
「…………普通に病欠でいいじゃん。頑張って風邪に掛かる必要無いでしょうよ」
「んー、一大事なのっ!」
「どこがっ?!」
「むむー、風邪をひいてサボる方法。ん~、えぇっとー」
「もしもーし、クウコさーん?! もしもーしっ!」
また反応が無くなった。
目、閉じているけど、考えいるって事なのか?
寝て無い、よな?
「はっ! 今、少しだけ夢を見ていたのっ」
寝てた。
「それで、ベストアンサーは来るの?」
「おほんっ、それでは同僚が超常現象を追い掛け過ぎて辛いさん。クウコの答えは…………風邪っぽい、事にすればいいのっ! これなのっ!
「風邪は引いていないけど、引いているかもしれない、と?」
「そうなの。風邪は引き始めが肝心なの。大事を取って休む、これで万事解決。犯人はお前だっ、なのっ!」
「いや……犯人とか捜してるわけじゃないし……」
「何となく頭痛がする、でも代用可能なの」
「小学生中学生レベルの言い訳だな……」
「そう言うならカレンはどうやってサボるのっ?! 言ってみるのっ」
「え、オレ、サボらないし。ちょっとくらい風邪に掛かっても気合と根性で出席するしっ!」
「何故そこまでして……友達がいるわけでも無いから、頑張って行く程楽しいスクールライフじゃないと思うの」
「友達がいないから、後でノートを書き写すのが大変なのっ!」
「……あ、頼む人がいないわけなの」
くそぅ、全く持ってその通りなので反論が出来ん……。
『止めて差し上げろ』
『聞いているこっちの方が辛ぇわ』
『もしや……人間強度が落ちる、とか思っていたり』
言いたい放題もいいところだ。
「はいはい、次っ次行っちゃおうっ!」
「分が悪くなったから逃げたの。仕方ないの、次に行って上げるの。じゃあユーザーのリアルコメントから拾ったヤツに解答を……えっと、これ、これにするの」
上からゆっくりと降って来る視聴者が見たコメント文字を、クウコがキャッチ。
「クウコ、適当にキャッチしただろ……? スリーサイズを教えてくださいって書いてあるぞ」
「そんなの知らないの」
「え? 普通測るだろ? プリンセスキャラって胸、やたらと成長いいし。しっかり合ったものじゃないと良くないって言うじゃないか」
「自分の身体の事だから、必要無いの。見たら一発で合致出来るの。どうなの? 凄いの、ドヤァなのっ」
凄い事、なのか?
男のオレには分からないけど、そう言うもの?
「これもお姉さんパワーのなせる技なの」
「……まだ拘ってたのか」
「もう認めて楽になってしまうの」
「認めるも何も、前回のアンケートでハッキリ分かっただろ? クウコは幼女だって事が」
「そんな事ないのっ! 前よりもおっぱい成長したのっ! お姉さんパワーがスーパー炸裂するのっ!」
「成長すんのっ?! いやいや、成長する場所間違えてるでしょうよっ! 身長に回せっ!」
「おっぱい星人のくせにいったい何が不満なのっ! ほら、よーく見るのっ! 前よりも成長したクウコのお姉さんパワーをっ!」
ガッシと頭を抑え付けられる。
「なっ、ちょっ! またこのパターン?! 何度も言うけど、おっぱいはお姉さんと関係無いってのっ!」
「そんな事無いのぉっ!」
『いつものやつw』
『ノルマ達成』
『おっぱい! おっぱいっ!』
オチがまるっきり前回と同じじゃん。
「あぁっもぉっ! 終わりっ今回の配信はこれで終わり―っ! さっさとエンディングをーっ!」
と言ったところで、曲が流れ始める。
「え? あれ? 前の曲調と違う?」
「曲はいいからおっぱいを褒めろなのぉっ!」
「新曲っ?! しかもうまっ!」
疾走感のあるクール調。
とんでも無く上手いしっ!
この子、バーチャルアイドルデビューした方がいいんじゃないだろうか、と本気でオレは思う。
と言った締めで今回は終わるのだろうなぁ、と思っていると、クウコの歌唱が終わるのと同時にシステムアナウンスが入って来た。
『全ログインユーザーの皆さん。初めまして、私はマナシステム。あなた達の世界で言うところの管理者と言ったところかしら。これから少しだけ時間を貰うけれど、ご了承を」
「なんだ? マナシステム?」
しかも自分を管理者って言っている。
「クウコ、ロビーへ移動しよう。他のみんなの反応も見たい」
「分かったの」
コメディー場面は配信の終わりと共に終了し、オレ達は揃ってユーザーが一斉に集まるロビーへと移動する。
どうやら同じ考えの奴らが多く、いつも以上にロビーは賑わっていた。
『さて、と。最近、運営宛に同じような質問が何百通と来ていて、正直うんざりしているの。心当たりがある人もいるでしょうけれど、敢えてどんな内容なのかを伝えて上げる。それは、クエスト中に黒い影に出くわした、と言う内容ね』
カリンさんが送った内容もきっと同じだろう。
他のユーザーも気になっていたって事か。
そりゃそうだ、突然スライム以外の敵が現れたのだから、誰だって納得出来る説明が欲しいに決まっている。
『名前はシャドウレイヤー。見たままね。まず、このシャドウレイヤーが新規コンテンツなのかどうかを教えておきましょうか』
そう、それだ。
知っているユーザーがいないのだから、当たり前の説明だろう。
『これは元々入っている仕様よ。新規でも無ければ、期間限定のイベントでも無い。来るべき時が来たから、仕様に則って発動をした、と言う事。お分かり頂けたかしら?』
周囲の反応は。
「そんな事、一切説明されてないぞっ!」
「知ってるやつがいないモノを、いきなり仕様と言われて納得出来るかっ!」
「説明責任の放棄だろっ!」
と言った具合だ。
『その反応はおおよそ予想出来ていたけれど、ハッキリ言えば、あなた達は全ての仕様を知っている前提なのよ? その証拠に、この世界に存在しているのだから』
ふざけた事を言うな、とそれぞれが思い思いの言葉を発している。
『ふざけているのはどちらかしら? もう一度繰り返すけれど、全てのユーザーが知っている事なのよ? 知らない、と言われても私が困るだけじゃない』
責め立てられてはいるものの、マナシステムの口調は至って穏やかでゆったりしたものだ。
管理者……だもんな、そりゃ、オレ達ユーザーよりも圧倒的に優劣が優れている。
『でも、私だってそこまで鬼では無いから、一つ、わざわざ教えておいてあげましょう。アレはご存知の方もいるでしょうけれど、ユーザーの慣れの果て。チート行為を行ったものの末路なの。最近、増えたものね、データーを不正改造するマナーのなっていないユーザーが。だからこそ、その対応として搭載されている仕様が発動したの。はい、私から教えて上げるのはここまで。後は自分達で何とかなさいな』
あまりにも見放された言葉に茫然とするユーザー達。
そしてようやく一人ずつ声を上げ始め、徐々に怒声へと変わって行く。
「ふざけるなっ!」
「課金してんのに、あの強さ相手にどうしろってんだよっ!」
「管理者だからって好き勝手過ぎるっ!」
『だから何度も言わせないでくれるかしら? そもそも、あなた達全員、仕様を知っている前提なのよ? 今更私を責められても困るじゃない。そうね、なら、こうしましょう。また私の気紛れで一つ本当はあなた達が知っている仕様を、敢えてわざわざ労力を使い、教えに来て上げる。それまではせいぜい、アレに倒されないようになさい。あら、ついでにもう一つ仕様のヒントを教えてしまったわね。ダメね、コミュニケーションを取らないからつい、一方的になっちゃうわ。それじゃあ、その次の開示までご機嫌よう』
そう言って、マナシステムは一切の反応を見せなくなってしまって。
ざわつくロビー内。
ほとんど要領を得ない内容に近い。
オレ達全員がすでに知っている事だって?
そんなバカな……カリンさんからも、さっき配信した時も、有用な情報が無かったんだぞ?
これだけのユーザーがいるのに、一人たりとも知らないような反応している仕様っておかしだろ?
「カレン? 難しい顔をしているの」
「あ、あぁ……ちょっと整理がつかない」
「カナエがどうなったのかも、分からなかったの」
「そうだな……分かったのは、ライのヤツがチート行為をしていたって事、だけか」
今思えばアイツの強さは妙に突出していたもんな。
重課金ユーザーって事では無かったわけか。
「クウコ、マイルームへ戻ろう。ここじゃうるさくて考えがまとまらない」
誰も知らないようだったから、オレは冷静に考える為、再びクウコとマイルームへ戻る。
「なっ?!」
「誰、なの?」
オレのマイルームに一人の幼女が勝手に入って、座って優雅にお茶をしている。
招待するか同じグループメンバー間じゃないと、マイルームへ入れないようにしているのに。
ホワイトグレーの長い髪、大きな猫目で、見た目の体躯はクウコとさほど変わらない。
プリンセスキャラクターか?
「悪いわね。勝手にお邪魔させて貰いました」
「その声……あんた、マナシステム……?」
「ええ、先程はどうも」
どう言う、事だ?
管理者がただのユーザーに会いに来るなんて事、そうそう考えられない。
それとも、管理者だから今は全ユーザー個別に会いに来ている、とか?
なんなんだよ、せっかく考えをまとめようと思ってたのに、余計纏められそうに無いじゃないか。
「…………それで、管理者さんがオレ達に何の用だ?」
「その前に……」
オレとクウコをチラリと見てから、少し間を空けた後。
「尺が足りないから、次回へ続くわ」
「尺はいっぱいあるからっ!」
「え、もう無いの」
「クウコまでそんな事をっ! 終わらない、終わらないよねぇ?! ちょっと、あ、ああぁ、終わ」




