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キョウドウセンセン3

「カレン、少しこっちを見るの」

「この状況で他に視線を移すなんて器用な事出来るかっ!」

「クウコを見る時はいつもやってるの。それを今発揮しないでいったい何時発揮するつもりなのっ?」

「時と場合によるのっ!」

 自分で言っておいて何だが、何たるご都合主義野郎なのだろう。

 最低な人間と言っても良い。

 まぁ、オレの事だけど。

「視線だけチラッとこっちを見るの。ほら、セリカのスクリーンショットなの」

「チラッとも何もそんな瞬間すらあるわけが…………って、何それーっ?!」

 セリカちゃんスク水ショット。

「こっちもあるの」

「おうふっ!」

 もう片方はカナエちゃんバージョンだ。

「有る意味凄いですわね……完全に余所見をしているのに、しっかりと触手に当たっていますわ」

「カレンは今、煩悩を魔法力へ変換して戦っているの。この状態においては人間を超越するらしいの」

 そこまで大きな事は言った覚えが無いけれど、エロが絡むとどうたらこうたらって似たような事は言ったと思う。

 それにしたって、クウコと同じように、二人もとある部分がパンパンで……生地は大丈夫なのか?

 はち切れるんじゃないのか?

 肩凝りが酷いんじゃないのか?

 と、心配になるくらいけしからん絶景となっていた。

「頑張ったら後でこのスクリーンショットはカレンにプレゼントしてあげるらしいの」

「マジでっ?!」

「別アングルもついでに、プレゼントなの」

「マジでっ?!」

「語彙力が酷いの……もっと他の言葉で反応は出来ないの?」

 いや、他に出て来る言葉なんて無いし。

「もしかしたら新規撮りおろしも無きにしも非ず、なの」

「MAJIーDEっ?!」

「発音だけ変えても無駄なの」

 せっかく頑張ったのに、無駄認定されてしまった。

「少し恥ずかしいですけれど、こんなので良ければ差し上げますわ」

 こんなの、じゃなくて、それがいいっ!

「……それ貰ったら後でカリンさんに怒られたりしない?」

「大丈夫ですわ。カリンは特別興味を示しませんから」

 それこそマジで、だよ。

 興味を示さないってどう言う事よ?

 あれか?

 リア充だから、興味が無いってわけか?

 くっ……もてそうだもんな、カリンさん。

「ライさんは、私なんて全く目に入らないので……」

 こんなカワイイ美少女が目に入らない、だと?

 アイツ、後でぶっ飛ばそうかな?

 ちなみにカナエちゃんはメガネッコだ。

「オレは大丈夫! 目に入れても痛く無いからっ!」

 ズビッ!

「いてぇーっ! 目がぁあああっ! 目がぁぁぁああっ!」

「痛がっているの」

「例えだよっ例えっ!」

 クウコが指でクマの目を突っついて来やがった。

「す、凄いです……それでもちゃんと触手に全部の魔法攻撃が当たっています……」

「カナエ。凄いって言葉を変態に置き換えて言うべきなの」

 脳内で変換してみた。

『へ、変態です……それでもちゃんと触手に全部の魔法攻撃が当たっています……』

 褒められているようなそうで無いような、微妙な言い回しになってしまっている。

「そうこうしている間に、カレンさんの言う時間が経過致しましたわ。これより私達も加勢致します。カナエさんも大丈夫かしら?」

「は、はい、思ったよりも疲労は取れましたから」

「カレンの一人コメディーのせいで落ち着いて休めなかったの」

 あのスクリーンショットを見せられて、平然としてなんていられるか。

 ともあれ、三人が加わった事により触手撃破の効率が上がる事になるので、前線で戦闘をしているカリンさんとライの攻撃もより一層の事本体へ直撃する事になり、スライムグレートのヒットポイントは残り僅かとなっていた。

「よし、ライさん。ラストスパート、一気に畳み掛ける事にしよう」

「あぁっ?! 命令すんなっ分かってるよ、ちっ! だから共同戦線はマジでめんど…………」

 ん?

 なんだ?

 ついさっきまであれ程の動きを見せていたライが、ピタリと動きを止める。

「あ、が…………う、ぐぅぅ」

「ライさん? どうされたんだ? 様子が変だが……?」

 ヒットポイントが低いわけでも無いし、仕様の疲労状態が蓄積されたからって、全く動かないあの様子は明らかにおかしい。

 敵のスライムは今だって攻撃を仕掛けている最中なのに……動かないライを守りながらではカリンさんが確実に持たない。

「仕方ないっ、セリカちゃんっ! カリンさんのヘルプを」

「いえ、待ってくださいっ!」

「ライ、さん……?」

 焦りの表情のセリカちゃんと、目の前で起こっている事に驚きを隠せない表情のカナエちゃんに習ってライを見る。

「な、んだ……?」

「ウ、ガ…………。アアアアッァァアアアアウウウアアアッ!」

 咆哮とも言える声を上げた直後、その場にはクマの姿のライは存在せず代わりに、真っ黒で影のような人型が存在していた。

「みんなっ! 止まるなっ! ライさんはもうダメだっ! 一気にボスを撃破してクエストを終了させるっ!」

「カ、カリンさんっこれっていったいっ!」

「後で私の知っている事は説明するっ! だから今はボスを倒す事を考えるんだっ!」

 訳が分からないけれど、ここは従った方が良さそうだ。

 カリンさんの様子からすると、今、この事態はきっと……ヤバイ。

「分かりましたっ!」

「ライさんは私が相手をするから三人で集中してくれっ!」

 相手を、する?

 意味を理解する前に、目の前で起こった事で納得出来た。

「くっ!」

「ウガガガアアアッ!」

 敵であるスライムグレートでは無く、味方となるカリンさんを襲い始めるライだった”影”。

「格闘技の経験が無い私が相手をするにも限界があるっ! みんな早くっ!」

 なんなんだよ、あれっ!

 魔法攻撃だけのゲームだったはずだろっ?!

 それなのに、四肢を使った物理攻撃だなんてっ!

 い、いや、今はクリアを目指す事を最優先で考えなければ。

「セリカちゃんっ、カリンさんにヘルプをっ! それからクウコはオレにヒーリング……ってまだクールタイムか……よし、クウコは触手の牽制っ! カナエちゃんはオレがスライムの真上にジャンプした後、オレの周囲にスキルで壁の展開を頼むっ!」

 捲し立てて言ってしまったが、三人はちゃんと理解を示してくれた。

「うんなのっ」

「分かりましたわ」

「は、はいっ、頑張りますっ!」

 クウコの牽制魔法を合図にそれぞれが動き始める。

 オレはスライムグレートへ向けて猛ダッシュ。

 迫り来る触手を魔法で打ち払いながら、間合いを詰めクローを使って触手を掴みスライムの頭上を目指す……んだけど。

「くっそっ! 触手が多過ぎるっ!!」

 けれど、ここで捕まるわけには行かない。

 みんながそれぞれの役をこなしていて、誰一人として余裕が無い。

 特にカリンさんとセリカちゃん。

 二人掛かりなのに、押し負けている。

 あの状態になった事でライのステータス値が大幅にアップした、のか?

 となれば、特別大変な役目を二人は買ってくれているんだ……ここは一人でどうにかしなければ。

「ゲーム人間の意地、見せてやんよっ!」

 上下左右、全ての視界を確認。

 遠回りになったとしても、クローで掴み易い触手を狙って移動。

 クウコの牽制攻撃を追うように、また更に移動。

 それでもやっぱり多い触手に捉えられそうになったところで、触手とは別方向へ魔法を打ち出す。

「こん、ちくしょーっ!」

 迎撃に成功した触手はその先からすぐに生え変わって来る事は知っている。

 魔法攻撃は触手の迎撃と同時に身体の軸をずらし、生え変わった触手の攻撃を避ける為のもの。

 よし、今この位置からなら、頭上に近い触手を掴む事が出来るっ!

「カナエちゃんっ、壁の展開を頼むっ!」

「はいっ!」

 絶好のタイミング。

 あの子はきっと、今後もこのゲームをクリアする為の要になるだろうな。

「クウコ! ちょっと辛いけど、カナエちゃんを守ってやってくれっ!」

「もぉっやってるのっ!」

「さすがっ!」

 そして壁を挟んだ状態から、魔法攻撃を真下にいるスライムグレートへ向けて、中の人であるオレが一心に魔法弾を連撃。

 後少しっ、後少しでクリアなんだっ!

「倒れろぉおおおおっ!」

 目の前の壁だけはオレの魔法で消し飛んでしまったけれど、まだ周囲の壁が残り、スライムグレートからの攻撃を防いでくれている。

 このままなら確実に仕留められる、と確信した時。

「二人ともっ逃げてっ!」

 セリカちゃんの声を聞いた先を見ると、あの”影”がクウコとカナエちゃん目掛けて走っていた。

 くっ、二人が突破されたっ!

 マズイっ、クウコとカナエちゃんは逃げるタイミングを数秒だけど失念している。

 今から動き出してももう間に合わないっ!

 この場でどうにか出来るとしたら……オレだけだ。

 スライムグレートのすぐ横の地面へとクローを射出して、着地。

「行かせるかぁっ!」

 そして影に対してクローで捕縛を掛け、上空へ思い切り投げ飛ばし、その間にスライムグレートの側面へ魔法を直接叩き込む。

「零距離ならダメージも通り易いよなぁっ! とどめだぁっ!」

「グギャアアアウウウ!」

「カレンさんっ、上だっ!」

「ちっ!」

 カリンさんの声を聞き、言われた上方を確認する事無く、その場から一気に後ろへ飛び退いて距離を取った。

「…………マジかよ」

 ズガン、と大きな音と共にオレが居た地面が抉れて陥没している。

 あんなの食らったらヒットポイントがいくらあっても足りないぞ。

 スライムグレートは倒せた、でも、アイツを……倒せるのか?

 カリンさんとセリカちゃんでも抑え切れなかったんだぞ?

 オレとクウコのステータス値では、とてもじゃないが適わない、絶対にやられる……。

 どうする、どうしたらいい?

 クウコのヒーリングはオレにしか通用しない。

 でも、回復薬がまだ3つ残っているから、これを、カリンさん、セリカちゃん、カナエちゃんに渡して全員で掛かれ……。

「が、はっ!」

「ギャッギャギャギャギャギャアアアアア!」

「な、んて速さ、だよ……っ!」

 多少油断していたとは言え、想像以上のスピードだった。

 オレの首を人とは思えない言葉を発しながら片手で締め上げる”影”。

「は、なせっ!」

 ”感覚”を搭載しているプリンセスナイトオンライン。

 このままだと”落ちて”しまう。

 せめて回復薬だけでもみんなに渡し切ってから、じゃない、と…………。

『今回のクエストは無事達成となります。お疲れ様でした』

 意識が遠のき始めたその時、システム音声がエリア内に響き渡り、危ないところでマイルームへと強制転送された。

「うっ、ゲホゲホッ! ハァッハァッ! うっく……」

「カレンっ、大丈夫なのっ?!」

「はぁ、ふぅ……あ、あぁ。大丈夫、間一髪……助かった、よ…………」

 危なかったけど……だからカリンさんは、クエストクリアを優先したわけか。

 じゃあ、あの”影”は今回のクエストとは全く関係無い、と言う事になる。

 訳が分からない……今まで、何度もクエストして来たけれど、あんなの見た事無かったのに。

「……ともあれ、助かった事には変わりないか」

 このまま少しログアウトして休憩でもしたい所だな、と考えていると、パーソナルチャットでカリンさんからメッセージが飛び込んで来た。

『カレンさん。無事だったかな? もし大丈夫なようであれば、先程の件で会話がしたいのだが、どうだろう? 終わった後で辛いようであれば、また後日でも構わない』

 アレ……”影”について聞いておく必要が有る事は明白であったから、オレは考える事も無く、カリンさんの申し出を承諾した。

 それ程深刻な事では無い事を願いながら。

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