キョウドウセンセン2
共同戦線真っ只中。
ある程度の役割分担が出来上がっていた。
カリンさんとセリカちゃんのパーティは主軸となっている。
何故なら二人のコンビネーションは突出していて、つい見蕩れてしまう程に隙が無い。
互いの死角を補い合う戦法は、この当千ゲームであるバトルにはとても有効だ。
ただ、補い合うと言ってもそう容易い事では無い。
行動の予測と動作のパターン、この二つを熟知していなければ、早々コンビネーションなんてのは上手く出来ないのだから。
それでもリリースされて一ヶ月であれ程の連携をするのだから、仲が良い関係を通り越して、すでに深い信頼関係が築かれているのでは無いだろうか。
そしてライとカナエちゃんのパーティはと言うと。
こっちは対照的に連携等全く皆無。
ライが好き勝手に暴れまわっているだけだ。
その動作を見れば、まぁ、レア1のオレ達を見て毒づくのも理解出来る。
アタック力だけで言えば、この中では最上位と捉えても良さそうだから。
ただし、防御はおろか回避すらほとんどしないせいもあり、ヒットポイントの消費は激しく、貴重な回復アイテムをすでに2つ使っている。
パートナーのカナエちゃんはと言うと、防御スキルに秀でており、障壁を展開しながらライに襲い掛かるスライムをガードしようとはしているのだけれど、ライがカナエちゃんの動作に微塵も注力しないものだから全く役に立っていない。
当のカナエちゃんは、謎の光さんがお仕事中だ。
そしてオレとクウコ。
「やーめーろーなのーっ! せっかく貰った服が無くなってしまうのーっ!」
こっちも謎の光さんが大仕事をこなしているところだった。
「だぁぁああっ! 今助けるから待ってろぉーっ!」
「おいっレア1っ! うちのどんくせぇヤツもついでに任せるぜっ!」
「レア1って言うなっ! オレはカレンだっ!」
「あぁっ?! この先組む事はねぇから名前なんていいんだよっ! さっさとその役立たず共を助けておけっ!」
ったく、人使いの荒いヤツだ。
でもまぁ、オレはプリンセスをガードする役目に集中するって考えも出来るし、反発するのも面倒だし、とりあえず従っておこう。
プリンセスキャラクターはスライムに襲われると服だけが溶解する。
そしたらダメージは何処に行くのかと言うと、オレ達プリンセスナイトに少しずつ加算されるってわけだ。
だからこそ、放って置いても良いわけにはならない。
まずは謎の光さんが多いうちの子から。
クローを使って、掴んで、投げ飛ばしてを繰り返し、纏わり付くスライムを引き離す。
「うぅ~ドロドロなのぉ~」
何度見てもぜっけ……けしからん身体だな。
そして今度はカナエちゃんの番。
ライの事は放置して、自分自身に防御スキルを展開すれば服を溶解されずに済むと思うのに、それをせずライをどうにかしようとするのは、きっと優しい気持ちがあるからなんだと思う。
「ご、めんなさい……私まで…………」
「カナエ、気を付けろなの。カレンは着エロ好きだから微妙に破れていると余計視姦されるの」
「こらーっ! 人のイメージダウンに繋がる事を言っちゃダメでしょーっ!」
「本当の事なの」
「くそぅ、まったく減らず口ばかり……それはそうと、クウコ、こっちへ!」
オレとクウコ、そしてカナエちゃんを一箇所へ集める。
「何をするの?」
「二人を守りつつ、合間を見てスライムを攻撃するんだよ。その方が効率上がるから。クウコは牽制攻撃しつつ、オレを定期的に回復。カナエちゃんはオレとクウコに近付くスライムを、防御スキルで足止めしながらクウコと同じように牽制攻撃。ヒットしなくてもいい、とにかく少しでも近寄らせない事。オーケー?」
「あ、あの。でも、私はライさんをお守りしないと……」
「少なくとも今この場では、オレの言う方法が効率的だと思う。ライっ! カナエちゃん、少しの間借りるぞっ!」
一応許可だけは取ろう。
後で煩い事言われるのは嫌だし。
「あぁっ?! そんな役立たずならいくらでも貸してやるよっ! ゲームの仕様だから仕方なくパートナーしてるけど正直オレには必要無ぇ!」
あの野郎……そんな事言うくらいなら別のゲームへ行けよ。
「あんな言い方無いのっ! ムカつくヤツなのっ!」
「同感だよ。けど、ライの了承は得たからカナエちゃんはオレとクウコの為に力を貸してくれっ!」
「は、はいっ! 頑張りますっ!」
「オッケー」
カリンさんの方をチラリと見ると、一つ頷いた事を確認出来た。
わざわざ口に出さなくても理解してくれたって事か。
さすがだな。
本人が望まなくてもリーダーとなり、必然的に人が集まるタイプ。
羨ましくもあり正直少し妬ましくもあるが、適材適所、今出来る事をしよう。
「んじゃぁ、ボススライムが出て来るまでの間、二人とも気張ってくれよっ!」
即興のパーティが組まれたけれど、それは思ったよりもずっと効果的だった。
特にカナエちゃんの防御スキル、障壁によるスライムの足止めはかなり使えるスキルで、被弾する頻度が明らかに減少した。
「カナエ凄いのっ! 壁、とても役に立つのっ!」
「確かに使えるスキルだなっ!」
壁にぶつかり足止めしたスライムを、その壁諸共魔法でふっとばせるのだから、スキルの中ではかなり優秀な部類に上がるだろう。
「あ、あの……でも、ごめんなさい……。このスキルは疲労が激しいので、あまり多用出来ないんです」
「全部を防ぐ必要は無いからオレが対処出来なかったヤツと、クウコとカナエちゃん自身を守るようにしてくれたらいいよっ」
「分、かりましたっ」
カナエちゃんの事で気付いた事がある。
この子は指示を的確に与えて上げると、確実にこなしてくれるタイプの子だ。
自分で率先して動けない事をネガと捉える人間は多いだろうけれど、その分、指示に対しては忠実に従い全うしてくれる。
指示を与える側の資質が良ければ良い程、この子は飛躍的に大きな働きをしてくれるだろう。
そして。
「カリンさん達ホント凄いな。ライの行動まで予測してスライム倒してるぞ」
カリンさんパーティがカナエちゃんのやっていた事までこなしているおかげで、ライはカナエちゃんが離れた後からほとんどダメージを受けていない。
自分勝手に動き回るライの行動はさすがに共同戦線となれば問題ではあるけれど、それを補って余りあるカリンさんの行動のおかげで思ったよりも早くボススライムを引きずり出す事に成功した。
それでもみんな魔法攻撃の応酬が続き、動きが鈍り疲れが見て取れる。
「うぅ~相変わらずおっきいの……。触手、ウネウネ、気持ち悪いの……」
スライムグレート。
その巨体のおかげで攻撃はヒットさせ易いが、その分ヒットポイントがとんでもなく多い……多過ぎると言っても大袈裟では無いクエストボスとなる敵。
そして厄介なのは、どんなに対応しても際限の無いあの触手だ。
魔法で上手く吹っ飛ばしても、吹っ飛ばした先からまた生えてくるのだから、油断なんてしていると。
「ちょっ、や、止めなさいっ! そんなとこに触手……ダメッ、あぁ、ヌルヌルしますわーっ」
セリカちゃんが早速餌食となった。
「カレン、見過ぎですの」
「許せ。あのギャップがなんともけしからんので、な?」
「な、じゃないの。さっさと助けるのっ!」
あれだけ予測不可能な動きをされたら、さすがのカリンさんパーティでも対応は出来ないか。
それにしても……。
「なぁ、クウコさんや」
「……何なの?」
オレの質問を確実に警戒している顔だ。
「ジト目、ご褒美っす!」
「カナエ、カレンをスキルで閉じ込めて欲しいの。邪魔なの、鬱陶しいの、変態なの」
「で、でも、カレンさんがいなくなったら、私達もすぐあのような状態に……」
「うぅ~、それで何なの? さっさと聞きたい事聞いて助けるのっ!」
「いやさ、君達プリンセスキャラって……感度もあるわけ?」
ヌルヌル触手が身体に巻き付いているセリカちゃんはどう見たって……表情といい、声といい。
「きゃうああああ~」
「あれは……特別セリカがきっと変態なの。もういいから助けてあげるのっ!」
「はいはい、わーってますよ」
本人へ魔法が当たらないように、触手の中間辺りを狙って攻撃を当てる。
「二人とも少し離れるけど、耐えてくれよっ!」
そしてその下へ猛ダッシュ。
「っとっとっと…………むぎゅう」
「ご、ごめんなさい」
幼女と言ってもクマのオレよりは身長あるからな……その分思ったよりも正直重いわけで。
「セリカっ、君もカレンさん達と合流してダメージを控えながら触手を焼き払って欲しいっ! その間に私とライさんが本体へ攻撃を仕掛ける!」
「お前っ勝手に仕切るんじゃねぇ! オレはオレのやりたいようにやるだけだっ!」
「ならクエスト失敗しても良いと言うのかい? 最善手だと私は思うのだが、他に方法があれば教えて貰えないかな?」
「…………ちっ! だから共同戦線は面倒なんだよっ! くそっ分かったよ、お前の言う通りにしてやるっ!」
「あぁ、恩に着るよ。カレンさん、触手は任せてもっ?」
「こっちはオッケーですっ!」
二人がやり取りをしている間に、セリカちゃんを連れて、クウコとカナエちゃんの場所へと合流した。
「セリカ、大丈夫だったの?」
「ええ、何も問題ありませんわ」
「……いや、カレンにいやらしい目で見られていなかったか心配をしたの」
「……え、えぇ、大丈夫だったと……たぶん」
「言っておくけど、目の前にこんなアラレモナイ姿をした美少女がいるんだぞっ?! むしろ何も見ない方が失礼ってものだろうがっ! 気力お大回復するしっ!」
実際、カリンさんやライと比べると、オレは今疲れてはいるけど圧倒的にちょー元気。
「それならクウコ達の分まで触手を倒して貰うの」
「……いや、それは無理。あんな不規則な動きをするヤツ、チート能力でも使わない限り反応出来っこないから」
「な、なんだかお二人を見ていると、余裕すら感じてしまいますわね」
「……はい」
「ほら、クウコ、褒められたぞっ!」
「呆れているの間違いなの……」
こんな会話を繰り広げてはいるが、みんなそれぞれ持ち場の役目をきっちり果たしている最中だ。
オレ、クウコ、カナエちゃんにセリカちゃんは、スライムの触手を攻撃。
その相手をしている間に、本体へカリンさんとライが魔法をヒットさせる。
「相変わらず攻撃が激しいですわねっ!」
「凄く、忙しいですっ」
一番攻撃力の高いセリカちゃんと防御スキルの壁を展開するカナエちゃんは、消耗がさすがに激しい。
「二人とも、少し休憩だ。クウコ、オレにヒールを頼む! ここからしばらくはオレが一人で対処するから、クウコはオレが対処出来なかったヤツを牽制してくれっ!」
「分かったなのっ! スキル、ヒーリング、なのっ!」
「でも、カレンさん達だって戦い続けているから疲れが」
「大丈夫、クウコのヒーリングは体力の回復と疲れの回復も兼ねているからっ!」
「それって……とてもレベルの高いスキルでは無くて? 疲労まで回復するだなんて、聞いた事がありませんわ」
「ホント、このスキルはオレも凄いと思うよ。んじゃあ、五分間だけオレが頑張るから、体力温存に専念を!」
とまぁ、格好良く言っては見たものの。
辛ぇぇぇええっ!
触手の本数が多過ぎるんだってぇっ!
しかも動きは予測出来ないしっ!
「連続クマクマ魔法弾っ!」
「どこか余裕そうにしているけれど、本当は辛いのを隠して格好を付けているヤツの末路がこれなの」
「これって言うなっ!」
「ここまで必死の形相をするクマは、全宇宙を探してもきっと見付からないの。愛くるしさの欠片は微塵も無いの」
「ク、クマキャラはどんな表情になっても『きゃーっ可愛いーっ!』って言われるんだよっ!」
「中身がカレンじゃなければの話なの」
中の人、詰まりはオレ自身なんだけど、本気で疲れが酷い。
ここにいるプリンセスキャラ三人と、カリンさんとライの援護もしているんだから、オレが一番大変な役を担っているわけで、そりゃ気力があっても身体がキツイと悲鳴を上げるって。
「あ、あの……加勢、しましょうか?」
「その方が良さそうですわね」
「だ、大丈夫っ! 大丈夫だから後三分はそのままでっ!」
言った手前お願いするのは気が引ける。
何より格好悪い。
「素直に言う事を聞いておけばいいと思うの。でも、カレンがダウンするとせっかく出来上がった分担が破綻してしまうの。だから、セリカとカナエにお願いがあるの」
オレの後ろで何やらごそごそとやり始めたようだが、忙しくそれ所では無い。
今は目の前の事に集中しなければ、あっと言う間にこの状況は破綻してしまう。
集中、ここは踏ん張りどころだ。
セリカちゃん、カナエちゃんの二人の体力が少しでも回復すれば、この状況は一気に楽な方向へ向かうのだから。
レアリティ4。
やっぱりさすがだよ。
プリンセス達に頼る事は少し申し訳ないけれど、後残り僅かの時間、オレが頑張りさえすればいいだけの事だ。
(体力消耗が激しいが、後はもう根性と気合で乗り切ってやるーっ!)




