あこがれ
高みに至りたかった。
誰かを見下ろしたいだとか、周囲からもてはやされたいだとか。 そんな理由ではない。
自分自身にも、この感情がどこから来るのかは、わからない。
とにかく、少しでも高く。 少しでも、高く、飛びたかった。
その他大勢として、見上げているだけの自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
平凡な市民として、毎日を送っている自分が、どうしても許せない。 そんなことも、考えた。
だけど僕の、この蝋で固めた翼では、天に近づく端から溶けてしまう。
しょせん僕の翼では、一時的にもてはやされたとしても、やがて落ちぶれるのが目に見えている。
いや、そんなことは、言い訳に過ぎない。
近づくことが出来なかったのは、本当は「墜落が怖かったから」なんていう理由じゃない。
なんてことは無い。
墜落の恐ろしさよりむしろ、「自分の翼が作り物でしかない」と。 そう、思い知らされことが、とても怖かった。
それだけの話だったんだ。
「失敗をしない人とは、挑戦をしない人のことである」
偉い人は、そう言うのかもしれない。
「それぐらい、失敗の内にも入らない」
もしかしたらきっと、きっとそうなのかもしれない。
「リスクを恐れ、行動をしないことこそが、最大のリスクである」
ああ、もう。 わかってるよ、そんなこと!
わかってる。
わかって、いる。
失敗しても、なんとかなることも。
失敗することで、なんとかなることも。
頭の中ではわかっている。