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第35話 妙な敬語とかやめよ!

ここから新章となります。

ますますのおっさんの活躍をご覧ください。

 魔法障壁管理者の朝は早い。

 朝は日の出の前に起き、一杯のモーニングコーヒーを嗜む。

 ちなみに俺は紅茶派だ。

 出張から帰ってきた日から4日がたった。

 異世界転生して1週間以上が過ぎ、今や俺も一流の魔法障壁管理者としてこの城を守っている。


 ――ヒロノートより抜粋。


「ふはぁ」


 俺は一息つく。

 時刻は朝の8時を回ったところだ。

 俺は昨日付け忘れたヒロノート、もとい業務日誌を書き終えたところだ。

 この業務日誌が行く行くは師匠ノートのように後世に残るかと思うとペンに力がこもると言うものだ。

 若干脚色している部分があるが、それはまあそれだ。


 現に俺は朝早くから仕事をしている一流魔法障壁管理者。

 いつもはベルーナが出勤するまで寝ていて彼女に起こしてもらっているという事実は伏せようと思う。


 だらしない大人いや、おっさんだとお思いかもしれないが、それはそれで仕方が無いんだ。


 俺は夜間対応のために職場に寝泊りしているんだが、なんやかんやで警報が鳴って結構夜に起こされる。

 中途半端に起こされて、命の危険のある(アサシンに狙われるかもしれない)仕事をし終えて、高ぶったまま眠りにつくので眠れない。

 ようやく眠りに付いたと思ったらもう朝だ、ということが多いためだ。


 つまり朝も昼も夜も働かせるこの職場が悪いのだ!


「ふあぁ」


 俺はもう一つあくびをする。

 いつもならもう一眠りするのだが、つい先ほど警報が鳴って駆けつけたので、眠れないのだ。

 今から寝ようとすると、いい感じに寝れそうなときにベルーナが出勤してくるだろう。

 そのため寝るのは諦め、今モーニングティーを飲んでいるところだ。

 眠気が覚めるといいんだが……。


 ・

 ・

 ・

 ・


「……さん……ヒロ……ヒロさん…起きてください」


 ん~、ベルーナ……あと5分……。

 まどろんだ意識の中に少女の声が聞こえる。

 心地よい気分だ。


「もぅ、仕方ないですね。

 お疲れのようですし、もう少し寝かせてあげます」


 女神からのお許しがでた。もう少し寝るとしよう。

 でもいつもみたいに、起きない俺に頬を膨らませながら何とか俺を起こそうとしてくれるベルーナも捨てがたい。

 そのアクションだけで1日がんばろうという気になる。


 ――ヴィーム、ヴィーム


「な、なんだ!?」


 いきなりの耳を劈く警報音に飛び起きる俺。

 せっかくのまどろみ気分が台無しだ。


 かといって寝続けてベルーナに仕事をまかせっきりになっては上司としての面目が立たない。

 俺は警報の内容を確認するため、事務室へと移動した。


「あ、ヒロさん。おはようございます」


 警報音が鳴り響く中、おれに笑顔を向けてくれる天使ベルーナ。

 今日も一日がんばろう。


「おはようベルーナ。警報の原因は?」


 ベルーナの笑顔を見て、にへらっとしただらしない表情を、キリッと引き締めて仕事モードに入る。

 もちろん声もイケボを作っている。


 この職場と普段のギャップに女子たちは心を奪われるらしい。

 ギャップ萌えってやつだ。


「残念ながら原因はわからないです。

 場所は事務棟魔術士部、男子更衣室ですね」


 事務室の中央モニタに映し出された城内の地図情報を見ながら、ベルーナはそう答える。


「魔術士部か。そういえば朝方警報が鳴ったんだけど、それも魔術士部で、鍵がかかってたから入れずに帰ってきたんだよな……」


「場所からして魔法障壁に直接の異常があるわけでは無いと思うのですが、念のため両方の箇所を調査いただけますか?」


「分かった。ベルーナはここで待機して備えておいてくれ」


 ・

 ・

 ・


 地下にある魔法障壁管理部を出て朝日を浴び、光合成光合成とか考えながら事務棟の中の魔術士部へと向かう俺。

 先ほど警報が鳴った早朝のだれもいなかった時間帯と比べて出勤してきた職員であふれかえっている。


「あら、ヒロじゃない。どうしたのこんなところで」


 魔術士部の部屋に顔を出したところ、聞き覚えのある声を掛けられた。


「ハイネ! ……ちゃん」


 危ない危ない、ちゃんとちゃんづけ・・・・・しておかないとな。


 彼女はハイネ。魔術士部のエンリさんの元で働く若い子だ。

 若い子という説明がおれをおっさんたらしめているが、それは今は置いておこう。

 ベルーナと変わらない年齢だと思う彼女が魔術士長の元で働いているのだ、優秀であることは疑いようもない。


 話は逸れたけど、俺に銀貨2枚を貸してくれたいい子だ。

 トイチだけど……。

 ちなみにまだ銀貨は返していない。

 

「ちゃん? ハイネさん、って言いなさいよ。

 お城での仕事は私のほうが先輩なんですからね」


 ちなみに、こんな性格だ。若いってすごいね。


「いや、でも、俺もハイネ……さん、より年上なんで、ヒロさんって呼んでほしかったり」


 なんかこの前も同じようなやり取りをしたぞ。


「あっはっは、ヒロさん・・・・とかおかしい。

 口が言うのを拒否してるわ。

 しかたないわね、ヒロはヒロね。

 それで、私の事も呼び捨てでいいよ。

 妙な敬語とかやめよ! これからはタメね!」


 なんか馬鹿にされた気もするけど、ハイネと敬語を使い合うのもなんかむずかゆいな。

 まあタメ口でいいか。


「それでヒロ。なんでこんな所にいるの?」


「かくかくしかじかどうのこうの」


 俺は便利なフレーズで事情を話す。


「ふーん、いいよ、私が一緒に行ってあげる。

 じゃあ鍵を取ってくるから待ってて」


 ・

 ・

 ・


 そして部屋の鍵を持ってきてくれたハイネとともに警報が指し示した場所へと向かう。


 まずは男子更衣室だ。


「ハイネ、鍵貸して。俺が行ってくるよ」


「え……ちょっと」


 紳士として当然だ。

 小生意気だけどハイネも女子。

 むさい男たちが着替えているであろう更衣室を見せるわけには行かない。


 俺は鍵を受け取ると、男子更衣室の扉の鍵穴に鍵を差し込む。

 鍵を回してみるが、開いた気配はしない。

 逆に回したところ、鍵が閉まった。


 なんだ、開いてるじゃないか。

 鍵は必要無かったな。


「失礼しま~す」


 男子更衣室とはいえ、俺は魔術士部の人間ではない。

 つまり部外者だ。おとなしく入るとしよう。


「…………」


 ええと……人が……いるにはいるんだけど。


「っ、きゃぁぁぁぁぁぁ」


 うん、そうなるよね。

 目の前にはお着替え中の女性職員たちの姿があった。

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