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第30話 成熟した大人の魅力。つまりは漢気!

「女性を一人、魔法障壁で拘束したままにしてます。

 放っておくと、彼女の身が危険です。

 だからもう一度魔法障壁にアクセスして、その女性を解放します」


「ばっ、ばか、やめろ、ここではだめだ。

 すぐにエレメンタルリンク値から場所が割れるぞ」


「だけど、すぐにでも開放しないと!」


「惚れた女か?」


「ええ、そんなもんです」


 あながち間違ってはいない。


「わかったよ。だが今すぐここではだめだ」


「じゃあどうしたら……」


「いいか、俺がここから離れたところで魔法障壁に不正アクセスを試みる。

 それで奴らの注意は俺に向くだろう。

 その後お前がアクセスし、目的を達成したらすぐにこの街を去るんだ」


「そ、そんなことしたらダイスンさんが捕まってしまう」


「バーカ、そんな心配はしなくていい。

 俺はこの街には詳しい。子供のころから住んでいるからな。

 裏道抜け道何でもござれ。かならず逃げ切れる」


「分かりました……でも、どうしてそこまで」


「言っただろ、俺はお前のことが気に入ったんだ。

 男が命を懸けるのにこれ以上の理由が必要か?」


 やだ、かっこいい。

 これが成熟した大人の魅力ってやつなのね。


「わかりました。

 次にお会いした時は酒でもご馳走しますよ」


 俺も負けじとカッコいいセリフを突っ込むぞ。


「いいなそれ。次に会うときだ。約束だ」


 俺はダイスンさんとがっちり手を握り合う。


「じゃあ、まずは俺が行く。

 5分ほどしたら不正アクセスをするから、その後お前がアクセスするんだ。

 とちるんじゃないぞ。

 その後はさっき言ったとおり、目的が達成できたらすぐにこの街を出るんだ。

 この家はいざという緊急時のために支部が用意しているもので、地下で街の外とつながっている。

 作戦は理解したな?」


「ええ、ありがとうございます……」


「しけた面してんじゃねえぞ。またな!」


 そう言ってダイスンさんは家から出て行った。


 予定通りなら5分後にダイスンさんが不正アクセスをして魔法障壁警備兵の注意を引く。

 その後俺がアクセスすればやつらの注意が分散されるというわけだ。


 俺は管理者権限でアクセスすることになるんだが。

 さっきこの街の魔法障壁ちゃんも言っていたが正規のアクセスとみなされる。

 エレメンタルリンク値がコンピューターでいうログと同じなら、管理者権限を持っていても逐一エレメンタルリンク値に書き込まれてしまう。

 だれのだれべえがいついつどこで何をしましたと言う風に。


 つまりは、さっき俺の居場所がばれたのは、正規アクセスをした俺に対してオズルーンってやつが、何らかの方法で魔法障壁にアクセスし、エレメンタルリンク値から俺の居場所を割り出したんだろう。


 俺がどれくらい気を失っていたのかは分からないが、その短時間でやってのける腕前は管理者として相当な物なんだろう。


 でも……待てよ、エレメンタルリンク値で場所が割り出されるとするなら、ログインしてすぐに管理者権限でエレメンタルリンク値を改変すれば、ダイスンさんも俺も場所が割れないんじゃ……。


 それどころか、間違った情報を書き込むことで追跡を欺くことも出来る。


 ダイスンさんが不正アクセスをするまであと数分。

 それまでに俺が管理者権限でログインして、自分のエレメンタルリンク値を改変する。

 そして不正アクセスに対してのエレメンタルリンク値を記録しないようにすれば、ダイスンさんの場所も割れない。

 さらにどこか正反対の所で不正アクセスしたかのように改変すれば!


 やれる、やれるぞ。


 俺は心を落ち着け目を瞑る。

 そして床に向かって手を伸ばす。


 なんとなく感じる……魔法障壁を。


『タスケテ……』


 やっぱり、助けてって言ってる声が聞こえる。

 いったいどこからなんだ。


『IDとパスワードを入力してください』


 とと、入力始まった。

 おそらくこの時点でエレメンタルリンク値に記録が始まっているだろう。

 俺は集中して壁のイメージの中からIDとパスワードを探しだす。


『IDとパスワードの入力を確認したぴょん。

 ようこそ管理者さま。

 今日2回目のログインだぴょん』


 ぴょんぴょん言ってる声が頭の中に聞こえてくる。


 頼む、急いで今俺がアクセスしているエレメンタルリンク値を変更してくれ。

 そうだな、値を全部オズルーンってやつがいつもの場所からアクセスしてるように変えておいて欲しい。

 それと、この後の俺の操作の値は全部記録しないように頼む。


『管理者権限のコマンドを受け付けたぴょん。

 エレメンタルリンク値の値を改変するぴょん。

 そしてそして、この後の操作履歴は残さないようにするぴょん』


 よし、第一段階はOKだ。

 これでオズルーンってやつがいつも通りログインして、そのまま何もせずに棒立ちだった、というログだけが残る。


 すぐに次だ。ダイスンさんが心配だ。


 次は、今から1時間、外部からの不正アクセスの履歴を残さないようにしてくれ。


『外部からの攻撃に対して脆弱になるけどよろしいぴょん?

 よろしければYをキャンセルするならNを入力するぴょん』


 YYYYYYY


『管理者権限のコマンドを受け付けたぴょん。

 今から1時間の間、不正アクセスの履歴を取らないぴょん』


 よし、第二段階もOKだ。

 これでダイスンさんのログも残らないので安全になるだろう。


 次は陽動だな。

 ここから街の逆側で不正にアクセスが行われたというログを作成してくれ。


『管理者権限のコマンドを受け付けたぴょん。

 ミルバウラ地区で美男子が自作のポエムをエレメンタルリンク値に刻み込むために不正アクセスした、という値を書き込むぴょん』


 えっと、まあそれでいいよ……。

 突っ込みたい。突っ込みたいんだが、時間が無いのだ。


 そして最後だ。これが当初の目的だ。


 俺がさっき魔法障壁で拘束した女性の拘束を解いてくれ。


『そのようなコマンドは用意されていないぴょん』


 え? ……ちょっと指示が具体性に欠けたのかな。

 うーん、なんと伝えたらいいんだろう。


 作成した魔法障壁を、消してくれ?


『管理者権限のコマンドを受け付けたぴょん。

 現在残っている記録の中で管理者によって作成された魔法障壁をすべて削除するぴょん』


 え、ちょっと、やりすぎなんじゃ……。


『削除が完了したぴょん。

 複数の生体反応が魔法障壁から解放されたぴょん』


 複数?

 もしかして、陰湿管理者が地下に捕えてたっていう女の子たちも解放できたのかな。

 それならラッキーだ。


『通知するぴょん。

 魔法障壁管理者がアクセスを試みているぴょん』


 やばい、本人が降臨しちゃう。

 どうしようどうしよう。

 とりあえず何事もなかったかのようにログアウトして街の外まで逃げないと。


『ログアウトするぴょん?』


 ああ、世話になったな。


『5秒後にログアウトするぴょん。

 次は、私を、タスケテ、くださいね……』

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