世界は輝いてるか?
なんか主人公の性格がコロコロ変わっている気が、、、 き 気のせいですよね!
少し大きめの一軒家に、
仲の良い家族が3人で暮らしていた。
優しい父に、人としての正しさを教えてもらった。
厳しいが愛情深い母に、
騙されても人を信じてあげなさいと教わった。
永遠に続く幸せに疑いはなかった。
しかしそれは永遠ではなかった。
ある日両親は帰ってこなかった。
なんて事はない、不運な事故。
10歳の幼かった子は、他の大人に良い様にされた。
親戚をたらい回された。
両親の遺産は食い潰された。
どうしようもなかった。
何が起きているかもわからなかった。
心は荒んだが、不思議と絶望はしなかった。
もしかしたら、諦めていたのかもしれない。
灰色のような世界。透明に透けていく自分。
ある時、嘘をつく大人の顔がわかる様になってきた。嫌な顔だ。少年の周りには運が悪いことにまともな大人が存在していなかった。
大切な両親の物を守ろうとした。
14歳の頃には守れるものは思い出だけだった。
それでも母の言葉を、信じるという事を信じ続けた。
信じることで自分をなんとか保った。
何を信じているのかわからないがとにかく信じた。
たとえ自分が崩れ落ちようと。
だからこそ、イワンというあの大人の
嘘偽りない思いに好意をだいた。
「ひどい夢だな、、、」
彼は目を覚まし体を起こした。
眼に映るのは六畳一間のあの部屋ではなく、
ヨーロッパの屋敷のような部屋だった。
「着替えはどうしたら良いんだろう。
そう言えばまだマントのままだったな。」
昨日の出来事を思い出す。
シャワーの最中の異世界転移。そして勇者になってくれと懇願され、それを受け入れてしまった。
「いや、俺もいい加減うんざりしていたんだ。
父さんと母さんの形見もないし、ちょうどよかったじゃないか。」
自問自答している最中ノックがなった。
「勇者様、おはようございます。お着替えをお持ちしました。」
メイド服のようなものに身を包んだマールと、
白の軍服のようなものをまとったイワンが部屋に入ってきた。
「勇者様、昨日はよく眠れただろうか?」
「ええ、おかげさまで。」
彼はイワンからの質問に軽く返事をした。
彼が服を着替えている最中マールはやはり恥ずかしいのか後ろを向いている。
服は肌触りもよく、やはりこれまた昔のヨーロッパのような日本とは無縁な服で品がありいかにも高そうな上質なものであり、彼は気に入った。
「勇者様にすまないが願いがあるのだ。
無理にとは言わないのだが、出来るのであれば
これからは自分のことを ロック と名乗ってほしい。フレイ王国は大々的に勇者召喚をしていない。むやみに勇者と呼んで混乱を招くわけにはいかないのだ。」
これには、政治的要素も絡んでいる。
他国にはギリギリまで勇者召喚を拒み、
圧力がかかったことにより、渋々行なった。
王国はそういうことにしておきたいのだった。
「いいですよ。混乱は嫌ですから、でも民衆の皆さんとかに知らせなくて良いんですか?」
「その辺は大丈夫だ。情報統制は行なっていく。
しかし、時間がどうしても必要になるのだ。
できるだけ、勇者という事を悟られないで欲しい。」
「なるほど、それもそうですね。
この世界、ルルコーアでは俺はロック。
そう言うことでオッケーです!」
ロックは笑顔をイワンに向けた。
「ロック様は良い笑顔をする。そう言うことだ。
迷惑をかけるがよろしく頼む。これからしばらくは
世界の勉強をしてもらうことになる、マールが家庭教師と戦闘の訓練をしてくれる。マールは強い。ロック殿様、くれぐれも怪我をしないように。」
イワンはそう言うと部屋から出て行った。
「ロック様、改めてよろしくお願いします。
マールです。金葉が1人、イワン様に仕えております。勉強と訓練と頑張りましょう!」
マールは眩いばかりの笑顔をロックに向けた。
嘘のない笑顔にロックも少しばかり緊張してしまう。
「マールさん、こちらこそよろしくお願いします!
あと様はやめてください、俺はただのロックですから、ロックと気軽にお願いします。」
「わかりました。ロックさん、今日からビシビシ指導しますからね! 頑張りましょう。」
マールの返事はやる気にみちたものだった。
「あはは、、お手柔らかに。」
これから起こる出来事がどのようなことなのか。
どんな困難が待ち受けているのかはわからない。
しかし、希望すらなかった日本より、
自分を見てくれるこの世界の方が好きになっていた。
たった1日にもならない時間の流れでも、
10歳という幼い頃で時間が止まっていた少年の心は
激流のような言葉にならない感情が全てを覆い、
灰色の世界も、透明な自分も壊していった。
間違いなく、ロックの今日は輝いていた。