その男、シャーワー中につき、
思い切って初めて書いてみました。
異世界テンプレですが、主人公はいい奴にしたいです。なんかここあれやでってありましたら、教えていただけると幸いです! よろしくお願いします!
「どうかこの国を救ってもらいただきたい。」
異様で唐突な出来事だった、なんの前触れなく訪れた邂逅。滴る水が石の床にしみて行く最中、彼はこの瞬間に起こったことを頭の中で整理し始めるのであった。
時は少し遡る。8月の日本では、記録的猛暑が続き、連日ニュースに流れるほどであった。六畳一間の彼の家も、例外なくその暑さに晒されていた。
「暑すぎる。 とりあえずシャワー浴びよう」
体にまとわりつく汗を不快に感じたのか、彼の朝1番はシャワーになった。この時もう少しシャワーの時間を遅らせればと彼が思うのはもう少し先の話である。
容赦のない冷水が体をめがけて襲いかかり、汗と共に体から流れていった。彼は気持ちが良くなってきたのか、鼻歌を鳴らしながら体を洗うためのタオルに手をかけた。そして飛ばされたのだった。
石造りのだだっ広い部屋に淡い光を纏う男と女がいた。松明の火の光しかない部屋は薄暗く、少し不気味で肌寒い。
2人は床に書かれた魔法陣の様なものを囲み、儀式を行っている最中だった。
「本当にこれで大丈夫なのでしょうか?」
「他の国では成功しているのだ。やり方に問題はないはずだ、ロアの循環にも問題はない、あとは呼んだ直後の対応問題のみだ。」
男は自分も安心させるために、少し大きめの声で答えた。そこには失敗するわけにはならないという強い意志も混ざっていた。
「しかし、もう私のロアも尽きかけてきてます。やはり召喚ともなると、、、」
ロア この世界にルルコーアに満ちている不思議な力。生きとし生けるものに寄り添い、守るものと言われている力、一説には精霊の加護とも言われている。
「魔法陣が光り出してきた、あともう少しだ。すまない、無理させることになる。マール。」
ロアの潜在力がそれほど高くないマールを男は気にかけた。
「今に始まった事ではありませんから、なんとかしてみせますよ。この勇者召喚。」
マールは笑ってみせた、それは彼を不安にさせるべきではないとわかっていたからだ。
「お前の他にこれ程まで繊細にロアを扱える者を私は知らない、頼りにさせてもらっている。ロアの放出は任せてくれ。」
男の言葉にマールは頷いた。それと同時に魔法陣は眩い光を放ち、2人に覆いかぶさった。
「ぐっ、成功したのか?」
目を細めながら魔法陣の方を見る。
しばらくすると光はおさまった。そして魔法陣の真ん中にいたのだ。シャワーを気持ちよく浴びていた彼が。
男は戸惑った。呼んだ勇者が全身びしょ濡れで全裸とは思わなかったからだ。
マールは声を出せなかった。今年15になる彼女は男の裸を見るのが初めてだった。
彼は混乱していた。さっきまでシャワーを浴びていたのだ。ここはどこだ?目の前の2人は誰だ?それより何が起こった?
永遠のような独特の気まづさと沈黙を破ったのは、
男だった。
「召喚に応じていただき、ありがとうございます。お待ちしておりました。私は金葉が1人、イワンと申します。勇者よどうかこの国を救っていただきたい。」
イワンは勇者と呼んだ彼を見た、値踏みをしたわけではない。 彼がどの様な反応を示すか、絶望するのか、逆上するのか、どの様な反応でも覚悟は決めていた。
「あのー、とりあえず何が着るものを貸してもらえませんか?」
彼の開口1番は服の要求だった。
彼は頭で少ない情報を整理していた。
ここはどこなのか? 石造りの部屋のようだ
目の前の2人は何者なのか? 男はイワンと言うらしい。女性の方は名前はわからないが若そうだった。
〔この状況は異世界転移なのだろうか。アニメとかラノベが好きでよかった。とりあえずはなんとか平然でいられるみたいだ。今は本当に異世界転移か確認することにしよう。〕
「俺はあなた方に呼ばれたってことでいいんですか?き、聞きたいことがたくさんあるんですけど、とりあえず呼ばれた理由と元の世界に帰れるのかを教えてもらっていいですか?」
彼はイワンから渡されたマントを着ながら恐る恐ると言う様子で聞いた。
「そうです。我々がお呼びしました。目的は先ほど言ったように世界を救ってほしいのです。元の世界には、、、 申し訳ありません、帰る方法はありません。」
マールの返事で帰るこができない予想が的中した。
彼はこれが本当に異世界転移なのだと確信するとともに途方にくれるのだった。