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4、冒険を始める前に

 僕は光のゲートをくぐりあの白い空間を後にした。


 ゲートをくぐり感じたのは田舎の空気。


 空は青く、木々は濃い緑をしている。

 遠くに見える山は木々が黒々。

 息を吸い込めば緑の爽快感。

 茶色い土の道の脇に生える草々は色々な形をしている。

 道の先には四角い木の門がある。

 その近くには女性が1人佇んでいた。


 その女性は自ら光輝くような美しく細かな金色の髪と青い宝石のような、それこそサファイアのような妖しい光を放つ眼をしている。


「こんばんは、君は誰だい?」


 凛とした声。

 ネコのような声。

 少し目新しい物を見つけ興味を惹かれたような。


 彼女はベースストーリーでキーパーソンになる山猫ティグリス。

 好奇心旺盛で面白そうな話を聞きつけると情報を集めだす人物。

 正体はこの世界の始まりの町が所属する小国リースの女王。

 人材探し、もとい遊び呆けている女王様。

 詳しくは追々していく。


 この場での受け答えは単なる顔つなぎに過ぎない。


「僕は【クリムゾンクラウド】。

【クリム】でいいです」


「クリムゾンクラウド、クリム君ね? よろしく。

 さて。ここは冒険者学校だよ。冒険について聞きたいことがあったら中の人に聞いてね。

 聞きたいことがなくなったら、そこの練習場で武器を練習するといいよ。

 武器に関しては練習場でもらえるから大丈夫。条件を満たしたらあそこの人に特別なスキルをもらえるから」


 ティグリスさんはそう言いながらあちこち指さして教えてくれた。

 僕はティグリスさんに一礼すると門をくぐり抜けた。

 ティグリスさんは軽く手を振りさよならをしていた。


 まずはティグリスさんに言われたようにヘルプさんのところに向かう。

 ヘルプさんは禿頭で緑の眼をしたお坊さん。僕よりも背が高い。

 190㎝はないかな? でも180㎝は超えていそうだ。


「こんばんは、僕はクリムというのですが」

「こんばんは、私はガルボと申します。今日は冒険について話を聞きに来たのですか?」

「はい、そうです」

「わかりました。まずはこの中でわからないものはありませんか?」


 ヘルプさん、もといガルボさんというお坊さんは空中をタップした。

 すると僕のスマホはアラームが鳴りメールが届いたことを知らせてくれた。

 中にはサイトへのURLが貼られており、サイトへアクセスすると項目毎にまとめられていた。


 うん、まぁ、この方がありがたいんだけどね?

 なんというか……うーん……。


 少し心にしこりを残しつつ、項目を確認していく。

 アチーブメント制やステータスについて、種族の特徴やジョブの特徴、スキルの所持数制限と熟練度やレベルについて、スキルの使い方、スキルの進化、ジョブのクラスアップなど基本的なことが書いてある。


「では、スキルの使い方について教えてもらえませんか?」


 僕は知識では知ってはいるものの体験したことのない、スキルの使い方について教えてもらうことにした。


「わかりました、では少し場所を変えさせてもらいます。

 あの少し広い場所でお見せしましょうか」

「お願いします」


 ガルボさんの後ろをついて歩く。

 太陽光を受けて禿頭がピカッと光る。

 普通に禿げるとあそこまで艶やかには光らない。

 なんというかくすんで小汚いというか……うーん……。


「よし、じゃあ、初めに通常の使い方から」

「はい」

「手動入力法です。端末のメニューから使いたいスキルのあるスキルツリーを選択。

 そしてスキルをタップ。それだけですね。

 パラメータなどのあるスキルなどではここで調整も行います」


 ガルボさんはそう言いながら空中に指を這わせると赤いオーラを体に帯びた。


「今、私は体術スキルツリーのアクティブスキル、インパクトを使いました。

 このスキルはそれまでの勢いとスキルの補正分の威力を攻撃にのせ、攻撃の接触面に拡散させます」


 ガルボさんが足踏みすると足を中心に大きく地面にひびが入る。

 そしてガルボさんの体の周りのオーラは足踏みと同時に消えた。


「次にモーション入力です。まずこれには事前準備が必要です。

 メニューからマクロというアイコンを選択してみましょう」

「はい」


 指示の通りにマクロというアイコンをタップ。

 すると空欄がたくさんある画面に変わった。


「では1番上の空欄をタップです」

「音声か動作か開始のモーションを選べるようになっていませんか?」

「音声は簡単なのであまり迷うことはないでしょう、では今回は動作を選択しましょうか」

「そうすると目の前にカメラが浮かびませんか?」

「よし、では端末で開始を押してみましょう」

「押せたかな? ではアクション!」


 ん?


「オーケー、オーケー、カッコいいよ!

 もし失敗しても止めないで、やり直そう!」


 あれ?


「じゃあ、最後に使うアクションの部分だけトリミング」


 なんか……


「出来たかな? じゃあ、マクロの画面に端末は切り替わっていないか?」


 徐々に軽くなっていないか?


「続きだ、開始のモーションを決めた後そのモーションに続くアクションを選択出来るだろう?」

「よし、そこに使いたいスキルをドラックアンドドロップ!」

「慣れたら複数のスキルを入れてコンボを作ろう!」

「コンボを作る時はモーションが大きい必要があるスキルは1つにした方がいいね」

「自由に動けない時間が多いと敵に攻撃されてコンボを繋げられなくなるからさ」


「最後に特殊な使用方法」

「スキルを発動するのには最適な姿勢があるものさ」

「だからスキルを発動する前に姿勢を整えるモーションを使う」

「そうするとだ、フンッ!」


 ガルボさんが一声出すと、その体は高速で動き、体に赤いオーラを一瞬でまとい、地面に足踏みを行った。

 今、作られたひび割れはさっき作ったひび割れの2倍以上の範囲に広がっていた。


「このように威力が上がる」

「姿勢を整えるモーションは端末に登録されているよ」

「そうそうそれそれ」

「いいね! 筋いいよ」


「ではこれでスキルの使い方に関しての説明は終わりになります。

 拝聴の程ありがとうございました」


 あ、口調が落ち着いた。


「こちらこそ詳しく教えてくださりありがとうございます」


 提供は解説の時にテンションの上がるガルボさんでした。


 パラメータなどの設定を行えるけれど手間が多い手動入力法。

 開始モーションを決めてすぐに使えるモーション入力法。

 予備動作が必要になるものの威力の上がる特殊な使用方法。


 ……特殊な使い方がすごく必殺技っぽくていい!

 仮面ドライバーのキックみたいじゃないか!

 やはり体術スキルはとらないと!

 武器系スキルも夢が多いだろうなぁ。


「では他に聞きたいことはありませんか?」


「生産や解体に関しては書かれていないのですが」

「生産などの技術はこれという決まりはありません。

 スキルの中にはステータスによって効果が高まるものもあります。

 しかし生産物は様々な加工を経て作られるので一概にどうすればいいとは言えません。

 加工の過程が多いもの程スキルの補正値を重ね掛け出来たりもします。

 しかし適さない過程を経た結果素材の力が失われることもあります。

 何が正解とは言えません」

「なるほど……奥が深いんですね」

「えぇ、やり込む人や元々ある程度の技術がある人にしかおすすめはできませんね」

「元々ある程度の技術がある人?」

「はい、素材をどういう風に加工していけばいいのかなどを知っている人がたまにいるのです。

 それと技術がなくてもやり込む人の場合は端末を使いネットという異界の知識を読みながら応用していっています。

 初めは誰しも初心者なので多少手を出しても面白いかもしれませんよ」

「いやいや、今おすすめしないと言ったでしょう!?」

「やり込む人ではないのですか?」

「……やり込む人ですが」

「では少し生産について触れましょうか」


「見た所、クリムさんは力に重点を置いていますね?」

「では鍛冶で説明をしましょうか」

「ここに鉄の原材があります」

「まず鍛冶スキルで炉を出します」


 そう言ってガルボさんが出した炉は巨大です。

 なんです?これ?大きくありませんか?

 学校の校舎の2、3倍はありそうなのですが!?


「この炉はスキルのレベルが上がればより高温で溶かすことが出来るもの、素材を温度で分離することが出来る特殊なものなど選択出来るようになりますね。

 またギルドによっては誰でも使える炉が何種類もあるそうです」

「ここで端末を使い異界の知識を読みましょうか」

「鉄、精錬方法で検索するといいですね」


 鉄の精錬で検索すると、なぜこんな大きさの炉が必要なのかが分かった。


「開けたようですね?」

「ではこの高炉に、石灰石、コークス、鉄の原材という順に上から入れていきましょう」


 炉に付けられた階段を上ってガルボさんはあっという間にお空の人。

 あぜん。

 僕はあぜんとしてその光景を見守ってしまった。


 そしてガルボさんは空から降ってきた。


 をいっ!


「階段って一々降りるのはめんどうじゃないですか」

「そういう問題ですか!?」


 ガルボさんが頭を掻きながら照れている。

 いや、照れているってそういう問題なのかな……?

 え、これって普通のことなのか?


 まぁ、それはもとより……


「ここまでやるの!?」

「はい、純度が低い鉄でいいのでしたら、ここまではしませんが高純度の鉄、鋼が欲しいならここまでやる方がいいですね」

「え!?」

「お手本として見せるからにはこういうものの方がいいでしょう?」


 それ、むしろ萎縮しちゃう人いるんじゃないかな……。


「ここまでのレベルでやるのは鍛冶スキルのレベルが30は必要ですのであまり気にしないで大丈夫ですよ」

「初めはトンテンカンテンと手打ちで鍛造から始まりますから」

「あ、ちょっと時間がかかるので、こちらがその出来た鋼ですよ」


 何それ、180秒クッキング?


「では記念にこの鋼をプレゼント」

「え!? あ、ありがとうございます」


 ヘルプさんに生産について話を聞くと、振っているステータスによって種類が異なるものの、高レベル素材をもらえるとは知っていた。

 具体的な内容には触れられていなかったけれど、コレは確かに説明しがたい……。


 にしてもだ。

 ガルボさんってやっぱり高レベルなのか。


「他に何かありませんか?」

「解体については」

「すみません、クリムさんは異界でまだ18歳になっていませんね。

 そのため大変申し訳ありませんが、解体については他の人に頼んでいくしかありません。

 解体専門のギルドなどもありますので、討伐したモンスターなどを持ち込んでいってください」


 ……なんですと……なんですと!?

 え、年齢で引っかかったですと?!


 解体天子様がリアル幼女じゃないって分かってしまった……


 いえ、いいんです、別に幼女であること期待していたわけじゃないんだからね!

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