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3、アバター作成

 言葉を発した瞬間意識が遠くなったと思えば、次の瞬間視界が白く染まった。


 目の前には鏡がある。どうやらこれを見ながらアバターを作るらしい。


 そして鏡の隣にはタッチパネルが浮かんでいる。


 種族。


 あのギルドに入る条件は1つ。

 獣人であること。


 獣人。

 身体能力に優れ、魔法能力は一部を除き低い。

 魔法能力の一部が優れた種族は他の種族のその魔法の適正よりも高い。


 このゲームでは取得可能なスキルツリーの数が初期は5つと決まっており、他に取るべきスキルツリーのことを考えると結局のところ魔法能力は1つが無難。

 エルフなどの魔法特化型の種族では融合魔法だとか使えるようになるらしいけれど、それはまた別の話。


 獣人は何を選ぶべきか。


 憧れの人はテンを選んだ。

 この種族は幻術スキルツリー、特に幻影の術の行使に特化している。

 CTやMPが他種族が使うよりも非常に少ないという特徴があり、魔法をぶつけて相殺しない限り消えない視界の障害は非常に厄介。

 範囲攻撃でまとめて消すにしても、幻影数十個と範囲攻撃1つでMPが釣り合うし、そもそも1つの幻影の最大サイズが10m近いため、範囲攻撃で消せる範囲内に2、3個幻影があればいい方。

 テンの獣人が使う限り非常に強スキルだというのは言うまでもない。


 ちなみに幻術スキルツリーが得意な種族はキツネとタヌキがいる。


 キツネは個別対象の認識を操作し操る強スキル、ただしモンスターにだけ有効。

 賢さ依存ではあるもののその意のままに操ることができる。


 タヌキは自己対象の認識を操作し変化する、スキル熟練度が上がると一部が実体化するという強スキル。


 強いが故かこれらのスキルにしかこれらの種族は特化されていない。


 天才ギルドマスター、フォロさんはオオカミを選んだ。

 この種族はステータスが全般的に高く特に素早さが高い。

 魔法に関しては使うのは不得意だけれど耐性が高い。

 ゲーム内で夜になると賢さが下がる代わりに全体の能力の引き上げが行われる。

 物理特化型の種族だ。

 現状の最強種族はオオカミじゃないかなんて掲示板では噂されている。


 で、僕は何の種族を選ぶことに決めていたか。


 ウサギ。


 この種族は脚力に特化している。

 し過ぎていると言ってもいい。

 魔法は不得意だ。

 跳躍力に関しては獣人種族の中で一番高い。

 ヒョウなどには足の回転数で大幅に遅れをとるため、純粋な走力に関しては一番にはなれない。

 けれど憧れの人が広めた走り方では跳躍力で走力を補うことができるため、直線的で瞬間的な速度においてはどの種族よりも速い。

 脚力に特化しているといったとおり、キック力が強く、力にステータスを振ることで、より高くより強くそしてより速く、動くことができる。


 僕は素早さがこのゲームで一番大切だと思う。


 殴れば当たるゲームなら力に特化した方がいいだろう。

 けれどこのゲームではモンスターが攻撃を避ける。

 かわされる攻撃がいくら重くてもしょうがない。

 素早さを上げて、ウサギの場合は特殊だけれど力を上げて脚力の上昇を図って、敵よりも速くなること。

 敵よりも速いなら攻撃を当てることは大分楽になるだろう。


 ウサギの獣人を選ぶのはいいとしよう。


 次はケモノ率だ。


 ケモノ率は30%から70%まで選ぶことが出来る。

 30%は手足の先に体毛がついて頭頂部にケモミミ、お尻に尻尾が生える。

 70%は指や身体の格好が人に近いだけ。肉球あり、ケモノマスクのフルフェイス。


 ケモノ率が低い程器用値と賢さが高くなり、高い程器用値と賢さを除いたステータスが高くなる傾向があるみたいだ。


 あまり生産には手を出す気はない。

 器用値と賢さは捨て置いて、ステータス重視でいこうか。

 ケモノ率70%!


 配色……紅!


 僕は鏡に映る姿を見てほぅ……と息を飲んだ。


 175㎝程の背丈。

 後ろへと伸びていく2本の長い紅いウサミミ。

 ウサギの顔は予想よりかっこよかった。

 血のように紅く光るウサギの目は輪郭が少し角ばり険がある。

 お尻には丸い短い尻尾がある。

 タッチパネルに表示されるモデムを動かして確認すると全身が真っ赤だった。


 すらりとした指先から肘。

 丸い肩から首の付け根は角度の大きなV字。

 ふわっと膨らむ胸部と背中。

 くびれたお腹の下から足の付け根。

 膝上からほそりとした足を通り指先まで。

 覆う紅い体毛は柔らかくてもふもふ。


 ん? ふわっとした胸?


 触ってみるとふわふわ。

 あ、これ、体毛だ。


 アバターの欄を見てもちゃんと男になっている。

 大丈夫。


 手を握っては開いてを繰り返し、力の入り方を確認する。

 軽くかかとを地面から離し、その場でトントンッと跳ねる。

 そして少し足に力を込めると高めに跳ねる。

 3m程の高さまで身体が持ち上がる。

 思ったよりも高く跳んだ。

 天井を目指し、さらに足に力を込める。

 太ももが膨らむ。

 まだまだ細い太ももは、ダイコン程度の太さから冬瓜並みに太くなる。

 僕は力を解放した。

 風を斬る音が聞こえる。

 5mも跳ぶと跳躍力も限界なのか速度が遅くなり、天井に届くことなく僕は地面へと戻っていった。

 天井は遥か彼方。

 天井はどれほど先にあるのだろうか。


 境界の見えない白い部屋。

 僕はゆっくりと先へ歩くことにした。


 視界に映る3本のバーの下、四角いマークがある。

 僕はそれに向けて手を伸ばしタッチ。

 目の前にスマホが降りてきて宙に浮かぶ。

 僕は右手でつかむといじる。


 初めに出てきたのは名前の入力欄。

 僕はいつもゲームをする時に使う名前【クリムゾン】を入力。

 他に使用者がいたのか登録出来なかった。

 ゲームの開始が遅かった弊害だ。


 しょうがないので、色々な単語と合わせて入力。

 結局、決まった名前は【クリムゾンクラウド】。


 少し長い。

 たぶん人からは【クリム】と呼ばれるだろうし。

 あー、【クリーム】とか【お菓子】とかも呼ばれるかも。

 いや、まぁ問題はないか。


 僕はスマホをいじり各項目を一応確認した後ステータスポイントを力へとふる。

 なおステータスを極でふったところで、元々各ステータスに1ずつ基礎値がふられており、レベルで倍率がかけられているため、動けなくなるなどの不具合が出ることはない。


 最後に僕はもう一度跳躍し、その場を後にした。

 6m程跳ね上がることが出来た。

 やはり天井には届かなかった。

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