36、上の空の夕ご飯
「母さん、何か手伝う事ある?」
「じゃあ、お皿並べてくれる?」
「はーい」
頭がまだ戻ってこない。上の空で手を動かし、食卓に食器を並べていく。
ヘイトをどうやって稼ぐのがいいのだろう?
サモナーとしての成長を考えるとプレイヤーを呼べないのが問題。
追い込み漁みたいにエリアの端へと押しやれればいいのだけどそれも難しそうだ。
サモンモンスターの種類を増やすためにはその種類のモンスターを1体だけでも倒せばいいとは分かっている。
1体だけでいいのは救いだな。そこだけは優しい。10体とか言われたら絶望だ。
「何か悩んでる?」
「ちょっとだけ。まぁ、ゲームなんだけどね」
「あー、悩ましいわよねぇ」
「ギルドの装備が強すぎてモンスターが現れないんだ。それを外すと今度はあっという間に群がれて、ステータスの低さで死ぬんだよね。そんなこんなで草原のモンスターを倒せないんだ」
「そう。それなら林のクモとかがいいかも。私の方はあれ嫌いなのだけど、巣を張っているし、そこからなかなか動かないから倒しやすいと思うわ。仲間に出来たら草原のモンスターを罠にかけられると思うし、いいんじゃないかしら?」
「クモ! 欲しいと思っていたヒモ問題も解決できるし、すごいいい!」
「毛を飛ばして毒とか麻痺とかをばら撒いてくるから気を付けてね」
「なんか強い……。母さんってどこまで進んでいるの?」
「まだ第2の町くらいよ」
「早い!」
縛りプレイみたいな事をしているから同じくらいに始めた母さんにまで遅れを……。
「父さんの事も忘れないでくれよ」
「あ、うん」
「父さんはな。ヒューマンのファイターだ!」
ヒューマン。そういえばそういう種族もいたな。
「珍しい……」
「ヒューマンが珍しいとは……と思ったが、本当に獣人が多かったな。見かけるプレイヤーがほとんど獣人だから父さんは驚いたよ。ヒューマンは時代遅れか何かなのかい?」
オーバーなボディランゲージをしている父さんに曖昧な顔を向けてしまう。
「そうねぇ。最大手のギルドが獣人特化だから、そう見えるだけかしら?」
「器用貧乏というか、特化し切れないのが、あまり魅力に思えないんじゃない?」
「そうかそうか。父さんが頑張ってヒューマンの復権をしようじゃないか!」
「大変だと思うけど頑張ってね」
僕自身が獣人至上主義だし、あまり勧められない種族だから、曖昧な表情しか浮かべられない。
マイナー職、難易度ルナティックのサモナー職が何を言っているんだとなるものの、これはあくまで事前に調べて、勝算ある上での選択なのだ。
考えナシの選択じゃないから何も問題ないと言いたい。
「端末が1台だし、同時間帯にログイン出来ないから手伝えないの。ごめんなさいね」
「まぁ、頑張るから応援してくれよ」
「父さんは今どの辺り? 僕はサモナーだし、のんびり進行だから抜かされてそう」
「とりあえず第一の町でクエストを進めているな。町の人と話をしてみるとけっこう面白くてな」
「あまりそちらの話を進める人がいないから面白そうだね」
「え? これもマイナーなのか?」
「プレイヤー主催のイベントが栄え過ぎて、運営主催のイベントはあまり見向きされない感じかな。初期に比べたらイベントは多いんだけど、プレイヤー主催のイベント特典に比べて賞品がショボいんだもん」
「まぁ、でも初心者には有り難いイベントではあるのよ? 張り合う事もないから、バランスブレイカーにもなる事もないしね。武器ドロップ率とかゲーム内通貨Yの取得量が上がったりするのがいいわね。生産上位のプレイヤーメイドの武器の方がステータスが良かったりするから微妙なだけでね」
「あ、そういえば生産スキルの解体使わない場合、素材がメインだけど武器とかお金も手に入るんだ。忘れてたよ」
「解体?」
「生産スキルがあると自分の手で魔物を解体出来るんだよ。欲しい素材を1体から確実に採る事ができるから今のメインはこっちかな。僕は年齢制限で出来ないけど、ギルドに委託もできるから、何とかなっているかな?」
「なんか難しそうだなぁ」
テン子様は自分で全部解体していたから、僕も獲物は全部解体しないとって思ってた。
僕の場合は依頼をしないと解体出来ないんだから、お金とか色々飛んでっちゃう。
ドロップをする様にして、ドロップしない欲しい部位があったら、初めて解体を依頼するという順番の方がいいね。
「難しいよ。マスクデータが多すぎて、王道はないし」
「そうね。今は獣人種が有利でも、今後もそうだとは言い切れないわね」
カニは……調理だよね? もしかしてカニも解体できないとかあるのかな?
解体ができるかどうかで、調理ができるかどうかが変わる可能性があるよね。
生産志望の未成年ってけっこう不利なんじゃないかな……。
「お? それはヒューマンを諦めなくてもいいってことか?」
「まぁ、そうね。ギルドのバックアップとかを考えると斜陽の種族だけれども、それが絶対というわけではないから」
「周囲の人の手助けが少ない分、冒険という要素が強くなって、攻略サイトを見て遊ぶ様な人よりも、しっかりと楽しめるかも」
まぁ、でもゲームとはいえ未成年が血に慣れすぎるのはダメという判断は仕方がないか。
別に木工や鍛冶などであれば生物を避けて生産を行う事はできるか。
料理は色々キツそうだけど、対応できる範囲でも出来るといえば出来る。肉を自分で処理できないのは不便だけども。
「なるほどなぁ。ちょっと頑張ってみるか」




