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33、デスペナ

 あ、これ死ねる。というか死んだ。今死んだ。


 素の能力の低さがすごい。

 装備でどれだけ上げ底していたのかを思い知らされる。

 スノー達と戦った時の様に体が動かない。跳ばない。跳ねられない。


 武器という認識で手甲を振るおうとしても体が追い付かない。


 装備を外してすぐに出せなくなったと見るや、先ほどまで用心して出てこなかったモンスターがどんどん襲い掛かってくる。AIのレベルどうなっているんだろう。

 鬼だ。鬼がいる。ここの運営に鬼がいるよ。間違いない。


 テルの奴、どうやってここをソロで歩き回っているんだろう?

 デスペナ食らったとか言ってたっけ。歩けていないね。

 ジョブのためとはいえ気が狂っている。僕も人のことを言えないか。


 防御が低くなったからワンチャンを狙えるとみて動いたのだろうか? AI賢過ぎないかな?

 鳥が上空から強襲してきたり、犬が足を狙ったり、1番厄介なのはネズミか。

 あいつら動きが速いし小さくて狙いづらいし、他のモンスターが逃げるのを補助したりかく乱してくる。

 なんで連携しているんだよ。傷ついたら逃げていくからアチーブメントも稼げない。

 狙いが1人だからか動きが読みにくいのもつらい。


 前回だったらサニーに向かっていく連中を1匹ずつ襲いかく乱するという手法でいけた。

 でも今回は僕1人だ。緩急をつけたりフェイントを交えられたり、数匹まとめてかかってきたりと対応が追い付かない。

 1か所に落ち着くと攻撃に威力が出ないものの、反撃が怖いのか遠巻きに威嚇などを繰り返し、士気の喪失を狙ってくる。勝てる戦いしかしないというのが見えている。


 確かにこれは戦闘不得意な人はバカンスするしか出来ないな。

 リアルマネーをゲーム通貨に換えてゲーム内施設を楽しむっていう人が出るのも仕方ないのか?

 お金のある社会人でバカンス気分はそんな事しているって聞いたけど、運営方法が頭おかしい。


 スキルや仕組みを使えばけっこう楽に進めるとはいえ、スキルなしソロで行くと鬼畜仕様ってつらい。


「ウサギがたぬき寝入りをしてどうするんだい? クリ坊や」


 目を開けて隣を見るとほっかむりを被ったおばあちゃんウサギの獣人がいた。

 元は赤毛だっただろう白い体毛のツヤは鈍く、過ごしてきた年月を感じる。

 暖炉の前で安楽椅子に腰掛けながら編み物をしているのがとても可愛い。


「あははは……」


 僕はどうやら布団に入っているようだ。

 テルが言っていた空間がここなのだろうな。

 よく見るとおばあちゃんの足元には小さなスライムがいた。


「クリ坊や。私達の強みはなんだい?」


 おばあちゃんの目線は手元の編み物にあるままだ。

 強みか。強み。


「足ですか?」


 おばあちゃんはゆっくり目を閉じると首を振った。


「足ならチーター連中の方が速いよ。短距離で直線じゃ私達は弱い」


 何だろう?


「私達の強みは群れである事。1人が狙われても他の人が生き残れればいい。

 でもそれは私達だけの場合だ。私達はサモナーでもあるんだ。相性の悪いところに初めから行くんじゃないよ。クリ坊なら川原がいい。あそこのカニは硬いけれど、クリ坊なら倒せるだろう?」


 カニか。それなら逃げられる心配も少ないし、何より見つけやすいだろう。

 装備をつけていても逃げられる前に見つけて倒せる。


「ありがとうございます!」


 視野が狭くなっていた。

 草原のように隠れる場所が豊富で、モンスターが小さく素早い場所は初期に戦うにはつらい。

 範囲攻撃で逃げられる前に倒したりしないといけないのだから、現状は厳しい。


「わかったらお行き。出口はあそこだよ。ここは長居する場所じゃないからね」


 おばあちゃんの陰には大きな狼が暖炉に当たって丸くなっていた。

 天井を見ればコウモリがいる。梁の上をリス? だろうか? が座っている。

 コッコッコという声を聞けば床を突きながら歩くニワトリの姿。


 このおばあちゃん、すごい強そう。


 初期フロアに選ぶべきじゃない場所を選んでデスペナを食らった場合、こういうサポートを受けられると考えたらそれでも前に進める人がたくさんいるだろう。

 でもAIはどうなっているんだ……。プレイヤー1人1人にこんなAIを付けてたらサーバーが終わらないだろうか?

 脳死ですごいすごいって言えばいいのだろうか? すごいすごい!


 端末をでかいコンピューターとして捉え、CPUとかガン積みしている?

 スーパーコンピューターみたいなモノだったりするのだろうか?

 端末内、プレイヤーの周囲を流れる液体はCPUを冷やすために使われていて、ちょうどいい温水になる様に熱湯を水割りする形で使っているとか言ったらすごい。


「ぼっとするんじゃないよ。ここにあまり長居する場所じゃないんだよ」


 強い口調で出口に向かえと促される。居てはいけない理由があるのかもしれない。

 運営的に負荷がかかる分野だとか、そんな事情がありそうだ。

 個人のデータはその端末に保存されていて、担当AIもそこにいるからここで動かれるとメモリを食って辛いとか。


「わかりました。アドバイスありがとうございます。またお世話になると思いますがよろしくお願いします!」


「お世話にならないように気を付けな。もう来るんじゃないよ」


 おばあちゃん、けっこう口調強いなぁ。こういう仕様なのだろうか?

 カルマ値とかでおばあちゃんのタイプが変わるとか裏設定ありそうだ。

 選んだジョブによって変わるのは確定じゃないだろうか?


 所持している装備とかでもパターン変化する?

 プレイヤーの脳波の計測とかで、空賊タイプとか好々爺……爺でいいのだろうか? タイプとかになったら面白そう。

 言動とかってログに残るんだろうか? ここ最近の言動がやばかったからこのタイプのおばあちゃんになったとか?


 わからない。でも考えられる。


「行ってきます」


「頻繁に来るんじゃないよ」







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