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32、心の棘

「くーりむっ! やっぱ寂しくなった?」


 街のある方を見ると白い光と共に赤いライオンの女獣人と白いキツネの女獣人が出てきた。

 こうやって見るとアマゾネス的に改造された装備が少し扇情的だ。

 ……ギルドのバックアップがあると装備のランクアップが早いよな。


「違う違う、ちょっと紹介」

「そこの人? はっ! もしや彼女とか!」

「ふつつかものじゃが」「違います」

「っくはは! ノリいいね!」


 サニーは大きく口を開けて笑う。

 サキは本来クラスのリーダーとかクラスカースト最上位にいるタイプだよな。

 いや、クラスカーストはどこにいても大して変わらないか。


「ジョークは乗れる時に乗らないとちょっとじゃな」


 やはり適応力高めだな。見た目からしてここでは初心者だがどこかで名のあるゲーマーかもしれない。

 つい最近どこかのゲームがサービス終了したとかあっただろうか?


「で、クリム。この人誰?」

「知らないエルフ」

「おーいっ!?」

「石がぶつかって絡んできたのじゃさん」

「うちのクリムが申し訳ございません。何か失礼な事をしていませんでしょうか?」

「おかんかーっ!?」

「おかんです」

「違います」


 ここで本物が出てきたら笑うがさすがに出てこない。

 同一端末でやっている以上、同時ログインは出来ない。

 親に見られながらしていたら恥ずかしい事この上ないので、これはメリットだな。


「あー、まぁ、メッセージで伝えた通り、パーティ探しに困っていた人みたい」

「恥ずかしい話そんなところじゃ。獣人優勢とはいえエルフだとなかなか組めぬとは思わんかったのじゃ」


 うむうむと頷くのじゃエルフ。リアクション豊かですごい人に好かれそう。羨ましい。

 そこまで種族で不均衡になっているのだろうか? 種族的に獣人はむしろ欠点多い方だろう。個人相手なら狙い撃ちして対策が練りやすい部類だ。

 まぁ、ギルドに所属していたら試作品とか経験値稼ぎで作った装備とかそういうものが格安で購入できるから、所属できるできないが大きくなるのは否めないか。


「あなたなら私達としても大歓迎! 魔法特化なのかな?」

「そうじゃな! 魔法スキルが大好きでの。ここの魔法は前にいたところに比べてアレンジの幅が広そうで楽しそうなのじゃ!」


 ニャハハという擬音が付きそうな感じにエルフは笑う。

 ゲームを本当に楽しんで遊んでいる人なのだろう。

 楽しんで遊べる人はいつ見ても気持ちよさそうだ。


「前にいたところ?」

「もうサービスが終了してしまったので気にしなくてもいいのじゃ」

「そちらで付き合いが会った人とこちらで遊ぶ約束とかは」

「してないのじゃ。世の中一期一会。付き合いは持ち越さないすぎじゃな。

 それに1人に声を掛けて他はなぜ声をかけなかったんじゃ! と言われても困るしのぅ」


 エルフはムムムと腕組みをしながら語る。

 感情表現が豊かでやっぱり友達とか多そうな人だ。一緒にいて心地いいし。

 前のゲームでもさぞかし友達が多かった事だろう。


「長く続く縁はいいけれど、妙にしつこい人は面倒だな」

「のぅのぅ。クリム殿。なぜワシをそこでじっと見るのじゃ」

「その胸に心当たりがあるのでは?」

「さてのぅ。ワシちょっとわからんのぅ。クリムさんや、ごはんはまだかのぅ?」

「おばあちゃん、ごはんは3年前に食べたでしょ? ボケるには早いよ」

「そかそか3年前に食べたんじゃ……ワシすごくね? 3年食べずに生きとるよ」

「だっておばあちゃんもう死んでいるもの」

「そかそか死んでいるんじゃったか、そりゃご飯も食べずに……酷いのじゃ!」

「クリム君……Sなんだ……」

「……はっ! 本性が漏れた……。いや違う違う、違うよ!」

「ふーん?」


 カナ……違うスノーがジト目で見てきた。なんか興奮する。

 ……特殊な性癖が発症しかけた。このエルフ、僕のテンポを関西へと変えていく!


「じゃ、じゃあ、僕はこれで……」

「クリムー。旗色が悪くなったからって逃げちゃダメだよ?」

「逃げるんじゃない」

「違う、これは戦略撤退であり、勝利への布石。これは逃走ではないんだ! アディオス!」


「こんなクリム初めて見た……」

「そうなのじゃ? 愉快な男じゃと思っていたのじゃが」

「暴走するガリ勉だと思っていたよ、私」

「あれも1種の暴走じゃな」

「普段に比べてちょっとトゲがあった気がするね」

「メンタル的にぐらついていたのかもじゃ」

「あー、思い詰めてぐらついたのか。何を思い詰めているのやら」


 ウサギの耳って音がヨクキコエルンダナー。


 きっと今僕をアニメ化したら涙をこぼしながら原っぱに駆け込んでいるような感じになるだろうな。


 実際、精神的にぶれていたと思う。崩れていた。変な力が入っていた。

 あのエルフさんのおかげでその力が妙な方に暴走して若干のトゲが出たものの抜け落ちた気がする。

 そう考えるとこの出会いはとても良かったのかもしれない。


 そういえばあのエルフさん、名前を聞いてないや。まぁ、いいか。後で聞けるだろう。


 にしてもこうして原っぱを走っているというのにモンスターに出会わない。

 レベル差とか一定以上の強さがあると出会わなくなるとかそういうのがありそうだ。

 この調子だと戦えるのはボスだけになってしまう。ヘイトスキルが重要な要素になるな。


 どうすれば戦えるだろうか。

 能力値を下げる……装備を外して? それで勝てるだろうか?

 格闘オンリーで血赤の補正もかければいける? わからない。


 死んだ時のデメリットは一定時間のステータスダウン。

 サモナーだとただでさえステータスが低い。

 ステータスが装備の補正がほとんどを占める現在大して影響はないか。


 死ぬことを覚悟して装備を外して戦う。

 そもそもダメージを与えられるかがわからない。

 無駄死にする可能性は高い。


 最低限の装備にする? 手甲だけとか。

 それなら行けるかもしれない。

 防御が薄いから一撃が痛いのが難点だな。


 本当にこのゲームはパーティー前提難易度が多い。

 パーティーが推奨過ぎて辛い。ヘイトスキルあったところでそれは満遍なくケンカを売っているに過ぎないし、取得できるスキルの数は限られているから1人1役を徹底しないと能力不足でさばききれない。

 コミュ力が問われるゲーム過ぎる。


 もしかしてそれを狙っている?

 コミュ力が低い人は初めの街から出られないから辞めていくとか?

 声だけ大きいトラブルメーカーは強くなれないし、有名にはなれないみたいな。

 声の大きいトラブルメーカーが1番ゲームを衰退させるだろうし、あまりそういう人に居ついて欲しくないとか考えがありそう。


 このゲーム、役割を分担して行動した方が圧倒的に強くなれる。

 アチーブメント集めは1匹倒せば終了できる時もあるし、そんなにゲームに掛かり切りにならなくても楽しめる。だからログインしている時間は短くてもしっかり強くなれる。

 戦闘の仕方を工夫し自分が第一発見者なジョブを見つけるとかも出来る以上、戦闘をやり込みたい人も満足できる。

 戦闘の仕方の工夫の段階でパーティー推奨になるのが大きい。


 生産を楽しみたい人とかゴードさんの様に色々体験し試している。

 それにしてもシステムの方はどうなっているんだろう?

 基本の鍛冶の流れや進歩の歴史などを網羅させてシステムにインプットさせているのかな?

 どれだけ膨大なデータ量になるのだろう? AIが記録したり判断してどうなるのか予測演算させているのかな? 分からないな。


 もし下位AIがプレイヤーの行動を記録して上位AIがデータから判断してシステムをアップデートしているとしたら面白い。

 情報の記録であれば端末単体でも出来るだろうし、複数の端末で作り上げられたネットワークを駆使したら上位AIが世界を創りあげるのも簡単?

 何ていうか出来るのだろうか? 分からない。この世界がどういう仕組みで動いているのかはそこまで重要ではない。


 仕組みを考えるのはいい。なんだか思考の方向性が定まって落ち着く。


 考えるよりも感じて、体を動かして、どうしたいかを思い、進みたい方へ進め。

 手を伸ばせ。星へと手を伸ばせ。見ているだけではつかめない。考えるだけではつかめない。

 今は草原のモンスターを倒す事が重要だ。デスペナルティも大した事はない。


 僕は装備を手甲を除きインベントリへとしまった。


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