31、石を投げたら出てきた
ログインしましたっと。
今日はどこに行こうかな。草原はあの討伐で粗方狙っていたアチーブメントを入手出来た。
ドロップを解体屋さんに任せてしまったからお金や素材が手元にない。
あの別れ方の後で自分の取り分を求めるのは何だか嫌だ。だから入ってくる予定もない。
ソロで討伐したわけじゃないから召喚できるモンスターも増えていない。
草原でモンスターが倒せるのが分かったけれど、サニーがいないからモンスターと戦闘が出来るか怪しいのがきついな。
でもソロで倒さないとサモナーとして強くなれないし、召喚できるモンスターを増やすためにはソロをしないといけない。
連戦をするためにはヘイトを集めるスキルが欲しいな。
襲われないと見つけられないのはけっこう面倒だ。
索敵スキルでもいいけれど、奇襲をかけるよりもリンクしたモンスターをまとめて狩りたい。
今なら装備ブーストのおかげで格上を面白い様に狩る事が出来る。
小石とかをたくさんぶん投げてモンスターに当てれば周囲のモンスターを集められるかな?
一当てしたら大概襲ってくるだろう。石をぶつけて黙っているようならそれはモンスターじゃない。
「そいっ」「あいたっ!」
……。
「すみません!」
そりゃ、僕1人が草原にいるわけじゃないよな。
草むらから吹き出しに泣き顔の顔文字を書いて浮かべた女の子が出てきた。
耳が長い。エルフ耳だ。ケモミミ大隆盛のこのゲームでは珍しい……。
魔法特化で物理は不得意な種族だ。多彩で強力な魔法を使う賢者などはこの種族でないと出来ない。
「なんや、兄さん。耳ばかり見て。エルフが珍しいんか」
「あ。すみません。そうですね。獣人を選ばないなんて変わってますね」
輩だ。見た目は清楚一直線みたいなのにすごい輩だ。
「そこや! そこがおかしいんや! 何でエルフが少ないんや! ヒューマンもドワーフも何でも選べるんやで!」
「それはまぁ。フォロさんがやっているギルドがすごい栄えているからではないですか?」
「バカンス気取りにアイドル志望! まともにゲームを楽しもうというプレイヤーはおらんのか!」
「僕は楽しもうとしてますよ?」
「ほーぅ。そうかそうか? お主、ジョブはなんじゃ?」
あ。この人。輩じゃなくてロリババアを演じたいタイプのロールプレイヤーだ。
「サモナーですね」
「サモナーじゃと? なるほど……。レベルが上げられなくてやけになって石を投げたのじゃな!」
「違います。装備があるのでこの辺りの敵を集めてまとめて倒そうとしていたんですよ」
「……」
「……」
出方が読めない。なんか頬を人差し指でかきかきし始めた。目線がさまよい冷汗を流していそうな雰囲気だ。
それにしてもこの人何のために出てきたんだろう?
文句を一言言いたかったとかだろうか? それとも何かの八つ当たり?
「えと……それでは僕はモンスターを倒さないといけないので」
「待つのじゃ!」
「石をぶつけてしまった事は申し訳ありません。お互い不幸な遭遇をしてしまいましたが、互いに大して大きな損害とかもありません。僕はこれから召喚できるモンスターを増やすためにソロでモンスターを討伐しないといけないのでこれで失礼させていただきたいと思います」
「お主はどれだけワシから離れたいんじゃーっ!」
すごい涙目でポカポカしてきた。同じくらいの身長だというのが残念具合を上げている。
可哀想な人だな。
「ワシは悲しい! こんな美人を1人置いてどこかに行こうなんて!」
「ゲームだからデフォルト全員美人ですので」
「正論を言うなーっ!」
「それじゃ僕はやる事があるので」
「この人でなしーっ!」
「ウサギですから」
「ばかーっ!」
さてと。それでは当初の予定通りモンスター狩りをしよう。
このフィールドで出るのは鳥に野犬にネズミ。そしてボスの牛。
鳥がハトにカラス、スズメ。モンスターというか野生動物だよな。
「無視すんなーっ! このウサギ野郎ーっ!」
「人をウサギ呼ばわりとは酷い人ですね。あ、エルフでしたか。
やはりエルフの森は燃やさなければ」
「燃やすなーっ! さてはお前、ツイッターやっているな!」
「では燃やさないので退散しますね」
「待って待って!」
「やです」
「即答! そのツン対応なんか癖になってきた!」
「僕はあなたが非常に面倒に思えてます」
「兄さん、兄さん、そんな事言って頬が緩んでないかい? 兄さん、ドSじゃろ!」
「はい、GM? そこのエルフがしつこいんですが」
「うぇいとうぇいと! じゃすとあもーめんと!」
なんだろう。彼女はボケ体質なんだろうか。
まさか僕がここまで乗せられるとは……。
恋愛には絶対進展しない親友エンドするタイプの人だな。
間違いない。
「なんか冷たい目で見られるのが気持ちよくなってきた……!」
「そろそろ気持ち悪いです。いえ既に気持ち悪いですね。すみません」
「待って! それを謝られるのはとっても心外なんじゃが!」
オフラインゲームでもないし、色々な人に出会うのは当然の事だ。
目的外の人と話すのも実際悪い事ではない。
何かあった時そういった繋がりが解決する事もあるのだから。
それに僕にはコミュ力が足りない。
今はテル達が居てくれるから何とかなっているが、将来はそうもいかないだろう。
将来仕事をする時、テルがずっと傍にいるなんてわけないしな。
「なんか生温かい目になったのぅ。まぁ、よい。
のぅ! わしのパーティーメンバーになってくれないか!」
「では僕は自分の用事があるので」
「瞬っ!」
「僕は先程も言いましたが、サモナーなんですよ。ここで必要なアチーブメントは仲間たちと稼いだし、召喚できるモンスターを増やすためにソロで討伐しないといけないので、パーティーにはなれません」
「がふっ……! まさかガチだったのか……!」
「僕はウサギですけどサギではないので」
「すごいウサギ推すんじゃな!」
「もふもふいいじゃないですか。あのつぶらな瞳とかもうかわいいじゃないですか。灰色の毛皮もいいし、白もいい、ファンタジーな赤ももちろん好きですよ? 赤ウサギとか言ったら実際は茶色よりですけど、ウサギのイメージカラーに赤は付き物だと思いますね。白がポピュラー? ファンタジーならという話ですから。えぇ。動き方もぴょこぴょこした歩き方がユニークで可愛いですし、走ればとても速い。多産や万年発情とか色々性的なシンボルにもされやすいですが、それが出来るだけの能力が考えるととてもすごいですよね。それだけエネルギー効率よく出産という行為に当たれるわけですから。様々な種類のウサギが世界中で生まれ、そして食べられ、今生きているのは数少ない生き残りなわけです。そこには生存戦略のすごさが見えるわけですよ! ネズミ? あぁ、まぁ、そういう意味ではネズミの方が上かもしれませんね。でもだからといってウサギのすごさが変わるわけではないのです。月のシンボルにも選ばれたり」
「わかった! お主はウサギが好きなんじゃな!」
「あ、そこそこ好きです。1番は犬ですね。ゴールデンレトリバー可愛いですよ?」
「そんだけ語るんじゃからウサギにせんか!」
「すっきりしたんでそろそろ行きますね!」
「わしがもやっとするんじゃ!」
「わかりました。面白かったので僕のフレンドを紹介しますよ。エルフというと魔法アタッカーで?」
「うむ! インテ特化じゃ!」
性格とかも問題なさそうだし、ここまで弄っても怒らないって考えるとけっこう出来た人だろう。
少なくとも僕よりも。なんか泣けてきた。
コミュ力も十分あるし、そこそこムードも作って明るくしてくれそう。
魔法アタッカーって考えるとナカと役割被りそうだけど、純粋アタッカーと考えたら大分いい。
サキはヘイトを使った集団戦向き。ナカは幻術とかで自滅させる様に仕向ける事に向いているから集団戦向き。
そして魔法アタッカーも集団戦で一気に掃討するのに向いているからちょうどいい。
「OK。じゃあ、ちょっと待ってて。今連絡を取るから。多分近くにいるしすぐ合流できると思うよ」
「お。おぉー! お主に声をかけてほんとよかった! 一瞬……! いや、何度もダメかと思っとったが、わしの目に狂いはなかった! ほんとにありがとう!」
「はい、GM」
「のーぅっ!」
「ジョーク」
「お主、声色を変えずにやるからほんとに怖いんじゃ……!」




