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29、友人パーティーとの別れ

すごくご無沙汰して申し訳ありません。今後はこちらも更新頑張ります!

「おつかれっ!」


 FB(フィールドボス)の討伐完了のアラームが鳴り終え、FBのわき腹から手を引き抜くとサニーが言った。

 晴れ晴れとした笑顔は底抜けに明るく感じた。

 スノーはサニーの後ろでほっと一息ついていた。


「お疲れ様」


 僕は戦闘を終えたので呼吸を落ちつけ日常モードに戻した。

 FB討伐までが一区切りになる。ここからどうしようか?

 ここから先はまた別行動だろうか?


 血赤の補助も効果的だったと思う。武器の性能だけで戦えたわけじゃないだろう。

 普通に動くよりも血赤の補助ありきの方がよかった。

 今回の戦闘でも強く実感できた。


 それとサモナーというジョブの仕組みとしてサモンモンスターの種類を増やすためにはソロで戦わないといけない。

 プレイヤーと共同でモンスターを倒してもサモンモンスターを増やせないのだ。

 だからこのままパーティー行動をすればサモナーの能力を無駄にする部分が出てきてしまう。


「この牛どうする? 解体屋さんに持っていて焼肉する?

 今から次のフィールドとなるときついと思うしさ」


 サニーはささっとインベントリに牛をしまいながら言った。

 インベントリの中は時間が停止しているため、素材はすぐにしまわれる。

 熟成などを考える場合はインベントリの外に出して放置しないといけない。

 ログアウト中も外においておきたいなら、ギルド空間でないと、誰かに持っていかれてもしょうがないのだ。


 解体屋。その存在はとても便利だ。

 解体専門のギルドがあり、段階毎に値段が変わるものの、プレイヤーが行っているものであるにも関わらず、24時間対応しているというところだ。

 ただ対応するプレイヤーによって処理の速度や仕事の質が大きく変わるので、貴重な素材はプレイヤーを指定して頼まなければ後悔するだろう。


「いいと思うよ。それじゃ、街に帰ろっか」





「子牛の解体だな。どのコースだ?」

「ビギナーのお肉コースでお願いします」


 ビギナーのお肉コース。

 大きなお肉をもらう代わりに他の部位を全て解体屋に売るという、お金をあまり持っていない初心者向けの物納形式の支払い方法だ。

 ちなみにお金コースもある。全ての部位を解体屋引き取りでお金をもらうコースだ。

 インベントリのモンスターはお金コースにしよう。

 いくらになるだろうか……。初期のモンスター素材だから売却益は期待できない。

 鳥肉や羽毛なら需要があるかもしれないが、他の部位は期待できないだろうな。


「あいよ。ちょっと時間がかかるから名前だけ控えさせてもらうぞ」

「サニーの名前でお願いします」

「あいよ」


 受付のいかつい狼頭の獣人が名前を近くのタブレットに入力すると番号札をくれた。

 番号札を見ると『35』と書かれていた。

 僕がサニーに番号札を渡すと、サニーは不思議そうな顔をしていた。


「処理が終えたらその番号がこの店のカウンターページに記載されるから7日以内に来てくれ。

 それ以上はアイテムの保管はしないから注意してくれよ。

 番号札と引き換えでアイテムを譲渡するから、番号札を捨てるなよ?」

「ありがとうございます」



「なぁ、クリム。どうしてアタシに番号札を?」

「サモナーだからソロプレイをしないと、サモナーとして成長が出来ないんだ」

「……それって」

「僕は1回このパーティーを離れるよ」


 サニーは歯を食いしばっていた。スノーは少し口が開いて放心していた。

 彼女達はずっと一緒にパーティーを組んでいたかったのかもしれない。

 でもそれは僕の求めるゲームに届かない。


「大丈夫。1回って言ったでしょ?

 サモナーとして成長していかないと足をこの先引っ張っちゃうから離れるだけだ。

 またいつかパーティーを組んで遊ぼうよ」

「わかったよ。クリムはいつも1人で決めるもんな」


 やっぱり怒られたか。でも目指したいモノがある。だからここは譲れなかった。


「ごめんね。この世界で僕はやりたい事があるんだ」


「何をだよ」


「トロフィーを打ち立てる事」


 自分に自信が持てるように。自分が1人前の何か誇れるモノがある人物であると認められるように。

 中途半端でやりきれない、多少の成績を残しても何かをやり切った感がない、そんな煮え切らない感じで僕は僕が大嫌いだ。

 死力を尽くしてトロフィーを勝ち取りたい。ヒーローになりたい。自分で自分が認められる人物になりたいのだ。


 ほどほどに動いて何かを手に入れたところで、こんなもんか、くらいの感慨しかない。

 ほどほどで手に入れたモノでは僕は自信が持てない。

 自信もなくて、なんで人に好きだと言えようか。

 中途半端な自分に、自分が幻滅しているくせに、そんな幻滅している自分を相手が好きになってくれたとして、それで自分は満足できるのか? 僕は出来ない。


「よくわかんないけど、それが重要な事なんだな?

 わかったよ。何か手伝える事があったら言ってくれよ。

 アタシらは友達なんだから多少なりとも手は貸すからさ」


 サニーはプンプンと怒りながらもそう言った。

 言うのが遅かった事への怒りだけだろうか。

 

「ありがと」




 このゲームのいいところはアチーブメント制であることだ。


 アチーブメント。成し遂げたことに対する報酬。

 同じ事を繰り返しても、それで得られるものは素材だけ。成長はない。

 この制度は成し遂げた事のみ評価する。自分に出来た事だけを評価する。


 僕は自分に自信がない。


 おどおどはしない。だが自分という存在を認めてもいない。

 もし他の人が僕の体を使っていたなら、その人はもっと上手い事人生を渡り歩いていたと思う。

 だがここにいるのは僕なのだ。だから僕は僕が出来る事を上手くやっていかなければいけない。


 自身が歪である事はよくわかっている。

 いい人だけど変人。地頭はいいけど人付き合いが不器用。

 結局のところ、僕は前を見て歩けていない。脇道にいる人に気をとられて、進む道を見失っている。


 人は人。自分は自分。

 人が出来る事は自分の出来る事ではない。その人が出来る事なのだ。そっくりそのまま自分の出来る事となるわけじゃない。

 自分の出来る事だけが自分の出来る事なのだ。


 アチーブメント制は自分の出来た事を可視化する。

 出来た事が分かればその先に進むかどうかを選べる。

 全て進むを選択するのは時間的に厳しいだろう。どれかを選択して先に進まないといけない。


 このゲームは未成年者の生物の解体を除けばたぶん色々な事が出来る。

 身体能力の不足や素材が不足して現実では出来ない事はあったとしても、基本的に全てできるだろう。

 ここで身に着けたスキルや経験は現実でもある程度は役に立つはずだ。


 そしてこのゲームはアイドル化といえばいいだろうか。

 ネットアイドルとして動くことによって、現実の金銭も稼ぐ事が出来る。

 企業のプロモーションだったり、動画の配信だったりその方法は多種多様だが。


 無駄にしようと思えばいくらでも無駄にできる。

 だが価値が欲しいなら。自身に価値が欲しいなら。

 できる事をやっていくしかない。自身の価値を証明しなければいけない。


 僕は自分の価値を証明し、自信を持ちたい。

 中途半端はいらない。僕は僕の力を使い、どこまでいけるのかが知りたい。

 そして誇れる自分になって、好きな人に好きだと言いたい。



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