25、太陽と雪
あのケモミミはライオンとキツネかな?
モフモフ感のある厚みのある丸い耳がある金髪ときれいな三角の耳が特徴的な銀髪の美少女達。
金のライオンに銀のキツネ。いいじゃん。
「誰かな?」
「声で分かりなさい。クリム? それとも本名で呼ばないとダメ?」
「その声は……なんて呼べばいい?」
サキか。金髪ライオンを見ればサキの面影がある。名前はサニーブライト。
じゃあ、もう1人はナカ?名前はスノーフォックス。
「サニーとスノーでいいよ」
「了解」
「クリムはここで何してんの?なんかすごい装備だけど」
「新装備の試運転にきた」
「その装備どうしたの?」
「強そう」
「テン子さん繋がりでもらったよ」
「「……」」
うわぁ……ってドン引きされた目で見られた。
「クレクレ厨やったわけじゃないからな?」
高レベルプレイヤーから低レベルプレイヤーが物をもらうというとその辺りを想起する。
クレクレ厨は乞食みたくてみっともない。
そもそもだ。ゲームは確かに効率重視でいくのもいい。
だがな。アイテムを集めたり、地道に進めていくのも楽しいのだ。
後発プレイヤーの楽しみは最前線で無双するよりも、自由なプレイスタイルで遊ぶことだと思う。
効率重視でいく最前線で戦闘を楽しむスタイルは時間とお金に余裕のある貴族の楽しみなのだ。
残念だが僕には最前線は遠い。後発組であり、時間はともかくそこまでの課金ができない。
「あぁ、うん。そっか」
「信じてるよ。君のプライドの高さ」
「プライドの高さっておい」
「だってねぇ?」
「クリムはやりたくないことはやんないでしょ? 心が汚れるようなことは特に」
「それはプライド高いっていうのかな?」
「「言う」」
言うんだ……。
「まぁ、それは置いといて。クリムッ! 一緒に狩りしない?」
「まだここの世界でろくに戦ったことがないから足引っ張るかもしれないけど大丈夫か?」
「とりあえずやっていけばなんとかなるでしょ?」
「でしょ?」
「たぶん」
「その装備ならほっといてもここで死にはしないだろうし、何も問題ないっ!」
「問題ないっ!」
話に混ざれなくなったナカがサキの真似っ子を始めていてすごく心がほっこりしています。
この気持ちはどうすればいいんですか?
「ふんすっ」
腰に手を当てて仁王立ちしているナカの姿が可愛くて辛いです。
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「じゃあ、アタシがモンスターを惹きつけるから、スノーはいつも通り一掃して、クリムは零れたモンスターを狩っていく流れでいこうよ!」
「うん、わかった」
「わかった」
サキ……いや、ここではサニーと呼ぼう。ここで本名を出してしまったらやばい。
サニーは空へと雄叫びを上げた。
ライオンの固有スキル、咆哮。
自己強化とヘイトアップ、使用者の一定以下のレベルの敵は委縮状態に変える。
ライオンはステータスが全体的に高めだが魔法はあまり得意ではなく、狼がスピード重視ならライオンは力重視の種族だ。
パーティーで壁をするのにおススメの種族だ。
サニーの咆哮に反応して敵意を剥き出しにしたモンスターがわらわらと茂みから出てきた。
咆哮の影響でかモンスターの動きが遅くなっていて飛びかかるような動きをする敵がいない。
奇襲封じにもなって雑魚狩りには本当にいいスキルだな。
「ほっとさ」
サニーはブロードソードを使ってモンスターを弾き飛ばし、少し離れた場所に集めていく。
そのモンスターの上にいつの間にか白い球が浮かんでいた。
「バースト」
凛としつつも可愛らしい声が不意に響く。
白く輝く球は弾け、モンスターは何かに貫かれてその身を赤く変えた。
傷口には透明な……氷? 氷だろうか?
サニーのブロードソードで吹っ飛ばされた時点でスタンしていたモンスター。
モンスターは降り注ぐ氷の雨に貫かれてとどめをさされた。
けれど氷の雨の有効殺傷範囲は狭い。
球から2m離れればモンスターの体表に氷は弾かれてしまっていた。
「今、倒しきれていない奴をやればいいんだよね?」
「うん、お願いっ!」
「お願いっ!」
「了解」
僕はまだ息の根が残っているモンスターに向かって走りこむ。
狙いはスノーに1番近い足の速そうな野犬。
まだスタンが残っているのか、よろよろとしているところをアッパーをかます。
無難に狙いがつけやすいお腹の辺りを狙って放つ。
「一撃か」
「一撃だね」
腰に掛けられている血赤の補正。
制服の補正。
ガントレットやレギング、ヘルムの補正。
組み合わさった結果がうんだのは2つに裂けたモンスターだった。
「ぼっとしてないっ!まだまだ生きてるモンスターがたくさんいるんだよっ!」
「ごめんっ!」
腰は運動の要。
ここを血赤がサポートすることで腰の入った動きが出来た。
背骨を中心とした回転運動。
腕だけの動きでは軽く弱い。体重ものらない。
腰を使い、地面を蹴り、身体全体を使っていく。
威力の感覚は覚えた。
動きを止めてはいけない。もう止めない。
物理で習っただろう。
静止している物を動かすのには動いている物を動かすのよりもエネルギーがかかると。
重い台車を動かすのには体全体を使って押さないといけないが、重くても動いている台車を押すのは足の力だけで十分事足りる。
それに格ゲーで覚えただろう。
一度始めたコンボを敵がとめるのにはそれ相応の技が必要になることを。
羽目技死すべし。
一撃一殺。
山になっているモンスターを殴り、殴った勢いで余ったエネルギーを反動に使い、エネルギーを継ぎ足して、次の敵を殴る。
一撃でモンスターを倒せるから、モンスターを倒しそれでもまだエネルギーが残るから、できる挙動だ。
だがまだ甘い。まだムダが多い。
モンスターの多くは膝下程度の大きさしかない。
それを上から叩き潰すように殴り、地面を叩いた瞬間反動で持ち上がるのに合わせて地面を蹴り次のモンスターに突進し、ヘルムの角を使って頭突きをかまし、その反動を利用して近くのモンスターを蹴り飛ばし進路変更、モンスターが砕け散る程の過剰なキックで運動エネルギー補給。
まだまだ……。
「……クリムってあんな人だっけ?」
「今の見た目だと悪魔っぽいけど、もともと純粋な人だよ?」
「じゅんすい……」
「目的にまっすぐ行っちゃう感じ!」
「まっすぐって恐いんだね……」
「でもまっすぐな方が安心だよ? 何をしたいのかわかるもん」
一通り敵を倒しきると端末がバイブした。
どうやら周囲のモンスターを倒し切り戦闘が終了したみたいだった。
装備に着いた血も端末のバイブと共に消え去った。
なにやら2人が話していたので僕は近づいた。
「終わったみたいだね」
サニーがちょっと訝し気な目で僕を見つめ、スノーは優しい目で僕を見ていた。
「クリムって何かスポーツやってたっけ?」
「特にやってないよ?」
「じゃあ、ケンカ?」
「それして何になるの?」
「……」
「どうかした?」
「すごく動きが手慣れている気がして……」
「自分でやっていなくてもRSOの動画とかよく見ているから、立ち回り自体はある程度頭の中で想定していたからね」
「……そういえばクリムは見ればできる人だった……」
「見ればできるわけじゃないよ? 何をしているかわかるだけだよ。わかれば後は自分の能力でどうすれば再現できるのか考えるだけでしょ?」
「ごめん、クリム。君の言うことは出来そうで普通の人には出来ないことだ」
「認識の問題だと思うんだよなぁ」
能力的にできないはずがない。
けれど出来ないという思い込みがあると出来なくなる。
そんな事柄は非常に多い。
オリンピックの選手でもそうだ。
1991年に打ち立てられた100m走の記録は2008年に破られるまで越えられない記録だと思われていた。
しかし越えられた直後今まで越えられなかった選手が越えるようになった。
選手の認識が越えられない記録から越えられる記録へと塗り替えられたからだと思う。
認識は能力を制限することが多い。
出来ないと思っていたら出来ない。
出来ると思えば出来る(ものもある)。




