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24、石炭運びの代償

 古くは黒いダイヤと呼ばれた石炭。

 資源的な価値として重要だった、それは理解しているけれど、炉の火を反射し輝き、紅く縁取りされた艶やかな黒さが宝石のように思えてきれいだ。


 と思えていたのは初めだけでした。

 ゲームの中だから疲れはないのだけど、延々と運び続ければきれいとかどうでもよくなる。

 石炭の大小、見た目の色の違いから炉に入れる時の選んでおきたい物などを気にしながら、選別ロボットの如く、ひたすら選んでは運んで炉の火の色を観察してを繰り返すのだ。

 持ち運べる量の限界はどんどん伸びていく。

 初めに運べた量の2倍は運べるようになった気がする。

 持ち方の効率が良くなっただけじゃないだろう。

 スライムの血赤が腰のところを補助してくれているからだろう。

 立ち上がる時はお腹の下側に、運んでいる時は腰側にと血赤はその質量を重点的に移動させて、要所要所をきっちりサポートしてくれる。


 システムサポート手厚すぎないか?

 まさかモンスター1匹1匹にAI積んでいるとか……?

 サーバーが大変そうだ。

 機体のサイズもサイズだからもしかしたらCPUやメモリを積んでたり?

 機体のネットワークを利用したデータ保管を行っていたりするのだろうか?

 PCの時点で行える仕組みだから可能かもしれない。

 まぁ、考えても仕方がないか。

 仕組みの穴を突こうなんてことはする気がないし。

 万が一システム落ちを引き起こす行動を起こしたら……損害は天井知らずだろう……。


 一度夕食落ちしてまた上がり、お手伝いをして今日は過ごした。


「石炭の仕分けありがとう。私の作業の効率も上がった。

 これは餞別だ。確かクリム君は武器を使わないって聞いたのだが、防具なら使うだろう?」


 そういって渡されたのは紅いガントレット(籠手)レギング(脛当て)ヘルム(鉢がね)だった。

 手の甲とかすごく刺々しいです。

 これで殴ったら絶対に痛い。

 防具というよりも武器って言った方が正確な気がする。


「ありがとうございます!」

「赤が好きそうだからカラーリングをその色にしたが要望があったら多少聞くぞ」

「この紅がいいです! 鮮やかで、血のように紅くて、聖にも邪にも染まりそうで」

「わかったわかった! 語らなくていいから!

 私は防具専門の鍛治をしているから何かあったらまた来なさい。

 クリム君が手伝ってくれるなら鍛治の効率が大分上がるからその分の報酬として多少作品の一部を融通しよう」

「ありがとうございます! ……もしかしてその防具も?」


 炉の光を受けて紅く輝く銀色の鎧は誇らしげなゴードさんの表情と相まってすごく大きく見えた。


「あぁ、私はポーラーベアだから本来熱に弱いんだ。

 だからこの耐熱装備を作れるまで大変だったよ」


 遠い過去を振り返るような雰囲気を振り払い、ゴードさんはガントレットとレギングを指さした。


「装備は着用すれば全身に適用される効果のものがある。

 今回、用意できたのはガントレットとレギングとヘルムだ。

 ボディや指や足の形、頭の大きさなど種族によって左右されやすい部分ところは多少採寸が必要だからオーダーメイドになってしまうが、その防具の部分は影響されにくいだけを選別して作った汎用装備だ。

 そのガントレットとレギングなら素早さと器用さが高くなりやすいな。

 全身に適用されない効果としては棘の部分の攻撃力上昇分だ。

 部分部分の装甲だから30レベル台では防御力自体は低いが、20レベル台以下なら十分使える装備だ。

 防具というよりも武器という立ち位置の変わり種だから人気自体あまりないが、今のクリム君にとっては喉から手が出る程欲しい装備だと思う。

 それがあればアチーブメントも集めやすいだろう」


 やさしさがこもった言葉。

 ここまでしてくれたのはきっとテン子様のお客様だからだろう。

 そうじゃなかったらきっと鍛治をやるにしても1人で手探り状態から始まったと思う。

 伝手なんてないんだから。

 この状況は当たり前じゃない。奇跡なんだ。

 テン子様にも良くしてもらったこと、お伝えしよう。


「本当にありがとうございますっ!」

「またおいで」

「はい」


 今日はもう遅いので試しの戦闘はすることなくログアウトをした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ガントレットは甲冑の籠手と似た構造で作られていた。

 手首から肘までの長さの紅い硬い棒を、胸元まであるチェインメイルの腕の部分に括り付けられていて、手の甲は骨の上に来るように5本の棒が括り付けられていた。

 拳を握れば手の甲の上の棒が爪の様に突出し、刺さり斬ることもできそうだ。

 肘打ちをすれば肘の先にある棒が刺さる。

 これらは突出先で1点に集まるように設計されていて、局所破壊に特化している。

 1点に集まるが接合されているわけではないようだ。

 棒はやすりの如く、掠れば柔らかい物なら軽く削いでいける。

 関節の動きを邪魔しないように調整され、本格的に武器がなくなっても戦える。

 カバンを背負うようにしてガントレットを装着。

 ガントレットは背中で支えるようにして身に着けるようだ。

 戦闘中に外れないようにする仕組みだろう。

 関節で固定するように身に着けたら、関節の自由が阻害されてしまうからか。

 レギングはふくらはぎの細まり始めた部分の上で固定するように設計されていて、関節の稼働領域を阻害しない。

 こちらは完全に削る専用というか、つかまれたら相手が怪我するように作られている。

 ヘルムは頭突きを想定してるのか、短くも太くて鋭い角が生えていた。


 紅いウサギの獣人。身長170cm。

 制服の黒チョッキに白ワイシャツ、黒いズボン。

 禍々しさすらある紅いガントレット。

 触れる物を拒絶する紅いレギング。

 終いには紅い角のヘルム。

 腰には今はまだ透明なスライムの血赤。


 さて……どこかに鏡はないかな?

 角も生えているし鬼の様だって言われる外見をしていそうだ。

 

 まぁ、いい。今日、これより僕の無双が始まるのだっ!

 まずは草原に行こう。戦闘しに行くんだ。



 一面、腰丈の草々が広がる草原、空は青く澄み渡り、空気も青臭さを感じる。

 遠くの方に木が生えていたり、するけれど密集という程ではない。


 視界良好?いや、ここの敵モンスターはネズミやトリやイヌやネコなどだ。

 可愛いと思うなかれ。敵は大群。攻撃力は低いとはいえ群がれたら初心者は容易く命を奪われる。

 いわばここは始まりの試練である。出鼻を挫く鬼畜仕様が常とはここの運営のことである。

 ソロでいけるにはいけるが、アチーブメント制の頸木で同一モンスターと戦ってもアチーブメントを取りきれば経験値が稼げなくなるため、1人で倒せるモンスターだけ倒しているようでは頭打ちになる。

 フィールドボスを倒さないことにはこのフィールドの次にはいけないのである。

 初期フィールドは8つあり、2つフィールドを制覇するとだいたい次の街に行ける目安といえる。

 この初期フィールドが苦手であれば別の初期フィールドで鍛えればいいので、サモナー以外は手詰まりすることはめったにないが。


 ちなみにこのフィールドは僕にとって相性が悪い可能性が高いけどな!


 的が小さいし、素早いし、数が多いとなると範囲攻撃が得意なプレイヤーでもない限り相性がいいはずもないが。

 ちなみに別の初期フィールドは川原や野山、林、海などで、川原であればカニのように硬いけど動きが限られて狙いがつけやすいなどそれぞれの得意なことが分かっていればクリアできるエリアがどこかにある。


 なんで相性が悪いとわかっているのにここに来たのか。

 それはもちろんテン子様がここのフィールドの攻略を最初にやったからだ!


「あれ? クリムゾンクラウドってもしかして」


 聞いたことのある声で名前を呼ばれたので振り返ると見知らぬ2人の女性プレイヤーがいた。


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