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23、鍛治師ゴード

「ごめんください」


 周囲にいるプレイヤーの間を抜けながら僕は言い続けた。


 僕はテン子様のDMに従って鍜治場向かった。

 そこはギルドの中にある施設だ。

 ただやはりこのギルドということもあり、そこは巨大でありながら近代的だった。

 鍛治と聞くと思い浮かぶのは鍛造だ。

 しかし鎚を持って鍛造をやっている人もいるがそれは1部であり全員じゃない。

 残りはなんだといえば見たことない装置をいじっているのだ。


 鍜治場は鍜治場の外とはまるで違う世界だ。

 鍜治場の外ではまだ見たことがある物が原型にあった。

 けれどこの世界はまるで知らない。

 精々わかるのは炉と柄の長いハンマーくらいだ。


 僕は出会う人の名前を確認しながら目的の人を探す。

 鍛治クマ3人組……パンダのディーノ、グリズリーのビーン、ポーラーベアのゴード。

 彼らの内の誰かに出会えればいいのだ。

 テン子様のところの常連客だとのこと。

 失礼があったらいけない。


 クマの鍛冶師か……。すごい強そう。

 でも毛皮燃えないのかな?

 頭髪とかよく燃えるしたぶん燃える。


「ごめんください」

「おっとごめんよ」


 さっと目を上げてそのプレイヤーの名前を見ると探し人だと気づいた。


「あ、あなたはゴードさんですか?」

「お? 君は……」

「申し訳ありません。僕はクリムと言います。テン子様に紹介されてゴードさんに会いに来ました」


 目の前にはシロクマがいた。身長が2m程だ。クマとしては小さい?

 クマってけっこう大きなイメージがある。

 ゴードさんは銀色の鎧を纏っていた。

 金属って炉で熱されてすごく熱くなりそうだ。

 まぁ、そこはゲーム補正で比熱が高い金属とか金属に見える非金属とかで、熱くならない素材で出来ているのだろうけど。


「そうか。君が……。分かった。じゃあ、まずは手伝いから始めようか」

「手伝いですか?」

「あぁ。今の私の仕事を見ながら鍛造の仕方を覚えてもらう」

「はい。分かりました」

「鎚の持ち方とかよりもまずは金属がどういう風になったら強くなるのかを覚えていこう。

 それが分かるようになればその上を目指していけば自然と上手くなるからな」

「分かりました。まずは手本をたくさん見て覚えていけばいいんですね」

「ただ力任せに振るってもいい物は出来ないからな」

「はい」


 ゴードさんはくるっと背を向けると指でちょいちょいとついてこいと合図し歩き出した。

 僕はその広い背中に着いていく。


「鍛造はあまり複雑なパーツを作ることには向いていない。機械の部品などには向いていないんだ。

 現実であれば鍛造で作られるのはあまり複雑な形状をしていない工具だろうな。

 そして武器は複雑な形を持つものが少ない。

 銃とかでない限り複雑な形状の部品を持つものはないだろう。

 だから武器は鍛造品が主流だろうな。丈夫で長持ちするから」

「ということは武器以外が他の設備で作られているってことでしょうか?」

「あぁ。このギルドでは機械も普通に作られているんだ。エレベーターとかはもう見ているだろ?」


 テン子様の店舗は地下にある。そこに行くまでに何を使っているのか。それはエレベーターだった。


「……はい。テン子さんの店舗に行くときに乗りました」

「あぁ。だろうな。ここの世界は元々中世レベルの産業だった。それをフォロさんが変えた。

 まだコンピューターが再現できないから現代には届かないが、それももう束の間の話だろうさ」

「凄いですね……」

「あぁ」


 その背中からは表情を窺うことはできないけれど、ゴードさんの語る声音には心底誇らしいという色が混ざっているように聞こえた。


「クリム君はスライムをパワードスーツのようにするって聞いたが本当なのか?」

「まだ筋力の補助をできる程習熟していないですが、将来的には間違いないですね」

「私のところでは筋力を使う仕事はたくさんあるからそれで習熟させていくのだろう。

 初めは素材の持ち運びくらいしか頼めないがよろしく頼む。

 何がどれくらい必要なのか、どの順番で加えていくのかを覚えることができるから集中するように」

「はい」


 鍛治には覚えていかないといけないことがとても多そうだ。

 一筋縄でいかないのは当然と言えば当然か。


「生産系スキルの御多分にもれず簡易作成というのが鍛治スキルにもあるが……あれは成功率が低い。

 ゴミ製造スキルと揶揄されるくらいの成功率だ。

 その素材を買うお金で他の人から成功作を買ったり、自分の手や眼で覚えた方が素材をムダにしないですむ」

「ゴミですか……」

「あぁ。刀を例にするとだ。

 鋭いのはいいが硬いだけで簡単に砕ける。

 反りが悪くて切れない。

 柔くてすぐに曲がる。

 刃が潰れて切れない。

 そもそも途中からポッキリ折れている。

 まぁ……ありとあらゆる種類のゴミが作れる」

「なんというか……大変ですね……」

「鍛冶のスキルレベルが高くて作成難易度が低い物なら成功率は高くなるんだが……ハッキリ言って素材のムダにしか感じないな。スキルの経験値も稼げない」

「簡易作成って使えないんですね……」

「材料にかなり余裕があるなら時間短縮になるんじゃないか?」

「時間短縮?」

「簡易作成は材料さえあればすぐにできるからな。なかなか成功しないから1割の成功品と9割のゴミになると思うが」

「なるほど?」

「テン子ちゃんは戦闘中に簡易作成で膠の失敗作を大量に作って毒物攻撃していたくらいだ。

 ゴミも使いようによってはメリットなんて見つけられるものさ」


 テン子様は神なんでしょうか?

 ゴミスキルすらも有効利用するなんて……。


「あの子スゴいよな」

「ですよね!」

「お、おぅ」


 テン子様はすごいんですね。

 他のプレイヤーからも讃えられる発想力は素晴らしいです。

 テン子様……天子様?

 あぁ、神の子ですね!


「ま、とにかくだ。まずはとにかく見て覚えろ。

 変化の瞬間を実際に見ていけば自然とタイミングがわかるようになる。

 私のだけじゃなく色々な人の鍛治を見るのも大分タメになる。

 また時間の空いてる時に鍛治の動画を漁るのもいいぞ。

 現代の技術を参考にしていくと自分の目指す鍛治の目標が見つけられるものだ。

 鎚を振るうようになれば更に先が見えるようになる」

「極まってる……」

「何言っているんだ。私はまだ鎚を振るって1年しか経っていない若輩者だぞ?

 ゲームの世界だから熱さにもスタミナにも邪魔されることないし、素材にしたっていくらでも集められるから、現実の世界の鍛冶師よりも同じ期間での鍛治をする回数は負けることはないが、どんなに濃密にしようともたかが1年しか鎚をもっていないんだ。

 その程度で極まるわけがないだろう」


 極まっているのは鍛治一直線のその思考ですよ。ゴートさん。

 何を当たり前だ、みたいな口調で言っているんですか……。


「じゃあ、とりあえず色々運んでもらおうか」

「はい」

「どのくらいの重さまで持てるんだ?

 ぎりぎりをいくのがパワードスーツとしてのサポートを覚えるのにいいって聞いたんだが」

「分かりませんのでまずは限界を探すところからはじめますね」

「じゃあ、あそこにある石炭の山を箱に入れて炉のところにまで運んでもらおうか」

「分かりました」

「頑張れよ。けっこう腰にくるものがあると思うから。

 大きい物もあっていいが火力を上げたいから細かい物を多めで頼む。

 火加減の調節に使うから色々なサイズがあると助かる」

「はい、わかりました」


 ゴードさんが指で示したのは黒い山だった。

 箱と軍手は近くに在った。

 石炭をつかみあげると周囲の光に反射して赤く輝いていた。

 思っていたよりも重く冷たかった。


「頑張るか」




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