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20、勉強会2日目

「今日はどこに行くの?」

「テルの家」

「テル君のところね〜。じゃあテルママにコレよろしくね」

「コレ何?」

「家で採れたレモンのケーキ」

「分かった」

「1人で食べちゃダメだぞ?」

「そんなことしないよ」

「そら、行った行った」


 テルは小学校の頃からの友達で地元が同じだ。同じ市街地に家がある。

 サキとナカは中学校からの友達で最寄り駅が違う。

 県で1番の進学校に通うから出会えたメンバーなのだろう。

 ナカや僕は地元でやっていけそうな人じゃなかったから、サキとテルは僕とナカが不安だったからだろう。

 いや、勉強をまじめにしたいと思ったら経済的に余裕があれば地元から離れるか。


 駅に向かい待ち合わせの場所に行くとテルが立って待っていた。


「早いな、アカ」

「テル、そういうお前こそ早いだろ」

「あいつら美人だし下手に待たせたら不良ほいほいになるだろ?」

「あー、確かにそれはありえる」

「ガラの悪い奴はそこそこいるからなぁ」


 地元の中学校にはタバコを吸うような生徒もいるとかね。

 僕が知らないだけで僕の学校にもいるのかもしれないが地元は他校に伝わるほど柄が悪い。

 悪ぶっているだけかもしれないが少しのルール違反を起こすチキンレースをしていれば軽い犯罪なら「あれをしても大丈夫だったんだからこれも」となりやすいだろう。

 大きな事はしないが小さな事は積み重ねていく、これはやられる方にしてみればたまったものじゃない。


「絡まれるのは面倒だな」

「面倒事はごめんだ」


 やっぱりテルはバカじゃない。


「あ、でさ。昨日LINEで話したことなんだけど具体的に何するつもりだ?」

「ディベートだって。今日は戦士についてというかRSO全体に関わることなんだが、キャラクターロールというかなりきリプレイというか夢は必要かどうかという議題だな」




 時間を見るとサキとナカの来る電車の到着する時刻になっていた。

 駅の改札で待っていると階段を上がってくる2人の姿が見えた。


「ごめん、待った?」

「いや、全然」


 どこのカップルだ。サキとテル。

 イケメンな笑顔を見せながら笑うテルにイケてる女の子の雰囲気を見せるサキ。

 ここだけ切り抜けばこの後デートのカップルにしか見えない。

 なんとなく2人をジト目で見ていたら同じようにジト目で見ていたナカが目に入った。

 あ、目が合った。すごい勢いで反らされた。


「今日はテルの家だよね?」

「そうだよ、家着いたらまずお昼用意してるから食べようぜ?」

「何作ってるの?」


 それ、僕も気になる。


「さぁ? 3人が来るって言ったらなんか母さん張り切ってて話聞けなかった」

「へぇ? 楽しみ!」


 この手土産はおやつになるな。


 前を歩く2人についていきながらふと隣を見ると同じように歩くナカの姿があった。

 ボブカットというんだったか、短い黒髪が内向きにくるりと巻かれていて触ったらきっと柔らかいんだろうな。撫で心地がすごくよさそう。

 サキの顔を見ながら心ここにあらずなナカの姿は儚く感じた。




「母さん、ただいま~」

「お邪魔しま~すっ」

「お邪魔します」

「お邪魔します」

「ん、みんないらっしゃい。お昼食べる?」

「「いただきますっ!」」

「いただきます」

「母さん、何か手伝える?」

「器にお湯張って温めてくれる?」

「わかった」

「おばさん、母さんからコレ」

「いつも悪いね? 今日はなんだい?」

「ケーキですね。オヤツにしましょう」

「あたし達も何か手伝いたいな」

「とりあえずテル、あんたも手洗ってきな。アカ君、サキちゃん、ナカちゃんは食卓に座って待ってなって。後は麺を茹でるだけだからさ」


 テルのお母さんはよく笑う大阪のお姉さんといえばいいか、明け透けで朗らかで細身だけど暗さがない感じがすごく好ましい。

 おばさんに勧められるまま食卓に着いて待つと出てきたのはラーメンだった。

 スープの色は白。表面に浮いている油は少ない。具材は鮮やかな緑色をしたネギに鳥の手羽先?白ゴマが浮いている。麺は縮れてスープがよく絡みそうだ。

 温かな湯気がラーメンのいい香りを運ぶ。あっさり系だ。


「いい鶏が入ってね。ちょっと出汁からスープを作ったんだよ」

「とても美味しそう!」

「ありがとね! 早く食べないと麺が伸びちゃうよ?いただきますっ!」

「いただきますっ!」


 ラーメンを食べる時まずは何を食べるか。

 僕は麺だ。

 具材を絡めて箸を持ち上げ少し息を吹きかけ冷ましながら口に運ぶ。

 鶏ガラの旨み、麺とネギの甘み、白ゴマの香ばしさ、生姜のスッとする後味。

 鶏肉を口に運び入れる。

 柔らかくも弾力があり歯を立てればぷつっと弾ける。

 甘い肉汁が口の中に広がり口福という言葉の意味を知らせる。

 レンゲでスープを掬い口に含む。

 鶏ガラの旨み、少しの塩気。この2つが織り成す色調に生姜が絡み複雑な味を作りあげる。

 ネギをつまみ口に含めば野菜の甘みで口の中がさっぱりとする。

 麺、肉、スープ、野菜。

 このループは止まらない。


「美味しかった……」


 あっという間にラーメンは消え去った。

 顔をあげるとニコニコ微笑む女性陣の姿。


「アカ君は本当に美味しそうにご飯を食べるよね」

「美味しそうに食べているアカ君見ながら食べるといつもより美味しく感じるよ」


 ナカはただ無言で微笑んでいた。


「アカ君? 白いご飯はいるかい?」


 おばさんが含み笑いをしながら言った。


「お願いしてもいいですか?」

「もちろん」


 ラーメン茶漬け万歳、ラー茶は至福なり……。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまー」

「ごちそうさまでした」


「片付けはしとくから勉強してきんさいっ!」

「台所に運ぶだけはさしてください」

「いいのに」

「これくらい食べさせてもらったんですからやらせてください」

「そう?じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら」


 おばさんが洗い物を始めると僕達は勉強を始めた。




 勉強を終えてオヤツを食べたらゲームのお話だ。


「おばさん、これからRSOを題材にディベートをするんですがジャッジをお願いできますか?」

「どんな議題だい?」

「今日はキャラクターロールはRSOで必要か不要か。僕は必要……肯定側で立論するつもりです」

「キャラクターロール?」

「なりきりと言えばいいでしょうか?戦士……サキの立ち回りを考えてみたら騎士なのですがそれらしい振る舞いを続ければそれに見合ったスキルや称号がつくと思います」


 もしこのディベートが上手くいけばアバターの方向性がついて面白いことになるだろう……。


「なるほど。うんうん……面白いね。いいよ。ジャッジやろうか」

「ありがとうございます」


「いつも堅いよね~、アカ君?年々堅くなってない?」

「そうですか?」

「そうそう、昔だったら『ありがとーございます!』って言ってたよ」

「昔は舌が足りなかったんですね」

「あれ?じゃあ、変わらない?いや、でももうちょい素直だった気が……。昔だったら気軽に触ってきたのは確か!」

「それは小さいから許されることで今の僕がしたらおかしいですよ」

「アメリカなら問題ない!」

「ここは日本です」

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