19、土曜日の勉強会の後
「RSOの話?」
「はい、そうです」
「母さん?」
「母さんもRSOしているんだから話してもいいじゃない、ダメなの?ナカ」
「むぅ~」
会話の中におばさんが入ってきた。ちょっとナカの顔がぶすっとしているな。
ナカのむくれかえる顔は……わりと見る気がする。
こういう話に親が口を出してくるのはあまり好まないのは分かる気がする。
「もう。一プレイヤーとして話しするだけよ。母さんとして顔出すんじゃないの」
「はいはい、わかったわよ」
「むくれちゃわないでね? かわいい顔が台無しよ?」
「ふんっ」
鼻を鳴らして顔を横にそむけるナカに対しておばさんは頬に手を当ててしょうがないなぁと目を細めた。
「ごめんね? それはそうと私もプレイヤーとして参加してるんだけど知ってるかな?」
「えぇ、いつも僕の母がお世話になっています」
「俺のところもそうですよね」
「たぶんあたしのところもですね」
「うんうん、そうそう。私たちもRSOをちゃんとプレイしているのよ?」
機体がエステサロンみたいな部分があるからかな。肌艶の良さがとてもじゃないけれど高校生の娘がいる親とは思えないほどいい。腕に挟まれて胸が強調されたのはわざとだろうか?
なんとなしにテルの方を見るといたって普通の顔をしていた。内心は分からないが友達の親に興奮するような奴ではないだろう。
「今どんな感じですか?」
「魔法でババーンと吹っ飛ばしてる」
どやっ! ん、ナカのお母さんだ。間違いない。あの胸の張り方に得意そうな顔つきはナカのそれとよく似ている。
「なによ? なんなのよ?」
「いえ、おばさんはやっぱりナカのお母さんだなぁって思いまして」
「ふんっ」
鼻を鳴らしてそっぽ向く、そんなすね方まで一緒である。
「アカ~」
不意にテルがぐだ~っと間延びした声で僕に呼びかけた。
「なに? テル?」
「お前のところってサモナーだけだよな?」
「そうだね」
「う~ん……。サモナーか……。いや、それはやっぱりマゾいなぁ」
「おい。いきなりマゾとかひどいな」
「いや、だってよ? 初期はほとんど戦えないステータスで始まるんだろ? マゾだろ」
「なんでもやりようだ」
「わかっちゃいるけどマゾいなぁ……」
「そんなこと言うお前だってソロプレイでアチーブメントを偏らせるとかマゾだろ」
「でもね? そんな2人ともあたしたちからしたらどちらもマゾ」
「うんうん」
「そんな面倒な真似をしなくても強くなれるでしょ?」
「「それじゃつまらないっ!」」
確かに正攻法でも強くなれる。
ナカとサキのプレイスタイルであれば比較的に強い特化型アバターに育つだろう。
ナカであれば1撃の魔法が強く、サキであればヘイト稼ぎが上手く防御力の高い理想の壁役へと成長するだろう。
戦闘の分業化が上手く働きアチーブメントの偏りもその育成を促進させ理想的なアバターへとクラスチェンジさせていくことは想像に難くない。
ここに敵の攻撃や行動を妨害したり仲間の攻撃や行動を補助するプレイヤーや主にサキのような壁役を回復する癒し手が加われば今以上にパーティーが安定することは間違いない。
もちろん敵によっては敵の攻撃力が高すぎて壁役がすぐに沈むからパーティー全員火力の超攻撃偏重パーティーの方がよかったり、魔法の防御力が高すぎて魔法が効かないから火力は物理じゃないとダメだったり、反対に物理の防御力が高すぎて物理が効かないから火力は魔法じゃないとダメだったり、敵の動きが速すぎるから敵の行動を阻害するプレイヤーが非常に重要になったり、1撃は重いけど回復を上手く回せばいけるから癒し手が重要になったり、敵が弱いけどたくさんいるから火力も重要だけど攻撃速度やその取り回しの良さが重要視されたりする。
サモナーは?
上手くいけばそれを1人で全部対応できるのだ。
基本ステータスは確かに低いだろう。
しかしサモンモンスターを敵によって変更すればどんな局面でも対応できる。
ましてプレイヤーなんて人型だ。サモンモンスターはそんな形にとらわれない。
水の中では人は魚よりも効率的に動けない。空の上では人は鳥よりも効率的に動けない。洞窟の中では人はトカゲやムシ、コウモリよりも効率的に動けない。
サモンモンスターは様々な場所に適応し動きやすいのだ。
そして野良のモンスターと違い育てることによりステータスを偏らせていくことができる。
物理攻撃も魔法攻撃も物理防御も魔法防御も行動阻害も行動補助も回復も全部偏らせることができるのだ。
人型であればある程度偏らずにふられているステータスもモンスターであれば大きな偏りがある。
この偏りを調節すればプレイヤーの基礎ステータスの合計値にサモンモンスターは劣っていれども1部の基礎ステータスに限れば上回ることができる。
サモンモンスターは装備の形状を制限される問題がついて回るのでプレイヤーの装備を使いまわしなんてことはできないがそれはおいおい解決していけばいい。
「つまりだ。サモナーこそ究極のジョブなのだっ!」
「はい。おつ。お前には1つ穴がある」
「なに……?」
「サモンモンスターが優れているのは百歩譲って認めよう。だがな。そこにパーティとしてのお前自身を補う手段がない」
「ぐ」
「サモンモンスターにアシストしてもらうと他のプレイヤーよりも60%程高くなると言っていたがパーティーとしてみれば2人分の枠を消費してそれだ。それなら2人プレイヤーがいた方が便利だろう」
「ぐぐ」
「何より忍者の方がカッコいいっ!」
「異議ありっ! 聖騎士の方がカッコいいっ!」
「異議あり。盛大な魔法こそがファンタジーの華。魔法使いこそ至上なり!」
「異議ありっ! 動物の神秘性を、RSOは推していると思うっ! このリアルさはその証だっ! よってサモナーこそRSOでは至上だっ!」
「忍者だっ!」「聖騎士に決まっているっ!」「魔法使いです」「サモナーだ」「魔法使いよね~」
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今日はとりとめもない言い合いで終わった。
ただ時にはこういう風に言い合うのもまた楽しい。
心のうちをさらけだすようでそれがなんとも言えない楽しさがある。
整然とした空気も気持ちいいが息がつまりかねない。時には乱雑さもあると気が抜けて楽になる。
清流に魚は住めない。
きれいな水とは微生物が居らずそれをエサにする小生物もいない。つまりエサがないから魚は生きられない。
他のものだってそうだ。清いばかりでは住むことはできない。乱雑さもまた重要な要素だ。
でもちょっとこの話題については言い合いだけじゃもったいない。
ディベート形式にして深く深く突っ込みたい。
サモナーに対しては僕は詳しく調べたつもりだ。
でもそれはテン子様に興味があったからこそやったことだ。
他の職業に関してはあまり知らない。
その部分を突き詰めていけばパーティ戦闘でのもう1歩先に進めると思う。
「テル? な、ちょっといい? 明日の勉強会の後での話なんだけどさ」
僕はテルに個チャを送り予定を話し合った。
ナカやサキとも話し合うと概ね了解を得られた。
そしてグループチャットで話し合う議題を決めた。
次回のディベートのテーマは「戦士について。この職はパーティーの中でどういう役割を担うべきなのか」
1番選ばれることの多い、汎用性が高く戦闘のしやすいこの戦士職について理解を深めるのが主目的。
この職について詳しく知れば僕の場合どんなサモンモンスターをレンタルさせて欲しいのかがわかる。サキのジョブの特徴だから後々パーティーを組む時にもどんなアシストが欲しいのかわかる。知るメリットは大きい。




