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10、友人たちとの絡み合い

 僕はログアウトすると汗で濡れた体を拭い、のどが渇いていたのでキッチンに向かった。


 明日の学校でテル達とゲームについて話そうかな?

 サモナー仲間を増やすのは大歓迎って言われてるし勧誘するだけ勧誘しておこう。

 たぶんもう別のジョブに進んでいるだろうが。


 筋肉つけるのだったら鶏肉を食べるのがいいんだっけ。

 牛肉や豚肉よりも効率がいいなんて聞いたことがある。

 卵の白身とか良質のタンパク質らしい。


 卵を割り黄身と白身を分け、ガラスのコップに白身を入れホイッパーで軽く白くなる程度に泡立てた後、だいたい300mmくらい入るコップで7分目になるまで牛乳を加え、黄身とスプーン1杯分の砂糖、そして1つまみの塩を加えて軽く混ぜて、バニラエッセンスを1滴落としてミルクセーキの完成。


 黄身や牛乳などの油分が入ってからでは白身が泡立たないので注意が必要だ。

 万が一混ざってしまったらドンマイ。材料を全部混ぜて普通にミルクセーキにすればいい。

 食感の違いはかなり大きく感じるだろう。

 僕は甘くてフワフワ食感のミルクセーキが好きだ。


 汗で失った塩分や水分も、使われたエネルギーを補給する糖分も、体を成長させるタンパク質も補給できるミルクセーキは神だ。




「お、アカーっ! お前、RSOを始めたんだって?!」

「お前もだろ、テル」

「聞いてたか。いや~、まさか購入に踏み切るなんてな。

 お前のおかげだろ?いや、助かったわぁ~」

「僕は大したことをしたわけじゃないさ」

「お前の家が購入に踏み切れば俺の家だって踏ん切りがつくってもんだよ。

 タイムシェアの仕組みだって提案してくれたから俺のゲームできる時間もだいぶ増えたしな」

「そう褒めるなよ、調子に乗っちゃうだろ」

「そうだ、お前、種族とジョブなんにした?

 俺は狼のレンジャーなんだよ、忍者を目指しているんだ」

「僕はウサギのサモナーだよ」

「アカぇー……? いや、お前のことだからいろいろ考えた末だろうけど。

 なんというかテンプレ構成を選ばなかったのか」

「テルのはテンプレすぎるだろ」

「テンプレは強いんだぞ!?」

「それは知ってる」

「狼忍者のカッコよさをなめるなよ?!」

「フォロさんが好きなんだろ、知ってる」

「速いし、こう尻尾がなびいてかなりいいだろ?」

「あ、そういえば昨日フォロさんと話したぞ」

「マジか!」

「マジマジ」

「いったいどうやって!」

「昨日、ギルド内にあるサモナーのお店の面接に行ってだな」

「く、そんなメリットがあっただと……」

「まだ何も言ってないぞ」


 テルと出会ったので話しながら僕は高校に向かった。

 根掘り葉掘りフォロさんに関してテルは聞いてきた。

 ファンなのは知っているんだけどここまで熱狂的だとは知らなかった。


「おーすっ! お2人さん!」

「サキとナカじゃん。おはようさん」

「2人とも~。あれ、ゲットしたらしいですね~。ぐへへ」

「サキさんー。その口調合わないですよー」

「ゲスボ楽しいですよ~?」

「いつも通りのイケボでお願いしますー」

「そっか、イケボか~、ってアタシ女だっての!」

「大丈夫です、みんな、サキさんはサキさんという性別だと認識してますから」


「RSOなら確かにゲットしたぞ」

「なぁ、こいつ、昨日始めたばかりのくせにあのフォロさんと話してきたみたいだぞ。

 けっこうな時間。2人きりで!」

「何それっ! テル詳しく!」

「おぅっ!」


 男女共に仲良くできるサキ。

 サキ以外だと基本仲良くできないナカ。

 セットパック。


 快活なサキは御多分にもれず世話好き姉御気性のカッコいい女性である。

 人に受け入られやすい見た目の整った美人だ。


 そしてナカはサキに負けず劣らずの美人さんである。


 いつだったか聞いた話だと、顔面偏差値に差があると上の人は何も思わないけれど下の人は引き立て役にされている気分になり、一緒にいるのが嫌になるそうだ。

 そのため同じくらいの偏差値の女の子が固まるらしい。

 このためあまりにも美人だとボッチになるらしい。


 世知辛い。


 絡まれている僕たち?

 授業の合間の休み時間に勉強を教えている僕と勉強を教えられているテルだ。


 テルは別に頭が悪いわけじゃない。

 たぶん僕に絡むためにそんな立場になっているだけだろう。

 一応小学生の頃からの付き合いだから腐れ縁ではあるか。


 一緒にいて楽しいのが僕だけなんてことないか?

 ちょっと悩む。


 今もテルとサキばかり話しているし。


 あ、目が合った。


「おーい、アカ? 大丈夫か?」

「うん、なんだ?」

「お前黙ってたら俺が困るんだけど」

「え、なんで?」

「いや、お前の話じゃん」

「うーん、もうお前全部話してくれるし大丈夫だろ」

「よくない、よくない」

「そうだぞ、アカ君やい!」


 ビッ! そんな効果音が出そうな格好でサキさんは僕の目の前に立つと腰に手を当て指をさした。


「話すことはだいたいさっきテルに話したぞ」

「いや、そこはもっと人間関係にハングリーに!

 もっといろいろ話そうよ! レッツ! トーク!」


 反応に困って横を見るとナカと目が合った。

 素早く目を反らされた。

 なんだろう、悲しい。


「ったく。うちのアカがすまないな」

「こっちこそ。ナカが悪いな」


「「何、保護者顔してんだ」」


 はもってしまった。

 ナカの顔を見ると唇を尖らせて吹けもしない口笛を吹いている真似をしながらそっぽ向いてた。


 テルとサキは少し困ったように見つめあっていた。

 そしてテルは僕の肩を、サキはナカの肩を叩き、教室へと歩みを進めた。

 なお何の因果か僕たちはクラスが同じである。


 風の噂にPTAが暗躍して生徒をクラス分けしているため、僕たち4人は一緒のクラスにされているらしい。

 問題児を1クラスに固めないために動かすのは理解できるけれど一般生徒を固める意味はないだろう。

 ナカはサキと分けたらボッチになりそうだから少しわかる。

 水と油くらいにクラスで浮いた存在になるだろう。

 サキという界面活性剤がいなかったら誰かと関わることがなくなりそうだ。

 僕は……少し浮くかもしれない。

 いや、まぁ、問題視されるほど浮かないはずだ。


「サキはライオンのファイター、ナカはキツネのメイジでやっていくそうだぜ。

 前衛をサキがやって敵を引きつけて、後衛のナカが魔法で倒していく感じみたいだ」

「あの2人、コンビ組んでいるんだ。お前はどうしてるんだ?」

「俺? 野良でソロして遊んでるよ。

 忍者を目指すためには見られる前に倒せるようにならないといけないからな。

 アチーブメント稼ぎのために今技術伸ばすのに忙しいんだよ」

「……忍者って難しいんだな」

「おうよ! だが育てば強いんだぞ?」

「知ってる。闘技場じゃ忍者あふれているくらいだからな」

「クナイとか手裏剣、撒き菱、煙玉とか使っている本格的な忍者は少ないが強いよな!」

「フォロさんか」

「素早い動きで短刀を使って首をはねたり、属性を纏わせたクナイを飛ばしたり、毒や麻痺の煙で状態異常を起こさせるあの姿はカッコいいだろ!」

「すごい派手だよな」

「そうそう、フォロさんはすごい魅せる人だよな!」


 強くてパフォーマンス精神も豊富。ギルドで作った新作紹介を兼ねた装備の多様さも大きい。

 だから強さを求める層、派手さを求める層、目新しさを求める層、いろいろな層から支持される。

 ギルドの経営もできる、プレイヤーとしても強い、魅せるプレイができる。

 動画やホームページを介して多大な金額を稼ぐ。

 ゲームでも現実でも彼女に隙はあるのか……。


「フォロさんは凄すぎて参考にならないからなぁ……」

「参考? 戦闘か?」

「戦闘は……動画を見て1つ1つの動きを真似していけば出来るようになるんじゃないか?

 動きをつなげて再現できるのは何年後になるかわからないけど。

 僕が参考にならないといったのはその活動範囲の広さだ」

「あー、あれはちょっとムリだ」


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