表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/37

プロローグ、ある未来。

「ク・リ・ム! ク・リ・ム! ク・リ・ム!」


 僕を讃える声が聞こえる。

 対峙するのはプレイヤーのパーティー。


 僕はきっといつものように負けるだろう。

 だけれど僕は諦めない。勝てる時もあるから。

 それに勝てた時の何とも言えない快感。


 地に伏せるは最新装備のプレイヤー達。

 対して僕は1人でそれを返り討ちにする。

 あれ程の快感はなかない。


 可能性はある。


 あの快感。味わったらもう辞められない。


 僕はいつもの如く跳ね飛ぶ。

 その高さは数十mを優に超えて100mに届く。


 他のプレイヤーはここまで高く跳ぶことは出来ない。

 僕の構成と同じでなければ出来ない。

 このジョブは育成するまでが長い。

 つい最近まで10レベルまで育成することすら困難だった。

 初期で詰んでいるジョブ。

 あの店の従業員なら僕の他に30人くらいいるけれど、もふもふに取り憑かれた人ばかりだ。

 だから同じ構成をしている人は誰もいないと確信している。


 僕は背中にたなびく10本の触手を放射状に広げ紅く光らせる。

 そして高々と拳を掲げて言う。


「紅きヒーロー、クリムゾン参上!」


 僕を追って飛んできた運営のカメラに顔を向け、スクリーンにダークヒーローの笑みを映らせ、高らかに宣言する。

 運営のマイクに声を拾われ闘技場全体に響く。


 観客のクリムコールがさらに高まる。


 僕はユニゾンサモナーのスキル【AllForOne(みんなは1人のために)】を使い装備している仲間、空イカ(スカイスクィード)のホタルに合図を送る。

 背骨の上辺りにあるブースターからガスを噴射した。

 僕はリングに向けて急加速した。


「破!」


 僕は音声入力で体術ツリーのアクティブスキル、インパクトを発動させる。

 さらに赤ニシキヘビ(レッドパイソン)(くれない)に筋力と皮膚表面の補助の一段階上昇を合図。

 アバターの表面に浮かぶ鱗が一際濃くなる。


 あとはスキルモーションに身を任せて拳をリングに叩きつけた。

 拳はリングの表面で止まり、それまでに溜めた運動エネルギーの全てをリングの表面に置いていく。


 茶色い砂のリングは融解し、拳の衝突した中央は白熱し、全体を紅く染める。

 リングに陽炎が立ち昇る。


「今宵、私に挑む勇者パーティーは誰だ?」


 いつもの名乗りを行う。

 ゲームの世界で、実際の顔とは違うから恥ずかしくない。


 すみません、ごめんなさい、調子に乗りました。

 すごく恥ずかしいです……。


 その直後、天空から岩石が降り注ぐ。

 だがしかしそれは僕をすり抜けた。

 けれども僕の視界には岩があり続ける。


 この岩には触れない。


 この岩は……幻術、幻術スキルか!


「な、な、な、なんと!

 天空から岩石が降り注いだと思えば蒼き鳥が飛んでいるぞ!

 その背中には誰かが乗っているようだ!」


 ねぇ、僕、見えないんだけど?

 何が起きてるの?


「黒きクローを携えて、黒き軍服に身を包む。

 尻尾がキュートなあの人は……黒き解体天子!

 我らが幼女せんせー! サモナー伝道師のテン子ちゃんだ!」


 て、て……店長ーっ!

 店長、何しに来たんですかっ!


「アップされた顔はこれは見事なドヤ顔!

 これはもう見事な煽り顔! しかしかわいいから許す!

 え? 『私はおっさんです』? 何を言っているんですか?

 テン子ちゃんは幼女です! それがこの世の真理! 我らが幼女、解体天使!」


 ねぇ! 今日の枠は僕の枠! 店長はお店に帰れ!


 僕はモミジズク(クリムゾンオウル)緋羽(あかはね)に視覚と聴覚の補助を合図。


 店長は確実を期して動くことが多い。

 しかしイレギュラーに対応出来ないわけじゃない。

 イレギュラーが起きても動じないし、普通にわかっていたかのように対応してくる人だ。

 幻影の配置を登場時にしてくるし狡い! 登場アクションとしてごまかしているけど狡い! 店長には負けたくない!


 いくら師匠といえども僕は店長に勝ちたい!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ