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世界を終わりに導く悲劇

魔女は、世界を閉じる。

作者: 悠木おみ

「片隅で終わりを迎えた世界」の前哨譚。捕らわれた魔女視点。

――彼は、無事だろうか?



 ぼんやりとした意識の中で、僅かに入り込む月明かりを見つめながら、ふと、思う。

 思考が動いたせいか、体も微かに動き、腕にはめられた手錠の鎖が地面と擦れ合う。


 一番最初にこの“檻”ともいうべき牢獄に入れられた時には不快に感じたその音も、今はもう感じない。



――みんな、どうしてるだろう?



 そう考えて、口の端が上がる。



――大嫌いだった。



 慈愛に満ちて、光に満ちて、どす黒い感情に触れたことのないような「オキレイナ聖女さま」も。

 生まれた時からその人生のすべてをいるかどうかも知れない神様に捧げた「コウケツな神官さま」も。

 強い人を見たら武器を持ってぶつかり合い、戦うことで人を評価する「脳筋騎士」も。

 自然災害級の偶然で居合わせた魔物に襲われかかって、結果的に助けた押しかけ「見習い義賊」も。



――でも、一番最初に嫌いだったのは、彼だった。



 自分は、プライドばかり高い魔術師だった。

 制御できないほどの、爆発的な潜在魔力と、それを操る才能。


 畏怖する人がいた。

 取り入ろうとする人がいた。

 嫌悪する人がいた。

 取り込もうとする人がいた。


 色々な人の感情を見る中で、師と付けられた何も学ぶ事のない人につき合わされたあの場所。

 そこで“喚びだされた”彼は、キラキラした目をしていた。



 そのキラキラした目が、希望にあふれた目が、

 汚いことなど見たことのないような、裏切られたことのない目が、大嫌いだった。



――でも、それに助けられた。



 大嫌いだった世界が、少しはマシになった気がした。

 大嫌いだった人たちが、ほんの少し、信じてもいいような気がした。


 初めて、人を好きになった。



 だから。



 苦しくても、辛くても、痛くても。

 初めて、私はあのお人好しで何も学ぶ事のなかった師を、先生と呼んだ。

 初めて、私は旅の道連れを、仲間と呼んだ。



――なのに!



 がちゃり、と、ここに入れられてから開かなかった扉が開かれた。

 嫌味なくらい綺麗な姿をした、嫌味なくらい顔の整った、一人の“精霊使い”。



「……出なさい、魔女」

「……」



 煤けて、汚れて、傷ついて、血と汗と埃にまみれてボロボロになった檻の中の自分と、目の前の精霊使い。

 かつては鏡に映したように瓜二つと言われた外見は、片割れの瞳に映る自分と全く違っていた。



「この国を、民を、すべてを裏切った事を悔い改めなさい」

「……」

「連れ出しなさい」



 従えていた男たちに鍵を開けさせ、魔女の体は両脇から持ち上げられ、引きずられるように牢から出された。

 何も言わない魔女に、侮蔑の瞳を向けながら、片割れは出口へ足を向けた。

 男たちも何も言わず、やはり魔女の体を引きずりながら、外へ出た。





 ざわざわとざわめくたくさんの民衆に、様々な感情の込められた目を向けられながら、ぽっかりと空いた広場の中央に、十字架が見えた。


「魔女に制裁を!」


 誰かが言った。


「魔女を裁け!」

「裏切り者に、罰を!」

「卑怯者ー!」

「殺しちまえ!」


 コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、

 血に飢えたように口々に魔女を罵りながら、民衆は期待する。



「魔女を」



 精霊使いの言葉に、魔女の体は十字架に括り付けられた。



「炎の精霊様の力に送られ、精霊様の下で、浄化されなさい」

「……」



 言葉と同時に足元に付けられた火に、ようやく魔女は反応した。

 ゆっくりと顔をあげて、笑う。



「っ」



 誰もが言葉を失い、誰もが魔女に憎しみの目を向け、誰もが口々に罵った。



「思い知れ」



 擦れた声で、吐き捨てた。

 精霊の力で瞬く間に火に包まれ、生きたまま体を焼かれながら、魔女はただ嘲笑った。

 声は、なかった。




(思い知ればいい。後悔すればいい。彼が、裏切られる世界なら、利用されるだけの世界なら、こんな世界、二度と救われないように――)

突発的に10分くらいで書き上げたので色々粗いです。

直前に読んだ某小説に(主に書き方が)引き摺られているので、そのうち改変するかもしれません。

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