2話:言語学者兼剣士兼龍種
あくまでもフィクションです
ここに記載された技術や知識に確証はありません、個人の見解です
「2人とも遅くなってすまないね、連れてきたよ…って寝てるな、おーい起きてくれ〜」
「ん、おはよ」
「もんふぁ…?おはよ?」
私達は夢華に起こされた。いつも私がすぐ起きて守りを固めていたこともあり、魅凪は起きるのが苦手だ。目を擦りゆっくりと起き上がったが、未だに眠そうにしている。
「おはよう、2人とも勉強はできるかい?」
「勉強、分からない、出来るかも」
「だそうだ」
だそうだ、と急に誰かに言った夢華。私は後ろに誰か居るのかと覗こうとすると、足だけが見えた。
「おう!教え甲斐がありそうで良かったぜ!」
身長が驚くほどに高い女性がそこに立っていた。大人しそうな見た目に反して元気な日本語を話している。
「私は夢龍時華だ!中国読みだと夢竜時華だぜ!宜しくな!」
だぜ!という特徴的な喋り方で自己紹介をした時華。シーホアかときかか、どっちの読み方で呼べばいいのか分からないけど、とりあえずときかの方で呼ぶことにした。
「時華?はいままでなにして生きてきたの?」
「?私か?私はな、こいつの最初の実験体として生きてきたぜ!そこの夢華、15歳くらいに見えるがその数十倍は生きてr」
パァン!!という音を立てながら夢華によって時華の口が封じられた。斬新なビンタみたいになってて少し面白い。数秒したくらいに夢華がようやく手を離した。時華の口周りは真っ赤になっていた。痛そう。
「っつつ…もうちょっと手加減してくれよ…」
「お前は龍種になったからそんな年齢がひけらかせるが、私はこれでもまだ人間という種族になる。そんな人間が100年以上この姿を保つなどあり得ないことだろう?ならそれはいうべきではないな。分かったかい?私でもされて嫌な事は嫌だ。それを心に留めて置くように」
「お、おう…すまん…」
すぐに反省したらしく、時華は少しだけ落ち込んだ。
「いいよ、それじゃあこの子達に君の研究した言語学習技術で日本語を教えてやってくれ」
「あぁ!任せるんだぜ!」
立ち直ったらしい時華は椅子を何処からともなく持ってきて、そこに私と魅凪を座らせた。時華もしゃがみ、私達に顔が見えるようになった。後で聞いた話によると、身長が高すぎて10歳かそれより年下の人の身長だと首が痛くなるくらい首を曲げないと顔が見えないらしい。
「そんじゃ行くぜ、まず名前は言えるか?」
「想斬魅凪」
「壊鸝煓」
私達の目を見て語りかけるようにしながら質問をしていく時華。この教え方は発音が出来ないが聞き取りだけは少し出来る人の為の教え方だとか。
「上出来だ、んじゃ次はあいうえお、これを発音してくれ」
「あいうえお」
「あういえお、?」
私が少し間違えると、少しだけ私の方に近付き、ゆっくり発音してくれた。
「煓惜しいぜ!あ、い、う、え、お、だ」
「あ、い、う、え、お?」
「そう!それだぜ!その調子で頑張って行こうな!」
発音できたことを確認すると私の頭を撫でてにっこりと微笑んだ。
「じゃあ次は書き取りだ、これかけときゃぶっちゃけどうにでもなるぜ」
また何処からともなく横に長い机を持ってきて、そこに紙と鉛筆を置いた。コイツだけギャグ漫画の世界に生きてるのか?なんて思ったりもした。
「まずこれをなぞれ、その後に横の空きスペースに同じものを書く、そして最後に裏向けて同じものを繰り返し書くんだぜ、出来そうか?」
私と魅凪が首肯すると時華は少し笑顔になり、「頑張れよ」と言った後に見守りに徹した。
そうして2時間ほど経った頃、私はなんとか平仮名片仮名のどちらも書けるようになった。魅凪も比較的すぐに全部書けるようになった。
そこから基本の単語、こそあど言葉、敬語、接続語を教えてもらった。
敬語に関しては、目上の人に使い、対等、または自分より立場が下の人には別に使わなくてもいいらしい。私からしてみれば全員偉人で生きてるだけで偉いわけで、実質全員に敬語を使うしかないというわけだ。
「これで…ちょっとは…?しゃべ、れる…ように?なった…と思います…?」
「そうそう、その調子だぜ煓、頑張れ!」
「私は多分完璧!」
「魅凪は上達が早いな〜!」
そう言って魅凪を撫でる時華。そこからわかるのは2人は対等の関係になったということだろうか。
「さて、そろそろ休憩にするか!なんか聞きたいことあったら遠慮なく聞いてくれ!」
「なら時華のこともっと知りたい」
「私のことか?そうだな…んじゃあもう少し私を掘り下げるか!」
そう言って時華は自己紹介をまずした。そしてそこからまた少しずつ自分を掘り下げていった。
「私は実験により海外でいうドラゴンに該当する背中に大きな羽のついた『龍種』になれるぜ、一応五獣神、青龍と飛竜を掛け合わせた遺伝子を使って生まれた人工的な種類になるぜ!あと能力も持っててな、『相手を点滅させるくらいの能力』って言うんだぜ!」
「はいはーい!なんでそんなにあやふやな名前なんですか!」
「そりゃ能力なんて私ら実験体にとって未知だからな!詳細の仕組みを知るのは夢華だけだぜ!」
魅凪が元気よく質問をすると、それに応えるように時華が元気に質問に答えた。
「じゃあ、普段…えと、何してるんですか?」
「んー、そうだなぁ…まず家では剣術をしてるな、そんでここなら誰でも使える共通言語の研究と夢華の実験体として実験を受けてるぜ」
「剣?剣つかえるの?すごい!」
「試しになんか切ってみようか?」
「やめてくれ、ここは研究施設であって道場じゃない」
「別にいいだろー少しくらいー」
すこしむすくれたが、その剣を振るう事はなかった。ちなみに剣と言ったが、どちらかと言うと刀らしい。あと青龍偃月刀という武器が家に家宝として置いてあり、殺伐とした世界になればそれを使う日が来るだろうとも言っていた。
そうして今日1日はずっと言語学者の時華から日本語を教えられ、時華の雑談を聞いたりして過ごした。
後日、私はこっそり時華に中国語を教わることにした。教わってみれば日本語よりもすぐに習得できて、何故か異様に発音もしやすい。10時間もすれば私はほぼ中国語が話せるようになっていた。「普通にそんなに早く習得できるやつなんて居ないと思ってたぜ」という時華の言葉もあり、私はなんとなく自信を持った。
魅凪は夢華からずっと能力や種族説明を受けていたらしい。能力は『死者の意識を操るくらいの能力』またもやあやふやな表現だ。
そして私も少しだけ教わったのだが、これがまた意味のわからないものだった。その能力というのが『引き出しを操るくらいの能力』正直よくわからなかったけど、なんとか扱い方を見つけた。
どちらかの手の人差し指を引き出しの向きに合わせてスライド、例えば普通の引き出しなら横にスライドさせる。そして掴む引き出しをイメージして、そのスライドした場所を引っ張る。すると引き出しを開け閉めできる。
「…あー…その、しょぼくなってしまってすまない…」
「い、いえ…その、はい…」
しょぼい、確かにしょぼい。だけど引き出しを『操る』というくらいだ。まだなんとかやりようはある。まず引き出しのイメージをする。イメージした引き出しは見えずとも開いた感覚はあった。試しにイメージした場所を見てみると、光を全く受け付けないような黒色の世界が広がっていた。
私は息を呑んだ。だってそりゃそうだろう、光を何一つ受け入れようともしない黒色、それがそこに広がっていた、それを自分は操ることができる、これさえあれば目眩しにでも何にでもなる。意外と汎用性があったのだ。
「も、夢華…これ、これならいけますよ…全然弱くなんてないです…」
「…そのようだ」
夢華も私の出した引き出しを真剣に見つめた。懐中電灯の光を当てたり、少し入ったりして、実験を少しした。一通り調べ終わると、夢華は真剣な顔で私に言った。
「これは『人間』が入るべきではない場所だ」
そう、私の目を見て言った。




