第三話 危険な薬物
オレ達はポリス達から逃げた後、なんやかんやで目的地のチュウカガイに来た。もちろんただの観光ではないので、人通りが全く無い路地裏に隠れている。必死に走っていたらこうなっちまった。戦闘をしたい欲求が抑えられそうにない、早くドペール達に会わなくては。
(え!?何でこんな所にミレナが!?)
オレの目の前には見覚えのあるツインテールのパツキンギャルがチャイナドレスを着こなして歩いていた。
ヤツの名はミレナ クルーガー。ユウキ様から不老を与えられたユウキ親衛隊の一人にして、星魔法の使い手の女だ。アメリカ出身でかつてカリスマギャルとして世界に名を轟かせていたが、ユウキ様と出会っちまった事で人生が180度変わっちゃった哀れなヤツだ。
性格は残虐ではあるが見かけによらず素直である為、さしずめユウキ様からオレらのサポートを指示されたのだろう。
彼女はこちらの視線に気付き、凡人であればすぐに靡く程の蠱惑的な笑みを浮かべた。彼女の隣にいた弱々しいモヤシオタクもオレ達の存在に気付いたらしく、生まれたての子鹿の様に足を震わせながら彼女についてきている。とは言ってもボサボサの髭、脂ぎった肌、よく分からない小娘の顔がプリントされているシャツと可愛げが全く無い要素をこれでもかと揃えているのでこういう表現は正しくないかもしれねえな。
「お嬢ちゃんはボクが守るからね…安心してよ━━━━ 」
(バカめ、ソイツはオレ達以上のバケモンだぞ。命がいくつあってもソイツから逃げる事は困難だというのに。)
そう心の中でオレは男に同情したぜ。何故ならば彼女は親衛隊随一の危険度を誇るのだからな。
「はいはい、デートはここで終わりよ。アストロブラスター!」
瞬間、彼女の純白に煌めく五芒星が浮かび上がった右掌が男の背中に触れた事で男は跡形もなく消滅した。彼女は何事も無かったかの様にオレ達に近づく。
「何やってんだ!?小娘!」
「ヨコハマ観光に決まってるでしょ。さっきコロしたのは私のカ・ネ・ヅ・ル!ヤリモクのキモい奴は散々搾取するに限るよね。」
オレは彼女のヤバい考えにはいつになってもドン引きする。結城様の洗脳の力は恐ろしい。
「ドペール・ファミリーの方は?」
「ああ、そっちの方は少し分かってきたよ。聞く?」
「聞くに決まってんだろ!アホか!」
オレは彼女の呑気な態度にイラつきを覚え、つい怒鳴りそうになった。
「リョーカイ、じゃ話すね。アイツ等はこの町で一番人気のチュウカ料理店をアジトとして活動しているのは有名じゃん?」
「まあ、それでアウトローなマフィア兼一流の料理人として愚民どもから人気を得ているな。」
「けどね、裏の顔はやっぱりマフィアらしく恐ろしい物よ。臓器売買や闇金運営はもちろん、一般人を顧客とした新種の麻薬販売にも手を出している事が分かったよ。」
オレは新種の麻薬開発というのが何故それが必要なのか気になった。ドペール・ファミリーは日本の裏社会に名を轟かせているからだ。資金集めとしては悪辣すぎる手口だし、かと言って我々の様な陣営への対策とするのであれば一般人をターゲットにする必要性が皆無だからだ。
「一体何の為に?」
マンテリーパーもオレと同様な疑問を持っていたらしく、彼女に質問する。
「シンプルな話よ。正義連合による世界征服の第一歩としてここ 横浜を使っているワケ。この町は昔から暴走族とかヤクザとかが繁栄している上に東京や大阪、京都と比べてレジスタンスが少ないから土壌としても完璧だったんでしょうね。」
「新種の麻薬の名はCarnage。その名の通り、ありとあらゆる危険ドラッグをブレンドしていて使用者をたちまちゾンビみたいにしちゃう悍ましい物よ。あと今の状態で戦っても負ける可能性の方が高いよ、詳しくは分からないけれど我々 パンデモニウムの対策手段もあるらしいからね。」
「昔あった麻薬戦争の再現をヒーローがやるなんて私達が思っていた以上に終末へのカウントダウンは進んでいますな。」
マグネボアが虚しそうに言う。その顔はどこか、戦いなくなさそうに見えた。
「ヨシ、ならすぐそこに向かってとっとと皆殺しにしちまおうよ。」
彼とは反対にラビットマホークは斧を顕現させ今にも走り出しそうな勢いで言う。
「オレもさっきまではな、ラビットマホーク。お前と同じ意見だったが今は違う。無闇やたらに行くと返り討ちに遭う事が分かったからな。オレららしいやり方で征こうじゃねえか。」
「奇襲ね、ならば近道はこっちよ。」
オレ達はその為に諸星の言う通りひとまず地下水道に行った。このまま何も気にせず正々堂々と戦闘を行えば、返り討ちに遭うかもしれない。それでは結城様が嫌う蛮勇とさして変わらないではないか、これではこちら側に正義があっても証明ができない。だからオレ的にはやりたくない行動であるが、仕方ない。勝てば官軍、負ければ賊軍だ。
「なあ お んナ モっテんだろ、あノ薬物 ヨコせ ヨこセ よコセ ナぁあぁあぁあ よこせヨォオぁあァ」
ホームレスらしきみずぼらしい格好の男が諸星に縋り付きやがった。目はラリっていて焦点が定まっちゃいねえ。よく見たら肌もおかしい、紫色の痣が全身に広がっていてどこに素肌があるか分かんねえ。なまじ半端に人型を保っているせいでパケモノ感に拍車がかかっている。
「下水には君の大好きなそれが染みていると思うけど?」
ミレナが馬鹿にした嫌な笑顔を浮かべ、煽る。
「たり た 足りネーんダよ?!絞リかスじヤぁ クレねぇ ッて事な ら オ 俺のイ チモツ しゃぶれぇえぇ────────」
男は突然、貧相な局部を晒してミレナに猛スピードで襲いかかった。
「黙れ!トマホークパニッシャー!」
その時、彼の首が宙に跳ねた。ラビットマホークの斬撃が間に合ったのだ。
(ヤベぇな、近道を選んだのは愚策だったかもしれん、だがヤツが来ればそんな事はどうでも良い)
オレは右腕であるアイツが来るのを待った。




