第一話 プロローグ
初投稿です!
「こんな辺鄙な山奥にこそ本当のアジトがあるとはヤツらも思ってはいないのか。フッ、奴らのアンテナは粗悪なスクラップとしかいい様が無いな。」
私、結城 玲司は悪役じみたシニカルな笑みを浮かべ、レモンティーをゆっくり飲み干した。別に特段好きという訳では無いが昼から酒を呑むのも、かと言って格好付けて苦いブラックコーヒーを嗜むのも柄では無い。嬉しい時に中途半端に甘い飲み物で口と心を潤すのが、マイルーティンだ。私の周りには各地から攫い、洗脳した美女達がメイド服を着て群がっていた。
「ご主人様♡」「我々とS◯Xしましょうよ♡」「早く早くぅ」「もう待ちきれませんっ」と口々に卑しい戯言を吐く。こんな下品な様子を楽園とは呼びたく無いが、そう形容する以外の表現を私は知らない。そんな下らない事はどうでも良い、今は奴らを欺けた事実に喜ぼう。
「雑居ビルの一角程度にオイラ達が収まる訳無いなんて事は淡水魚が海を泳げないって事より明らかに分かってる事なのに…なぁ、ライオニックさん。」
「全くだぜ、オルカズン。悪知恵しか働かない状態でご立派な正義を嘯くんだから腹が立つぜ。」
毒々しい緑色のボディとどことなく鯱を想起させる見た目をした人形の謎の生命体がジョークを交えてヒーロー達を嘲弄する。それに反応して、これまた筋骨隆々の漆黒のボディとライオンの様にワイルドな見た目の謎の生命体が現れた。彼らは私が生み出した動植物を想起させる見た目と特異な能力を持つ人型の擬似生命体、凡人にも分かりやすく言えば怪人だ。この2体は私が最初期に手掛けた優れ物だ、並大抵の実力の者では擦り傷をつける事すら不可能。
私たちがさっきから喜んでいる理由はただ一つ、それは何も無い借り物のアジトの内の一つを、ヒーロー達が本拠地と言って乗り込んだという事だ。奴らは私達を長年目の敵していながら、全くと言っていい程分析ができていないのだ。そんな事は露知らず、鼻高々に自慢げにしている奴らの事を私は想像する。この状況はこちら側から言わせてみれば傑作喜劇と遜色ないレベルだ。
「気を取り直して…次の任務である横浜のマフィア ドペールファミリーの壊滅はお前の所に任せるつもりだ、ライオニック。」
「了解した、必ず成功させてやるぜ!」
私の突然の指示にライオニックは嬉々として答えた。