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第5話:涙の共鳴、魔力の発見

あの夜、母リーナに抱かれて感じた透明な流れ。

あれはま魔力だったのではないか。

前世では感じたことがない体内を流れるざわめきを俺は魔力と結びつけた、、それは適性なしと烙印をおされたが故の夢想なのかもしれない。


俺はまだ、あのざわめきを自分ひとりでは掴めない。

母の温もりがなければ、すぐに消えてしまう。


だからこそ、俺は挑んだ。

赤ん坊の体でできる限りの方法で。


まずは観察だ。

母の動き、父の仕草、兄たちの真似ごと。

手をかざす角度。呼吸のリズム。声に込める力。

赤ん坊の小さな目で、必死に追った。


次に模倣。

寝返りもおぼつかない体で、手を伸ばし、声にならない声をあげる。


「あー、うー」


魔法の言葉を真似てみるが、当然火も水も生まれない。


「くっ!」


諦めきれず、何度も繰り返す。

昼は母の炎を見て。

寝る前には小さな手を胸にあてて、鼓動に耳を澄ませる。


けれど、何も掴めなかった。

ざわめきは、あの夜に感じた一瞬だけ。

再現しようとするたびに、虚しさが胸に広がる。


それでも俺はやめなかった。


赤ん坊だからって、諦める理由にはならない。

前世で失ったものは数えきれないほどある。

だが今度こそ、俺は自分で掴みたい。


「役立たずなんて言わせない」


母は当たり前のように火を生み出し、父は力強い背中で家を支え、兄は何も疑わず母の真似をして笑っている。

それなのに

俺だけ、何も掴めない。

この世界に生きるものが持っているはずの力。

どうして俺は感じられないんだ。


胸がぎゅっと苦しくなり、呼吸が乱れていく。

熱いものが目にたまり、頬を伝って流れ落ちた。


「あぁぁああぁぁぁ!」


赤ん坊らしい声で、泣きじゃくるしかなかった。


すぐにリーナが駆け寄ってきた。


「どうしたの、もう、大丈夫だから」


布団をめくり、俺を抱き上げる。

その瞬間、世界がふわっと変わった。


リーナの腕に包まれる。

柔らかい肌、頬に広がる体温。

そして耳の奥で響く、規則正しい鼓動

トクン、トクン。


それはただの音じゃなかった。

大地を揺らす太鼓のように、胸の奥まで染み込んでくるリズムだった。


リーナは俺の背を優しく撫でる。


「大丈夫よ、大丈夫」


その声は、あたたかい泉の水に全身を浸すように、やわらかく広がっていく。


俺は涙を流しながらも、必死にそのすべてを感じ取ろうとした。

肌から伝わる鼓動。

胸の奥を震わせる声の揺らぎ。

背中をなぞる手の温もり。


これが、母の中を流れるもの。

誰もが当たり前に持っている「魔力」という力。


それは鋭いものではなく、冷たいものでもない。

優しく、包み込むように流れている。

母の魔力は、俺を安心させるためだけに存在しているようだった。


「俺も、、俺も、欲しい」


赤ん坊の体で言葉にならない。

でも心の中では叫んでいた。


火を生みたい。

光を掴みたい。

母のように、誰かを照らしたい。


どうしても、

どうしても魔法を使いたい!


切実な欲求が、リーナの温もりと重なっていく。

涙でぐちゃぐちゃになった顔の奥で、心の叫びが魔力を呼び寄せるように膨らんでいった。



その瞬間だった。


ドクン!


胸の奥が大きく鳴り、全身に熱が走った。

今まで何もなかったはずの体の中で、すうっと透明な流れが生まれる。

血でも息でもない。

もっと澄んでいて、もっとやさしく、もっとあたたかい。


これが、魔力。


リーナと俺が重なったその時に生まれた、世界のもうひとつの脈動。


俺の涙と、リーナのぬくもりと、切実な欲望。

そのすべてが混ざり合ったとき、初めて魔力の流れが「繋がった」。


リーナは夜泣きが収まったと思ったのか、安心させるように子守歌を口ずさむ。


「ねんねんころりよ、、」


その優しい声が胸に響くと、不思議なことに俺の中の魔力もゆっくりと巡り始めた。

まるでリーナの魔力と同調しているかのように。

母の鼓動、母の声、母の優しい魔力

それらと同じリズムで。


リーナが優しく頭を撫でてくれた。


「セレン、静かな子守歌みたいに、優しい子になりますように」


その言葉は偶然にも、俺が追い求めるものと重なっていた。


身体の奥に、光が走っていた。


「……あった!」


赤子の声はただのうめきにしかならなかったが、心の中で叫んでいた。


(俺の中にも、、魔力が、、ある!!)


光の筋は、星座のように身体を駆け巡る。

小さな体の中に、確かな「道」が見えた。


「う。うぅ!」


気づけば、頬を温かい雫が伝っていた。

赤子の目から、涙がこぼれ落ちる。


(よかった、、俺は、空っぽじゃなかった、、!)


そのとき、布団の気配が動き、母リーナが眠たげに顔をのぞき込んできた。

「セレン……どうしたの?」


俺を抱き上げ、優しく胸に押し当てる。

「夢を見ているの?」

微笑みながら、額に口づけを落とした。


俺は泣きながら、必死に胸の中で答えていた。


(違うよ、、! 夢じゃない。やっと、やっと見つけたんだ!)


母の腕の中、光の流れはさらに強く脈打ち、

まるで星空が、俺の体内で瞬いているかのようだった。

涙で濡れた顔を母の胸に押しつけながら、俺は小さく笑った。

泣いて、叫んで、欲しがって、抱きしめられて

ようやく掴んだ一歩。


俺の中にもある。

この世界の人間として生きていくための力が。


リーナと同じリズムで流れ始めたその瞬間こそ、俺にとって魔法の最初の一歩だった。


リーナの魔力は優しかった。

冷たくも、鋭くもない。

抱きしめる腕のように柔らかく、歌う声のようにあたたかい。

それが俺の涙に混ざり込み、心に沁み込んでいく。

俺の魔法の始まりは、母と同じリズムの中にあった。




==============================

次回予告


母の温もりの中で掴んだ一瞬の魔力

だが、それはまだ儚く、指の隙間からこぼれる砂のように消えていく。


諦めかけても、涙しても、挑戦をやめないセレン。

繰り返す実験の先に

ついに「流れは続く」瞬間が訪れる!


胸から腕へ、そして再び胸へ。

初めて描かれた小さな輪。

それは、魔力循環という未知への扉だった!


次回:「魔力循環」

儚いけれど、確かな始まり。

セレンの魔法探求がここから本当に動き出す!

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