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第54話: 理性の塔

鐘楼の最上階。

そこは、青白い光と魔導パイプが幾何学模様を描く、異様な空間だった。

中央に浮遊するのは、ディルク・ホロウ。

背中から生えた結晶の翼、半身を覆う機械装甲。

【魔人化・理性形態ロジック・モード】。

「……学習しませんね、君たちは」

ディルクの声が、空間全体から響く。

それは和音のように重層的で、聞く者の三半規管を直接揺さぶる。

「感情で動く者は、いずれ破滅する。

なぜわからないのです? 管理こそが愛だ。支配こそが安寧だ」

「愛だの安寧だの、聞き飽きました」

俺は短剣を構え、地面を蹴った。

「音魔法・斬空」

高周波によって生み出された真空の刃がディルクを襲う。

だが、ディルクは指先ひとつ動かさない。

彼の瞳の中で、光の輪が回転した。

「演算完了。軌道予測、修正」

キィン。

俺の刃は、見えない壁に弾かれるどころか、空中で霧散した。

さらに、俺の足元の床が突然隆起し、鋭い棘となって襲いかかる。

「くっ!?」

俺は身をよじって回避するが、肩を掠めただけで肉が削ぎ落とされる。

「物理防御、魔法防御、環境操作。すべて私の『計算』通りです」

ディルクが手をかざす。

無数の青い光弾が、雨のように俺たちへ降り注ぐ。

誘導弾だ。逃げ場はない。

「『聖域展開サンクチュアリ』!」

セラが俺の前に飛び出し、光の盾を展開する。

激しい衝突音。

盾がミシミシと悲鳴を上げる。

「セレンさん……ダメです!

あの方の攻撃、こちらの防御魔術の『構成式』を瞬時に解析して、一番脆いところを突いてきています!」

「解析されている……?」

「はい。こちらの魔力の揺らぎを見て、次の手を完全に予測されています。

……勝てません。スペックの桁が違いすぎます!」

セラが絶望的な声を上げる。

俺は盾の陰で、荒い息を吐いた。

力押しじゃ通じない。スピードでも勝てない。

相手は、この街中の魔力を供給されたスーパーコンピューターみたいなもんだ。

「……諦めないでくれ、セラ」

俺は汗を拭い、ディルクを睨みつけた。

「計算通り、か。

なら、計算できない状況を作ればいい」

「計算できない状況……?」

俺は、ディルクの「癖」を見ていた。

彼は魔法を行使する時、必ず微小な「詠唱」を口にしている。

そして、周囲の音(反響)で空間を把握している。

「セラ。耳を塞いでいてくれ。

……理論上はいけるはずだ。試してみる」

俺は短剣を納め、戦場の中で静かに両手を広げた。

意識を、敵ではなく「空間そのもの」に向ける。

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