第24話おまけ:ふたりの予兆
雷暴走から
村の空気はまだ少し重かった。
大人たちはノーラを見ると眉をひそめる。
子供たちも遠巻きに彼女を眺めるだけ。
ただ一人、俺だけは違った。
「(……あの時、魔孔が見えた。もし働きかけられたら)」
確信のような感覚が、胸の奥でずっと残っていた。
ある日。
俺が畑の用水路をのぞきこんでいると、背後から声がした。
「ねえ、農民の子」
振り返ると、ノーラが立っていた。
いつものように顎を上げて、そっぽを向いている。
「……わたし、退屈なの。遊んであげてもいいわよ」
「いや、それ完全に上からじゃん」
思わず笑ってしまった。
ノーラはむっとして頬を膨らませる。
「別に……ひとりでいるのが嫌なわけじゃないから」
(……かわいい。強がりすぎだろ)
そのとき。
用水路に引っかかっていた桶が、ぐらりと傾いた。
「危ない!」
俺が手を伸ばすより早く、ノーラが咄嗟に手をかざす。
バチィッ!
小さな雷が走り、桶がはじかれるように元に戻った。
「すご……」
「ふふん。当然よ」
そう言いながら胸を張るノーラだったが、次の瞬間、足元の石に躓いた。
「きゃっ!」
バシャーン!
桶の水がはねて、ノーラのスカートをびしょぬれにした。
「~~っ!」
顔を真っ赤にして立ち上がるノーラ。
「見ないで! 絶対笑うな!」
「ご、ごめん……でも、さっきの“きゃっ”はちょっと可愛かった」
「~~~っ!!」
ノーラは耳まで真っ赤にして背を向けた。
けれど、その時。
びしょぬれのスカートから、かすかに放電が走った。
「……っ!」
ノーラの表情が固まる。
「(また……暴れる?)」
俺は彼女の手首を掴んだ。
「ノーラ、落ち着け!」
一瞬――俺とノーラの魔力が重なった気がした。
胸の奥で、何かが共鳴する。
「……あれ?」
ノーラが驚いた顔で俺を見上げる。
放電はすっと消えていた。
「いま……あなた、何をしたの?」
「わからない。でも……抑えられた、気がする」
ふたりの視線が絡む。
言葉にできない何かが、そこに生まれていた。
「……べ、別に……ありがとうなんて言わないから」
ノーラはぷいっと顔をそむける。
けれど、その耳はほんのり赤かった。
俺は小さく笑った。
「(やっぱり……俺とノーラは共鳴できるんだ)」
胸の奥に、確かな予感が芽生えていた。




