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13話: 母が教育ママ化!? 神話と魔法特訓

2歳になったばかりのある日、

俺は胸の奥で魔力を巡らせていた。

輪を描き、流れを繋げる。何度も繰り返してきた訓練、、

のはずだった。

だが、違った。


「っ!?」


流れが膨れ上がり、胸の奥から堰を切ったようにあふれ出す。

止まらない。巡らせるつもりが、外に漏れ、布団や空気がびりびりと震え始めた。

母が振り向き、目を見開いた。


「セレン!?」


胸から全身へ。

全身からまた胸へ。

魔力が次々と集まり、巡り、あふれそうになる。


「……待て……多すぎる!」


止めようとしても、流れは勝手に増えていく。

効率が良すぎるせいで、俺の体は“魔力を勝手に吸い込み続けて”いたのだ。


(やばい、止まらない!)


次の瞬間、父が飛び込み、俺を抱きかかえた。


「落ち着け! 大丈夫だ!」


ただ魔力を巡らせていただけ。

呪文も使っていないのに、勝手に“外”へと漏れたのだ。

それは赤ん坊の遊びのつもりが、家族にとっては怪異そのもの。


「このままじゃ、またみんなを驚かせてしまう」


抱き上げられる温もりに包まれながら、俺は震えていた。


「……今のは、俺が」


外に漏れただけじゃない。

制御できないほど“あふれ出した”のだ。

赤ん坊の時から魔力を循環させていた俺の体はすでにこの世界の常識を超え始め、魔力を効率よく巡らせすぎるその体質が思わぬ形で牙を剥き始めていた。


~

まず試したのは、魔力を外に逃がすこと。

胸で輪を描き、指先へ流し込む。外へ押し出すように意識する。

何も起きない。

風も動かず、火も揺れない。


「だめか」


2歳児の小さな体では、意識だけで外に出すのはまだ無理だった。

次に試したのは、魔力を“溜める”こと。

胸の輪に押し込んで留めると、じんじんと熱を帯びる。


「これは」


苦しい。だが確かに圧縮されている感覚があった。

ならば

練ってみるのはどうだ。

溜めた流れをかき混ぜ、磨くように回す。

二重、三重の輪を重ねると、不思議と苦しさは和らぎ、流れが濃くなった。


「練れば、濃くなる」


暴走を防ぐ術であると同時に、力を高める手段。

俺は魔力の基礎を掴み始めていた。


だが練れば練るほど、副作用が出た。


「お腹が、、減る」


授乳はもう終わっていたが、普通の食事では足りない。

母に抱かれると、前よりも強く食べ物を欲し、泣いてしまう。


「セレンは本当に食いしん坊ね!」


母は笑って頬ずりし、父は肩をすくめて言う。


「農家の子は食べるのが仕事だ。頼もしいぞ」


二人は気づいていない。

俺の中で効率が異常に跳ね上がっていることを。


~

俺の体は目に見えて変化していた。

歳の離れた兄たちに付いて周り、木のおもちゃを力強く握り続ける。

布団の端を引き寄せ、庭石に登ろうとする。


「体力まで増えてきた?」


魔力を練るたびに、体が鍛えられていく。

ハードウェアがソフトウェアに最適化されるように

肉体が魔力に最適化される。

前世で言えばそんな感覚だった。


そしてその頃、母リーナの“親バカ旋風”はさらに過熱していた。


「セレンは天才魔法使いになるのよ!」


夜は神話の読み聞かせ、昼は「セレンも魔法を使えるんだからね」と言い聞かせる。


だが母は止まらなかった。


「村の教会の神父様なら、もっと魔法のことをご存じよね!」


そう叫ぶやいなや、俺を背負って家を飛び出した。


「おいリーナ、教会までどれだけ距離があると思ってるんだ!」


父の制止も聞かず、「セレンの未来のためなら遠くないわ!」と笑顔で返す。


~

教会は白い石壁の礼拝堂。

ステンドグラスの光が床に落ち、静かな祈りの空気が漂う。


出迎えたのは、温厚な老人オルド神父。

静かな語り口で知られ、「物語は生きる力」と子どもたちに語りかける村の語り部でもあった。


「あなたの赤子に魔法の才があると?」


「はい! この子、魔力を揺らして見せたんです!」


母は力いっぱい訴える。

俺は背で揺られながら「うー」と声を出すしかなかった。


オルド神父は顎を撫で、静かに答えた。


「セレンは確か、属性適正なしだったはずだが。

四大属性以外の属性が備わっていることもあり得ますが、血筋が農民の子、いや、、これは失礼。

ですが…うーん、セレンの場合は魔法より健やかに育てることの方が大切なのでは。」


普通なら帰る場面。

だが母はぐいっと前に出た。


「でも! 今からできる練習はありませんか!?」


「い、いや」


神父は困惑のあまり目を白黒させた。


結局、「赤子のうちは魔力を感じさせる環境を整えると良い」というあいまいな助言を引き出し、母は大満足だった。


「ほらね、やっぱり特別な子なんだわ!」


俺は背の布の中でため息をついた。


(母さん、行動力ありすぎだろ)


~

その日から魔力を感じるための教育が始まった。

囲炉裏の火の前に座らされ、


「セレン、炎をよーく見るのよ! これが火の魔法!」


桶の水に顔を近づけさせられ、


「ほら、水の冷たさを感じて!」


風が吹けば外に連れ出され、

「木々のざわめきが風の力! ちゃんと感じなさい!」


母は大真面目。

端から見れば、2歳児を振り回す親バカ劇場だった。

父は苦笑し、兄たちは「母さんやりすぎ!」と笑い転げる。

だが俺にとっては

これこそ最高の訓練。

炎の揺らぎ、水の澄んだ流れ、風のざわめき。

胸の魔力と自然の脈動が重なり、確かな共鳴が生まれていく。

その夜、布団で母に抱かれながら思い返す。

炎の記憶、水の涼やかさ、風のざわめき。

胸の奥で輪を描き、それらを重ねると

ふわりと空気が震えた。


「セレン?」


母の瞳が見開かれ、次の瞬間、笑顔に変わった。


「やっぱり、セレンは特別な子なのね!」


頬ずりされながら、俺は心の中で苦笑した。


(母さん、勘違いだけど、でも、ありがとう)


母の笑顔のために。

そして自分の探究のために。

俺は魔力を練り、圧縮し、外へ響きを放つ訓練を繰り返した。

失敗ばかり。

暴発で布団が揺れ、涙目になって母を呼んでしまうこともあった。

だが少しずつ、“外に干渉する感覚”を掴み始めてい



===================================

次回予告


貴族に浴びせられた罵声、母の涙、そしてマルタ婆の厳しい忠告。

それでも母は諦めなかった

子の未来を信じる心だけは折れない。

村長の家で出会うのは、木剣を背負った少年・アルト。

小さな邂逅は、やがて大きな運命の歯車を回し始める。


次回、第15話「母の涙」

赤ん坊セレン、ついに“外の力”へ挑戦!?

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