女性Aの話
(無音が続く)
…………はい、馬場希海です。はい、高校生です。
はい? 怒ってる? 私が? いや怒ってませんって。ただ、いきなりこんなところに呼びされて、あなたと二人きりになるなんて。しかもあなた、誰ですか? ……え、うちの学校でいじめが報告されたから、あなたを呼んだ?(椅子が軋む音)
分かりました。ええ、まあはい、私が目撃した……というより、そのあんたが言ってるいじめに関わってます。はい。
なんか素直だなって思ったでしょ? まあそりゃあ……私、あの場に居るはずなかったし、ちょっとヤバい人が居たからね。うん。腕とか手首とか、あと首とかにチャラチャラとしてたもの付けた、そうそうそう、いわゆる、不良、って感じ? そんなヤツが私んちのところにいきなり来て、相手をボコり始めたわけ。
私もよく分かんないさ。ただ私んち……私と、もう一人私の女子友達と、男友達が二人。全員、あんまり悪い奴じゃないの。そう。いじめするようなヤツじゃないの。それなのに、あいつのせいで場がめちゃくちゃになったの。
え、信じられないって? (溜息)あー、もう、分かったよ。これ見せれば良いでしょ? ほら。(スマホをいじる音)これで分かった? あいつがあの相手をいじめ始めたせいで、私んちにも責任が出てるのよ。
……だからちょっと、あの相手には申し訳無いなって。もしも私んちが止めていれば、あんなことにはならなかったのかなって。そう、その相手の人、先輩が首絞めたら──(ドアをノックする音)あ、ごめんなさい。誰か来たのかな。
え、来てない? あれれ、おかしいなあ……。
そういうわけで、私が話せるのは以上ですね。はい。あの人の分まで、よろしくお願いします。はい。お疲れ様でした。