20、兄妹の境界線2
ショッピングモールを出て繁華街をうろついていると、町全体が浮き足立っているようだった。クリスマスソングが流れ、サンタやクリスマスツリーの飾りつけが至るところで目に入ってくる。
そして、サンタと同様に、至るところでセールの文字も飛び込んできた。
「どこもセールだな」
思わず口にして横を見たら、隣にいたはずの成海がいない。
(どこいった!?)
慌ててキョロキョロしていると、
「可愛いお店~っ」
と言いながら、成海が雑貨店へ入っていくところだった。
実は、映画館を出てから、幾度となくこれが続いていた。他の方向を見ていた俺は、慌てて成海を追いかける羽目になる。
愛実とデートをしていた時は、愛実が俺の腕に勝手にくっついていたので楽だったが、成海の場合はとにかく目が離せない。
俺はとうとう我慢ならず、成海の服を掴んで止まらせた。
「待てぃ!」
「うわっ、なに?」
振り返った成海は、不思議そうに見上げてきた。そういえば、さっきもこんなことがあった。めちゃくちゃ不便だ。
「成海、俺の服を掴んで歩いてほしい」
「なんで?」
「急にいなくなったら困るから。入りたい店があったら、俺の服を引っ張って教えるように」
すると成海は、
「それじゃあ、お兄ちゃん犬みたい」
と言うと、にひっと笑って、俺の手を握ってきた。
ビックリした。なんて小さくて柔らかくて、しかもあったかいんだろう。冬とは思えない温かさだ。
成海は俺を見上げて満面の笑みを浮かべた。
「手を繋げばいいと思うよ?」
「…………」
「仲がいい兄妹ならこれくらいすると思うよ?」
めちゃくちゃだな、と言おうとしたが、
(確かに手を繋ぐのは普通か)
と、思えてきた。なにより、成海の手のあったかさに驚いた。
「……成海の手はあったかいな」
「成海は平熱もちょっと高めの六度五分なんだよねー。お兄ちゃんの手は冷たいなぁ。成海の手であっためてあげよう!」
成海に手を引かれ、俺たちは手を繋いだまま雑貨店に入った。
店内には疎らに客が入っていた。所狭しと飾られた雑貨を、二人でのんびりと見てまわる。
すると、成海はあるコーナーで、ふと立ち止まった。そこには、五センチほどの大きさのぬいぐるみのキーホルダーが、わんさか壁に掛けられていた。
「可愛い~っ!」
満面の笑みを浮かべて、成海はしゃぎながら真剣な眼差しで玩味していく。
そして、様々な動物の中から、シマエナガのぬいぐるみのキーホルダーを手に取った。ペアになっており、二羽の内の一羽はこめかみに赤いリボンが付いている。どうやら、こちらがメスのようだ。
「これ欲しいっ! 今のキーホルダー、傷だらけになってたし、次はこれにしよう~」
初めてお揃いで付けたキーホルダーは、北海道旅行で成海が選んだマリモのキーホルダーだった。
次に、広島へいった時の厳島神社で買ったキーホルダーだったが、これも傷だらけになっていた。
そんなわけで、三代目はシマエナガのぬいぐるみのキーホルダーになったようだ。
雑貨店を出て、二人で近くのベンチに座り、買ったばかりのシマエナガをカバンに取り付けた。成海のカバンにリボンの付いたメスが、俺のNEW ERAのリュックにはオスが、それぞれ楽しそうに揺れていた。
「荷物、見てて」
成海に言い置き、そのままトイレに行く。
用を足して、ベンチに座っている成海に近づこうとしたら、成海は、俺と成海のシマエナガをキスさせていた。いつもみたいに、えへへ~っと幸せそうに笑っている。
(めっちゃ可愛い)
思わず笑ってしまう。
血は繋がってないんだし、難しく考える必要はない。お試しで付き合ってみればいいじゃないか。
妹がカノジョになるだけだし――
そう思った瞬間、何かが壊れるような恐怖に似た感情が湧いてきた。
このまま突き進んでいったら、どうなってしまうんだろうという恐怖だった。幸せな感情ではなかった。他の女性には感じないものだった。
これ以上、考えたくなくて、逃げ出したい衝動に駆られた――
読んでくださって、ありがとうございました。
遅くなって、すいませんでした。
次回に続きます。




