姫様 ルーア視点
私の名前はルーア。精霊の王子で光を司る大精霊、リヒト様の眷属で、月を司る上位精霊。
200年前のあの日、私は精霊城を用事があって離れていたから、なんとか人間界の聖域に逃げ込むことができた。聖域とは、人間界にある精霊の棲み家のこと。人間は入ってこれない。
すぐみんなを助けに行こうと思ったけど、インティアスが壊れて、ルクレツィア様が捕まって、私の力もほとんど残っていなかった。
元々聖域にいて、水鏡で精霊城を見ていたという精霊から、姫様だけはルクレツィア様の力によって逃げ切ったのだと聞いた。だから私は、生まれかえった姫様を全力でサポートし、必ず精霊界に戻るのだと誓った。
200年後、姫様は憎きリーヴェンス王国の公爵令嬢として生まれ変わった。私は私の加護を授け、それまでに集めた情報をお伝えした。でも、力が回復しきっておらず、声でしか姫様のサポートができない。それが歯痒くて仕方ない。
それでも私がいて心強いのだと言ってくださる姫様のためにも、一刻も早く力を取り戻さなければ。
――姫様が3歳になり、王との謁見の日がやってきた。
姫様は、すっかり口調が変わっており、誰が見ようと完璧な貴族令嬢だ。
王との謁見の後、王子たちと会って、第一王子のことが気になっていた。
第一王子と話す姫様は、まるで昔に戻ったようだった。
「ねぇルーア。ジオルドはあの男の子孫だけど、あれとは全然違ったの。とても優しくていい王子だと思った。リーヴェンスの王族だけど、この世界でできた初めての友達だよ。」
ああ、本当に姫様、レナーテ様に戻ってる。
「姫様、口調が戻られましたね。」
「うん!ジオルドが、気付かせてくれたの!」
「安心いたしました。今の姫様は、姫様です。」
「あはは!どういうこと〜?」
「とても素敵なお姿だということです。友達を、お大事になさってくださいね。」
「…うん!」