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世界の狭間で  作者: 如月 むいか
第1章
5/10

第一王子ジオルド

「それではアステリア嬢、私は執務に戻るが、其方はどうする?帰っても残っても構わないが…」


「一度下がらせていただきたく思います。」


「そうか。今日はご苦労であったな。」


「またきてね。」


「絶対だよ!なるべくはやくきてね!」


「……」


「ええ、またね。」


 まだ帰るつもりはないけれどね。



―――



「では兄上、僕も下がります。」


「う、うん。」


「兄上ー!じゃあねー!」


「うん…」


 1人になったわね。


 偶然を装って話しかける。


「ジオルド殿下?」


「わっ!あ、アステリア様…」


「様などと…呼び捨てで構いませんわ。」


「わ、わかりました。それで、あ、アステリア、はどうしたのですか?帰ったのでは…」


「そうなのですが、忘れ物をしてしまいまして。取りに戻ってきたのですわ。」


「え、自分で?」


「はい、これくらい自分でやりますわ。」


「そ、そうなんですか。あの、」


「なんでしょうか?」


「口調、崩して大丈夫ですよ。素じゃないですよね?」


「え?」


 素じゃない?そんなことないわ。だっていつもこの口調で…


「なんだか笑顔が笑顔じゃないように見えて…って、ごめんなさいこんなこと言って!」


「謝らないでくださいませ!素じゃない…そうなのかもしれません。いつの間に自分を見失ってしまっていたようです。気づかせてくださって、ありがとうございます。」


「は、はい。あの、やっぱり口調崩してください。」


「ありがとうございます。いえ、ありがとうジオルド。あなたも、口調崩してね。」


「え、っと、分かった。」


「ふふふ。そういえば、どうしてジオルドだけ残っているの?他の王子はもう帰ったようだけど…」


「……僕が2人と一緒に帰ったらおかしいから。」


「どうして?ジオルドは第一王子でしょう?2人のお兄様じゃない。」


「そうだよ、でも僕は、無能の第一王子だから。お荷物王子だから。」


「……誰かにそう言われたの?」


「みんな言ってるよ。ジュリアスとジルベールはなんでもできるのに、第一王子は何もできない無能王子だって。2人のどちらかが即位するのを邪魔するだけのお荷物だって。でも、本当にその通りだよ。僕は2人が完璧に出来ていることのなに一つも満足にできないんだ。だから、何を言われても仕方ないんだ。」


 ああ、分かった。この王子は、自信がないだけなんだ。


「ジオルドは、優しいんだね。でも、とっても我慢してるよね。たとえ雑に扱われようと、自分の気持ちに蓋をして、全部自分のせいにしてしまう。言えないんだよね、優しいから。自分が我慢すれば、それで済むと思って。でも、そのままじゃ貴方は、いつか壊れてしまう。そのままじゃ、いつまでも幸せになれないよ…」


「優しい、なんて。そんなことないよ。僕は、自分に言い訳して、自分を守ってるだけなんだ。それに、僕が無能なのは本当なんだ。どんなに頑張っても、弟たちみたいに完璧にはなれない。」


「ジオルドは、自分は無能だって、自分に言い聞かせてるんじゃない?そんなこと思ってたら、ずっと成長なんてできないよ。自分ならできるっていつも思ってないと!そしたら自然にできるようになるよ!」


「そう、なのかな。僕、ジュリアスたちみたいに、完璧になれるのかな。」


「ジオルド、大事なのは、“完璧“じゃなくて“ひたむき“にこだわることだよ。最初から完璧を目指さなくていいの。とりあえず頑張ってみよう?いつか絶対自分を誇れるようになるから。」


「本当に?」


「うん、私を信じて!」


「…うん!」


 ジオルドは、ステルベン・リーヴェンスの血を引く王子。


 だけど、あの男とは違う。弟との差に打ちのめされて、何を言われても、一人で耐えてる。


 そうだよね、血を引いているからといって、あれとは違う人間。


 いつから一括りにしちゃってたのかなぁ…

 

 それにジオルドは、本当の私を思い出させてくれた。


 ありがとう。


 こうして私とジオルドは、生まれて初めての親友ができた。


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