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07運営とライバー

 やっと事務作業を終えて帰宅したのが0時を過ぎた頃。

くたくたになりすぎて帰宅即ビールを決めると、適当に服を脱ぎ散らかしてベッドにダイブする。

今日は他事務所との会議ということもあり、スーツだった。

スーツのなんと窮屈なことか。動きずらいったらありゃしない。

ブラジャーすら邪魔で脱ぎすてて、パンイチにTシャツ。これこそ最強の部屋着だと私は思う。

 横になりながらスマホをいじる。今日はおはるが配信する日だ。


『もうすっごい喧嘩してたわー。社員さんとマジ合わない』


 開幕からそんなおはるの声がして気が滅入る。

おいおい、配信で運営批判はやめてくれ。

リスナーに何を言われるかわかったもんじゃない。

それに愚痴やリアルな話はリスナー離れにも繋がる。

ため息をはきながら、おはるに話題を変えるようにメッセージを入れる。


『あ、ちょっとまって。マネちゃんからメッセージきた。

うん、そうなのー♡ マネちゃんは本当に優秀でさ♡ もうね、ちょー好き♡

好きすぎて抱かれたい、もしくは抱きたい♡』


 思ってたのと違う方向に話題がそれていく。

運営批判の話題はあっという間に私の話題に変わったが、あまりに愛が溢れすぎてて耳も胸もきゅっとなる。

 画面の中で、ピンク色のロングヘアの少女が愛の言葉を垂れ流し続ける。

唐突にはじまった百合惚気話に、リスナーたちのコメントもピンク色に染まり始める。


『スパチャありがとー♡

おはるさんは百合なんですか? もう百合でいいよ、あたしゃ。

今まで女性のことスキーってなったことはないけど、マネちゃんはまじで好き♡

まじで、この前告白したもん』


 コメントでは『キマシタワー』とか『告白したのか、俺以外のやつに……』なんて流れている。

ま、まぁ、百合営業していると思えばいいのか。

リスナーも急な百合営業にテンションあがってるし、これはこれでいいのかも、しれん。

ただ一応、演者ではない私のことをあまり触れられてもアレなので、再度メッセージを送る。


『あ♡ またマネちゃんからメッセージきちゃ♡

あんまり私の話出すなだって! えー無理無理、今日はねもう愛を語る配信にするよ♡』


 やめろ。私は裏方でいたいんだ。

 リスナーも盛り上がるな。

でも、ちょっと嬉しい気もする。

 過去、私も一時期配信をしていたことがあった。

そんな過去も買われて今の事務所に入ったのだが――、こうやってたくさんの人に囲まれて配信できるなんて羨ましいなってたまに思う。


『いっつもマネちゃんが運転してくれるんだけどさ、私助手席にすわって永遠に横顔眺めてるもん♡

まじ彼女ポジ♡ 運転してる顔もしゅげーかっこいいの♡

マネちゃんタバコも吸うんだけど、もー色っぽいお姉さんって感じでさ♡』


 止まらぬ話題。止まらぬコメント。

コメントが増えると、コメントを読まれたいという自我の強いリスナーがスパチャを送り始める。

次第に増えていくスパチャに、これはこれでありなのかもしれないという私の中の運営部分が顔を出す。

今の配信はスタジオも借りていないし、特別な企画をしているわけではない。

それでも、話題ひとつでここまでスパチャが飛ぶのならばいいじゃないか。

リスナーも喜んでいるし、Win-Winな関係になっているんじゃないか。私たち運営含め。


 ビールを飲み干してしまったので、ボトルのお酒を開ける。

今日はテキーラでも飲もう。だって明日は休みだし。

おはるの配信を子守唄に、睡魔に誘われよう。


『ねー♡ 明日休みだし、マネちゃんデートに誘ってみようかな♡

えー、緊張するー! え、なんて送ればいい?! なんて送ればいいかな!?』


 私が配信を聞いていることを忘れているのだろうか。

ちらりコメントを見れば、ああすればいい、こうすればいいと指導が飛ぶ。


『きゃー♡ 送っちゃった♡ え、まじ、ちょっとドキドキなんだけど!』


 スマホを確認すれば、配信とは違う素のおはるのメッセージが届いている。


“明日おひまですか?”

“よかったらご飯でも行きませんか?”


 普通というか、普通過ぎて逆に乙女というか。


『はー♡ めっちゃどきどきする♡ あ、既読になった! 手汗やべぇ!』


 配信も盛り上がっているし、ここはエンタメとして受け取ろう。

私の一言で配信が盛り上がるならおおいに結構。

ただ、もう睡魔が私の肩を叩いているから、このメッセージで終わらせてくれ。

メッセージを、おはるに送る。


『ぎゃぁあああぁあ! 返事きちゃ! 行ってくれるって! うおおおおおおおお!

ちょっとまぢ、勝負下着着ていくわ!』


 配信を閉じる。

今日はお風呂に入っていないし、メイクも落としていない。

でもさすがに疲れた。


 明日行くっていってしまったけど、何をしよう。

今更ながら、私はおはるに告白されていたことを思い出していた。



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