第一話 「起きるとそこは」
目覚めると日本では見ないような金髪美女が俺をのぞき込んでいた。
…いやお前誰だよ。
隣にはイケメン系の茶髪男性が笑った顔を俺に向けている。
第一印象は筋肉が凄いヤツ。
顔も整っているし、髪も俺でも染めたものではないとわかるくらいきれいな茶髪。
こういうのが主人公系イケメンというのか。
っていうかお前も誰だよ。
「――――――――」
女性が俺に何かを言ってきた。
聞き取れないと思った。
何を言っているのかがよくわからない。
日本語を話してないのか?と思った。
「――――――――――」
男性も女性に向かって何かを話している。
やっぱり聞き取ることができない。
「――――――」
別の人の声も聞こえた。
姿は見えないのだが。
「あー、あー、うー」
ここはどこ、君たちはいったい誰と言おうと思った。
だが口から出てきたのはよくわからない音。
同時に体を動かそうとしても動かない。
何にも動かせないのだ。
(事故の後遺症なのか・・・?)
あの大事故だ。
脳震盪、全身打撲、内臓破裂、脊髄損傷、半身麻痺くらいにはなっていてもおかしくはないだろう。
手足だってあるかどうかも分からない。
後遺症だって残るに違いない。
記憶を忘れて言葉がわからなくなることもあるだろう。
「―――――――」
男がなんか言った。
なんのことだろうか。
そういえばなんで俺はここにいる?
入院費用とかは誰が払ってくれたのだろうか。
俺の家族か?
いやでもこの前親に対して今世紀最大の喧嘩をかました後だし、家族仲は険悪のはずだ。
そんな奴らが金を払ってくれるとは思えない。
葬式くらいならしてくれる可能性はあるが。
それにしてもやけにこの部屋静かだな。
病院ならもうちょっと車の音とか聞こえるはずなんだが。
そんなことを思っていると男に持ち上げられた。
マジかよ、俺体重50キロはあったと思うんだが…。
まさかの何十日も眠ってて体重が激落ちしているとか…?
ダイエットしたいとは思ってたけど、それはそれでなんかいやだなぁ。
起きたと思ったら人生ハードモードじゃねぇか。
(地獄すぎるでしょ…。)
そんなことを思っていると、男が俺を持ち上げたままどこかに行った。
そこにあったのは鏡、男は俺を持ちながら目の前に立った。
そこで俺が目にしたのは、鏡に映った自分の姿…ではなく、男に抱えられている赤ん坊の姿だった。
(…………え?)
意味が分からなかった。
俺は16歳の陰キャオタクのはずなのに、赤ちゃん?
いやおい、なんでだよ。
目覚めた初日。
俺は現実を知った。