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月影映る  作者: 林伯林
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 静音は、快適に整えたシェルターの中でまずは風呂に入った。

 湯船の縁に頭をもたせかけるとそのまま寝入りそうになる。

 微かな振動音を感じて目を開ける。

 外した腕輪はテーブルの上に放置してあった。

 ---静音

 頭の中に声が響いた。

 「なんです?」

 眠たげな声で静音は返事をした。

 ---何故腕輪を外した。

 「浄化は終わりましたでしょう」

 ふわ、と欠伸をしながら静音は答えた。

 「もう私に用もありませんでしょう」

 ざばりと湯から上がる。

 ---私とも縁を切るつもりだったか。

 手早く身体を乾かし、透明な仕切りを越え(シェルター内の部屋は全てこれで仕切ってある)、収納空間から化粧水を取り出した。

 シールドを張り続けている限り、静音に化粧品は必要ないが、ある村を通りかかった際、大量の薔薇水が作られているのを見て、香りが欲しくなり、調度品を買いまわった時についでに寄って購入した。

 蒸留水で更に薄めたので香りは微かになったがその程度で満足だった。

 ばしゃばしゃと浴びるように顔や首や胸元や腕までつけて深く息を吸った。

 ---静音

 下着をつけていつもの黒いワンピースを被った。

 「こうやってお話出来てしまう以上、腕輪の有無は関係ありませんでしたね」

 ワンピースの上にローブを羽織り、靴下を履いてスニーカーに足を突っ込んだ。

 ---寝ないのか?

 「竜の死体を回収に。忘れてました」

 言うなり転移した。


 竜の躯は眉間の傷以外は綺麗な形で残っていた。

 魔力視でスキャンして魔核の位置を確認すると魔力糸で最小限の切れ目を入れて取り出す。

 魔核の色は透明だった。

 「この竜、いただきますね」

 静音は言うなり、魔力糸で解体を始めた。

 鱗をはぎ、皮をはぎ、内臓を取り出す。

 内臓は驚いた事に石化を始めていた。

 「「作られた」竜の難点ですかね」

 静音の呟きに、暁の神官が何か言いかける気配がした。

 ふふふと笑って静音は竜の部位を次々と収納空間へ格納していく。

 ---どこまで気が付いている。

 暁の神官の声は震えているように感じたが、気のせいだろう。

 念話は物理的な影響は受けない筈。


 おや、と静音は手をとめた。

 ぐるりと周囲を見回して、二、三度瞬きする。

 ---どうした。

 はた、と静音は我に返った顔をした。

 「いいえ」

 首をかしげてはいたが、再び作業に移った為、神官はそれ以上追及はしなかった。

 出来なかったと言うべきか。

 ---もう一度聞く。どこまで気が付いている。

 詰問に、静音は笑う。

 「あなたがあんなものを私につけさせるから」

 静音の左腕にはもう腕輪は嵌っていない。

 ---それで気が付いたと?

 「こちらへ来てから、色々なものを疑ってかかるのが習い性になってしまいましたしね」

 ぼんやりと、静音は、暁の神官との邂逅を思い出した。

  


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