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月影映る  作者: 林伯林
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 静音は本当に久しぶりにぐっすりと眠った。


 眠る前、遠征で通った街のうち、遠い所へ魔力糸で移動し、テーブルや椅子、ベッドや寝具等を購入した。気に入ったものが見つかるまであちこちの街へ移動した。

 魔核や魔物の部位を売れば、そこそこの対価が得られることを学習していたので、水蛇の鱗を換金した。どさくさに紛れて一枚はぎ取っておいたが、結構な金になった。喉元の鱗は値が高いらしい。足りなければ森へ出て二、三体狩ってこようかと思っていたが必要なかった。

 大荷物を商人は当然配達すると言ったが、静音は構わず収納空間へ格納した。

 皆目を丸くしていたが、呆然としているうちに静音はさっさと立ち去った。もう隠す気はなかったが、騒がれるのは面倒だ。

 それらをシェルター内に設置し、ベッドの上を羽根布団(一番高価だった)でふかふかにして、静音は熟睡した。


 次元の狭間は時間の流れが違うらしく、盛大に眠って出てきたが、五分も経っていなかった。

 何故わかったかというと、村の中心の鐘が鳴ったからだ。

 この国は朝の六時から三時間おきに金が鳴る。

 日の傾き方と鐘の数からして夕方の五時だった。五時だけ変則的に鐘が鳴るのだ。元の世界と同じく退勤時間なのかもしれない。

 丸一日寝たのでなければ、時間の経過は殆どない。

 午後から買い物に出たりシェルター内を整えたりした事を思えば、なんとなく一日得をしたような気分になった。


 起きたからにはアリバイ作りでもしておこうかと、隠遁をまといながらのんびり広場に戻ってみて、驚いた。


 テントが倒れていた。


 設営の仕方が悪くて倒れたわけではないのは、踏み散らされた跡を見ても明らかだった。

 そろりと周囲を見回してみたが、騎士たちのテントの裏に当たる場所であったためか、確かに殆ど人目は無い。多少騒いでも、気づかれにくいだろう。

 いつもと違って適当に「目立たぬ場所」を選んだ静音の落ち度ではあった。


 しかし、この中に実際に寝ていた場合、どうなっていたのだろう。


 常に魔力シールドをまとっている為、怪我をすることはなかったろうが、それが無ければ蹴られ踏まれることになっただろうか。


 少し前までは、陰湿ではあったがここまで暴力的ではなかったように思う。

 何かあっただろうかと考えたが、王子や側近と以前より会話するようになった事くらいしか思い当たる節が無い。

 もう一度周囲を魔力糸を出してぐるりと撫でてみた。

 物陰から倒れたテントをうかがっている人間がいた。

 魔力視で見ると、少女が一人、またしても青い顔をして隠れていた。

 以前、下剤を仕込んだ器を渡してきた少女ではなかったが、似たような立場の子なのだろう。静音がショックを受ける様を報告する為にここにいる。あるいは戻ってきた事を急いで報告する為か。

 「隠遁」を解くことなく、静音は小屋へ戻った。


 従者は静音の少し離れた所をついて歩いていた。

 あの有様のテントも見ただろう。


 静音は汚水槽の水を蒸発させ、崩してならした。

 トイレの中の浄化の魔法陣も崩して、潰した便器の下に埋めた。

 シェルターは開口部を閉じて、時空の狭間へ押し込んだ。


 全てが終わると、綺麗にならしたむき出しの地面に魔力で文字を刻んだ。

 雨など降って濡れて消えないようにコンクリートのように固めた。





 深呼吸をして、壁板の隙間から見える火山の頂上へ転移した。





 静音が消えた事に最初に気が付いたのは従者だった。

 すぐさま報告が上げられ、王子たちが村はずれの小屋へ踏み込むと、むき出しの地面に刻まれた文字を見た。




 ---魔物より人間の悪意に命の危険を感じるので、この先は一人で行きます。浄化は最後まで行いますのでご心配なく。




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