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月影映る  作者: 林伯林
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03



 さてこの世界では誰も持ちえない力の持ち主であると証明された途端、王城の一室で保護と言う名の軟禁が始まった。

 魔導士部隊と近衛からは手練れが派遣され、日々魔法と剣の手ほどきを受ける。

 本を読ませてくれと言った所、この国の伝承を集めたものが持ってこられた。

 何故か文字は読めた。

 言葉が通じるのであれば不思議はないのかと思いはした。

 世話係が一人ついた。

 こちらの世界のことが何もわからないのであれこれ質問し、多少めんどくさがられながらも答えてもらいつつ、責任者と話がしたいと申し入れた。

 やってきたのは宰相補佐と名乗る男だった。

 「連れてこられたのも理不尽なら扱いも理不尽だが、事が終わったら元の世界に帰してくれるのか」

 根本的な問いを問う。

 「無論だ」

 男は無表情に答えた。

 果たしてそれを信じて良いものか。


 疑い深そうな顔をしたのが問題だったのか、それからすぐに遠征隊を組織して「魔をはらう」旅に出ろと言われた。


 魔法も剣も全く使いこなせていない状態で不安だとうったえると、浄化の力は備わっているのだから、それ以外は遠征隊に任せれば良いと言う。

 それぞれの専門家を用意していると。

 そして紹介されたのが、剣士ガイキと魔導士アリオだった。

 ガイキは金髪の大男だった。

 静音では持ち上げることも出来ないだろう大振りの剣を背中に背負っていた。

 グレイッシュブルーの瞳でこちらを見下ろしながら、値踏みするような、戸惑うような、いぶかしむようななんとも言い難い表情をしていた。

 アリオは攻撃専門の魔導士だという。

 回復や治癒はそれが得意な魔導士が別にまたつくらしい。

 気難しそうな男だったので、道中の魔法指南は諦めた方がいいだろうかと静音は思った。

 剣よりは魔法の方が短期習得の見込みがありそうだと思えたのだが面倒事は避けたい。


 世話係は女性だったが、彼女は遠征にはついてこないという。

 そもそも遠征隊の中に女性はいるのだろうか。

 尋ねてみたが定かではないという。

 「騎士の中にも女性はいますし、魔導士隊の中にもいます。全くいないということはないと思いますよ」

 彼女、アンナはそう言った。

 とはいえ、それぞれ職務があるだろうし、自分でできることは自分でしなければなるまいと考えた。

 なるべく着替えが楽な服と下着を数枚、魔導士の着ているようなローブを用意してほしいと言うと、その日のうちに揃えてきた。

 「楽な服」は黒いワンピースだった。

 男性が穿くズボンと丈夫なブーツもリクエストしておいた。

 荷物をどうやって運ぶのか尋ねると、馬車を使うらしい。一個小隊が移動するのだからそれも当然かと思う。

 一人当たりの荷物の大きさは決められているのでそれ以外で持って行きたいものは自分で運べという。

 こちらへ来るとき持っていたバッグは中身ごと、持って行こう。

 着ていた服もシャツは使いまわせそうだし、スカートもくるぶし丈のフレアでさほど違和感ないだろう。靴も通勤時はスニーカーだったので使える。

 その他タオル代わりの布等、一通りの準備はアンナが支度してくれた。


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