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「暁の神官に会って祝福を受けたらしいですよ」
学者はへらへら笑いながら王子に報告した。
王子は胡乱な目を向けた。
「あれは与太話ではなかったのか」
「与太話に見せかけた、かなり正確な手記なんじゃないでしょうかね。火魔獣に続いて水蛇まで出たんですから」
学者は静音に聞いた事をざっと王子に話して聞かせた。
崩れた神殿で暁の神官に会った事。
尋ねた事には殆ど答えが得られなかったこと。
一方的に頭の中にこの世界と魔沼の知識を流し込まれた事。
神官が人ではない事。神の使者と名乗った事。
帰還を願ったが「今は出来ない」と言われた事。
威力の程は定かではないが、細かく制御できる水と風と治癒の魔法が使える事も付け加えた。
「本人曰く、旅しているうちに徐々に使えるようになったそうです」
王子は腕を組んで考え込んだ。
「神子の力に目覚めつつあるのか?」
「わかりませんね。神聖魔法の本質は不明なのです。判断は誰にもつきません」
そう、神子の魔法は神子だけの物であり、それがいかなるものかは誰にもわからないのだ。
伝承と資料には「強大な治癒と浄化の力を持っていた」事だけが記されている。
「それについては暫くは様子見としておこう」
「で、知識とは具体的にどういったものなんだ?」
「本人が何も語りませんでしたので。まあ「あなた方は私が無知のままの方が都合がよかったのでしょうけども」と皮肉をかまされましたし、相手は神の使徒らしいですし」
王子は渋面をこしらえて天井を睨んだ。
扉を叩く音がして、二人は顔を上げた。
領主の訪いを告げる声がした。
「こちらが水蛇の魔核になります」
領主と騎士たちが運び込んできた素材一式とともに、水色の親指大の石が運び込まれた。
「主に戦われたのは魔導士殿と学者殿、そして止めを刺されたのは渡り人殿と聞いています。お納めください」
辺境伯は言った。
王子は鷹揚に笑った。
「律儀だな。黙って懐に収めておけば良いものを」
「そういうわけにはまいりません」
「まあ、有難くいただいておくよ。そちらの騎士も一人重症だったそうではないか。鱗や骨はこれだけあるんだ。半分はそちらで取ってくれ」
「よろしいのですか。我らには大変ありがたい申し出ですが」
「大勢で押しかけて迷惑もかけただろうからな」
辺境伯は笑って一礼した。
「セラが止めを刺したと言ったが」
辺境伯が辞してから王子は切り出した。
「どんなふうだったんだ?魔法で倒したのか?」
「いいえ、細剣で首をすぱっと落としました」
「なんと……」
王子は絶句した。
「火魔獣を二つに切ったのもあの剣だったな」
「ええ」
「しかし使ったのはあの時はガイキだった。誰でも使えるのだよな」
「神子以外には抜けないと言われている剣ですがね」
「では鞘に納めず常に抜いておけばよいのではないか?」
学者は笑った。
「ではそうなさってみればよろしいのでは」




